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お料理始めました 〜家に押しかけるカノジョの食欲を満たす話〜  作者: 天使 かえで
カノジョの食欲を満たす表メニュー

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7品目 おでん

「ホントに寒くなったな。」


 仕事終わりの帰り道。ホットコーヒーでも買って飲みながら帰ろうと思いコンビニに立ち寄った。


 レジ横に温かいおでん鍋が並んでいた。店内に漂う優しく甘い出汁の香りに、オレは思わず足を止めてしまう。今夜はおでんにしようかな?

 今夜のメニューを考えながらコーヒー片手に店を出る。


「あ、穂積くん! こんなところで会うなんて偶然だね!」


 突然背後から声をかけられ振り返ると、そこには外出先から直帰した田部さんがいた。


「田部さん。お疲れ様です。今帰りですか?」

「うん。仕事終わったしちょうど家に帰るところ。」


 彼女はいつものように屈託のない笑顔を見せる。ただ毎度のことながら、帰る方向は間違っているように思う。


「ウチ来るんですよね? いいですけど。今夜はおでんです。温かいものが食べたくて。」


 オレがそう言うと、田部さんの目がキラキラと輝きだした。


「えー!おでん! いいじゃん! 食べたい!」


 まるで子どものように、田部さんは目を輝かせながら俺の腕に抱きついてきた。

 俺は少し驚きながらも、田部さんの温かさを感じ、自然と笑顔になっていた。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 家に着いて早速おでんの準備を始める。鍋の中に昆布とだしを入れて火にかける。その間に、具材を用意する。

 

 仕事終わりに1から準備するのは大変なので、今日はすでに具材が1人前ずつ用意されているものを使う。

 大根、ちくわ、こんにゃく、卵、さつま揚げ、牛すじを並べて入れていく。味を整え、あとは味が染み込み温まるまで煮込むだけだ。


 その間に、テーブルにカセットコンロと取り皿等を用意する。準備が整ったのでキッチンから鍋を持ってくる。


 グツグツと煮込まれていくおでんの具材。甘く優しい香りが部屋中に広がり、冷たかった部屋を温めてくれる。


「できましたよ、田部さん」


 湯気の立つ土鍋をテーブルの真ん中に置く。お互い隣合って座り、手を合わせる。


「「いただきます!」」


「じゃあ、まずは大根もらうね。」


田部さんは、だしが染み込んでいる大根に手を伸ばす。


「はい、どうぞ。」

「ありがとう!」


 パクっと一口大に切られた大根を口に入れる。


「んー!おいしー!やっぱりおでんは大根だよね!」


 満面の笑みで食べている田部さんを見て、俺は少しドキドキしながら言葉をかけた。


「そういえば、鍋料理って一緒に食べるの初めてですね。」

「そうだっけ?なんか意外」


 田部さんは次のこんにゃくを取りながら応える。


「ですね。そう言えばお鍋、大丈夫でしたか?」


 俺の言葉に、田部さんは何の事か分からない表情をしている。


「1つのお鍋をつつくのが間接キスみたいで嫌だって言う人もいるなと思って。」


 それを聞いた田部さんの表情は、一瞬の思考の後、いつもの明るい笑顔ではなく、戸惑いが混じっていた。


「へっ、キッ……」


 言いかけたところで、慌てて口に含んだこんにゃくが熱すぎたのか、「アチチチチチッ!」と声を上げ、口をパクパクさせている。

 

 その様子があまりに面白くて、俺は思わず吹き出してしまった。


「大丈夫ですか?」

「う、うん。大丈夫。びっくりしただけ……」


 田部さんは、顔を真っ赤にして、熱さを誤魔化すように笑った。

本日の材料


・おでんパック:2人前

・牛すじ串、2人前


別パックの牛すじを追加するとグッと美味しくなる気がします

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― 新着の感想 ―
田部さんの方は既に落ちてるな。 後は穂積くんだけや。
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