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ナイトメア・プロトコル!   作者: α星人
第二章 エルフの里とヤバい来訪者編
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四話


 視界を埋め尽くす花々。まるで星屑がそのまま落ちてきたな桜色に輝く花木。


 溢れる花びらが木々の合間を流れる川に筏を作っていた。


 川の周りには白、黄、青、魔力の光を吸収しているのか強く光り輝く草花。それらを反射する川の煌めき。


 おかげで日が落ちていてもとても明るい。


 その光景は絵本の一ページのように幻想的だった。


「すっげぇぇ!!!」


「全く……」


 静かで美しい雰囲気に似合わない俺の声にベティさんのため息が増える。


 申し訳ない。

 だが俺は止まらない。止められない。いや仕方ないだろう。これは声も出る。


 だって、これが───。


 これこそが俺が夢見ていた世界なんだから!!


 ただ違和感がある。 

 

 これだけ声を出しても反応がない。人の気配が一切ない。

 入り口と言われればそうだが、木の上にはツリーハウスがいくつもある。


 なのに見える範囲にエルフは一人もいない。


「あの、ベティさん」


「なんでしょうか?」


「里の人たちってどこに……?」


「先ほども言った通り、転移者との戦闘の影響です。あの転移者は一回ではなく連日。外に出たエルフを襲っています。里全体が対処に追われています」


 ベティさんの声が陰る。


「今は皆、昨日逝った者たちや傷を受けた者たちの元でしょう。今日襲われた者たちは門が開いた今……」


 一気に空気が重くなる。

 

「それに……戦える者は皆、結界の守りについています」


「そうです、か……」


 最低じゃねぇか、俺。状況も考えずにはしゃぎまくって。


 そうか……まだ、ここは戦場なんだ。

 あのクソ野郎や魔物がエルフたちを狙ってる。


 普段なら逃げていただろう。俺はできる事とできない事は弁えているからだ。


 でも──今は違う。

 ベティさんは俺の命を救ってくれた。  


 推しとかは関係ない。

 昔から受けた恩は百倍にして返す。それが自分ルール。

 今、恩人の大事な人や場所が理不尽な怪物たちに奪われかけている。


 色々深く考えんのは苦手だ。


 たとえ戦力にならなくとも囮だろうが弾除けだろうが今やれる事は何でもやる、それだけ。


 ただしあんま重くは捉えない。やりたい事をやる。楽しめる時に楽しむ。それがいいんだ。


 そんな思いを胸にしている時。


「ベティ様!!」


 複数の声が響いた。

 声の方に目を向けると三人の美女エルフたちがこちらに向かって走ってくる。金髪、緑髪、桃髪。


 視認してからあっという間に目の前に来た。速い。凄まじい魔力量と身体強化。


 そして何より──全員顎が外れるほど美人揃い!!


 やっぱりエルフは美形揃いなんだ。


 ただ彼女たちは全員が武装している。剣、杖や弓を手に、かなり警戒してるらしい。


 さっきから美し顔にジッと眼差しを向けられて……居心地が悪い……訳もなし!! 現状エルフに囲まれて幸せしかない!!!


「エアリス、一体どうしました?」


「結界が開いたので、お迎えに参りました。ご無事ですか?」


「えぇ、心配をかけましたね」


「いえ、それより──その者は?」

 

 エアリスと呼ばれた金髪ポニーテールのエルフさんが安堵の表情を浮かべたのは、束の間。


 エアリスさんの視線が鋭く俺に突き刺さる。


「この顔立ち……まさか転移者ですか?」


 その言葉に空気が、凍りついた。


 そしてエアリスさんの背後で、突然魔力が爆ぜた。


「ッ!! 下賎な余所者が!! 一体なぜベティ様と共にいる!! 今すぐ離れろ!!」


 三人のエルフさんのうちの一人。緑髪のエルフさんが莫大な魔力を放ちながらが叫ぶ。


「うぉっ!?」


 抜き放たれた剣から流れる圧倒的な魔力の奔流に身体が自然と後ずさる。


「待ちなさい、キュラス!! この者は敵ではありません!!」


「!! ベティ様……なぜ?」


「この者は、私をここまで運んでくれたのです。いわば恩人です。気持ちはわかりますが落ち着いて、剣を納めてください」


「「「恩人……?」」」


 三人が唖然とする。そして、俺もまた唖然とする。


 オイオイ、いつの間にか恩人になってるって! 完全にマッチポンプだろこれ!! やめてください! 本当に何もしてないんです!!


