4品目 じゃがバター塩辛のせ
「ねー、穂積くーん。」
ソファで田部さん持ち込みのビールを片手にくつろいでいると、隣に座った田部さんが顔を赤くして絡んできた。
今日の田部さんは珍しく日本酒を呑んでいる。
720mlの瓶が半分ほど空いた頃、田部さんは少し酔った様子で話し始めた。
「聞いてよー。今日、会社で、山田さんから……」
田部さんは、日頃から仕事で助けられているという男性先輩社員の話を楽しそうに話し始めた。
「山田さん、本当にカッコよくてさ。仕事もできるし、いつも優しくて…… 穂積くんとはタイプが全然違うけど。けっこう良いかもって……」
「はは、そうですね。」
曖昧に笑うオレの心臓は、ドクンと嫌な音を立てた。
オレの胸の内を知ってか知らずか、田部さんは楽しそうに話を続ける。
「でもさ、穂積くんいいよね。いつも美味しいご飯作ってくれるし、優しいし。料理できる男の人って、いいよねー」
「それはどうも。」
「ね、穂積くん。私、穂積くんの手料理が世界で一番好きだよ。」
田部さんの上目遣いの熱っぽい視線に、オレの心臓はさらに大きく跳ね上がった。
「その言葉、すごく嬉しいです。けど、酔ってますよ、田部さん。」
「酔ってないもん! ホントだもん!」
田部さんはムキになって反論する。
「穂積くん。もしも穂積くんが良ければさ、絶対穂積くんと付き合いたい! てか、結婚してほしい!」
そう言って、彼女はオレの腕に顔をうずめてきた。
「空きっ腹で呑んで酔っちゃいましたね。何かお腹に溜まるもの作りますね。ちょっと待っててください。」
立ち上がりエプロンを着けた。
「おいてかないでよー 結婚しようよー」
「はいはい、結婚します。しますよー でも、そういうのは酔ってない時にオレから言います。」
オレはその場を対処しきれず、キッチンに移動した。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
真空パック詰めされたじゃがいもを1袋取り出す。パッケージを開けじゃがいもを取り出したら十字に切れ込みを入れつつ皿に並べる。
切れ込みの真ん中にバターを一欠のせ、電子レンジで加熱する。500ワットで2分ほど。
のせたバターがとろっと溶け、十字の切れこみから染み込んでいく。温められたバターのいい香りが辺りにたちこめる。
十分に温まったじゃがいもを取り出し、イカの塩辛をのせるだけ。
ホカホカのじゃがバターに塩辛の程よい塩気が絡んでいく。これなら田部さんが呑んでいる日本酒との相性もいいだろう。
「出来ましたよ。田部さん。」
皿を持って田部さんのもとに戻る。そこには酔ってぐっすり寝ている田部さんがいた。
『今日の田部さん、ちょっと荒れてたな。明日も休みだし、ちょっと気分転換にでも誘ってみるか。』
しばらくソファで寝ている田部さんの様子を見ていたが、一向に起きる気配がない。仕方ないのでおぶって自宅まで送り届けた。
本日の材料
・じゃがいも:1パック
・バター:10g
・塩辛:30g
塩辛のかわりに明太子も美味しいです