「転移者がですか……?」


 信じられない、という目で俺の方を見てくるエアリスさんたち。


「えぇ、先ほど私は転移者と交戦しました。【神降】を使い退けましたが……私は魔力が使えなくなった。そんな私を彼がここまで運んでくれたのです」


「そんなまさか……」


「そんなまさか……」


「「「ん??」」」


 やっべ、思わず呟いてしまった。


 いやだっておかしいだろ!? だって完全に話が盛られてる!! 助けられたのは俺、俺、オレ! ここまで運んだのは事実だけどそれも俺が足を引っ張ったからだし全部滅茶苦茶だろ!?


「刃……?」


「ひぇ……」


 ベティさんの冷たい視線が突き刺さる。


 完全に睨まれてる。

 『余計な事を言うな』と無言の圧をひしひしと感じる。


  いやわかる。やりたい事はわかるよ。恩人としての立場ならエアリスさんたちの警戒は解けるし、話も円滑に進む。


 ただ、それでも俺は!!


「あの、実は!!」


「刃は私にこう言いました。全身全霊をかけて私と里を守ってみせると。そうですよね、刃?」


 あっ、これダメなパターンだ。

 逆らったら殺される。食い気味に言葉を潰された。


「あっ、はい」

   

 圧に負けた。俺はなんて弱い男なんだ……。


「ほう……」


 エアリスさんが感心したように呟く。

 いやなんで納得しかけてるの!? 話盛られまくってますよ! 気づいて!!


「本当ですか、人間?」


 エアリスさんが真っ直ぐ俺を見る。


「あ、えっと……」


 ベティさんの凍えるような視線が、また俺に突き刺さる。


 ──はい、と答えろ。


 無言が圧力。怖い。怖すぎる……。


「あ、はい。そうです!」


 あー、言っちまった。いや元々里のためには戦うつもりだったけどさ。もう仕方ない!! こうなったら俺の心意気を見せてやる。


 俺は、息を吸う。


「全身全霊!! 俺は、この命にかけて───アナタたちを必ず守ってみせる!!!」


 俺は声高らかに宣言した。


「信じられません」


 アリエスさんが呟く。


「口だけならなんとでも言える」


「そうですよー」


 アリエスさんに続き後ろのキュラスさんと桃髪さんが口々に言う。


「実際、貴方は何ができるの?」


「それは……」


 アリエスさんの言葉に言葉が詰まる。


 現状、俺にできる事は無い。

 単純な魔法しか使えない。魔力量もない。戦闘経験も浅い。この世界のことだって何にも知らない。

 

 でも──。


「囮でも、弾除けでも──できる事は何でもやります」  


 俺は三人を真っ直ぐ見た。


「戦力にはならないかも知れませんけど、ベティさんに貰った恩は必ず百倍にして返します」


 流れでいくつも嘘ついてしまったが。これだけは、本当だ。


 俺の誠意、嘘じゃない。


「……」


 三人が黙り、顔を合わせる。


「……今は長老の判断を仰ぎましょう」


 エアリスが仕方ないとばかりに言った。

 するとキュラスさんも渋々と剣を鞘に納める。


「ベティ様、よろしいですか?」


「えぇ、構いません」


 ベティさんが頷く。


「では、参りましょう」


 エアリスさんが歩き出す。

 そしてキュラスさんが俺の後ろに、桃髪さんがベティさんの後ろにつく配置で、俺たちも歩き出す。おそらく見張りだろう。


 精一杯の誠意を見せたが警戒の目は変わらない。後ろからの圧っていうか、殺意だろこれ……。


「変な動きをしたら──切ります」


 突然、キュラスさんに耳元で囁かれる。

 完全に殺意だったーー!! 助けてください!!! 怖い!!!


 ていうか、一体どこに連れてかれるんだこれ……。


 川沿いを進む。

 あれだけ綺麗だと心躍っていた景色も後ろからの殺意で純粋に楽しんでいいものかと迷う。


 そして、やがて──。


 俺の目の前に、見上げ過ぎて首が痛くなるほどの巨大な木が現れた。



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