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お料理始めました 〜家に押しかけるカノジョの食欲を満たす話〜  作者: 天使 かえで
カノジョの恋心を見てく裏メニュー

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裏メニュー 5品目

「もう食べられなよ、穂積くん。 ムニャムニャ……」


 わたくし、やらかしております。


 こんな変な事を言っても、「はいはい」と言ってスルーしてくれる穂積くん。

 それにしても、しっかりしなくちゃいけないと思って頭をフル回転させ巡らせた結果、酔ってそのまま落ちてしまうとは。


 目が覚めたがとりあえずこのまま彼におぶられ、酔って潰れたフリを続ける事にする。


「起きてください。お家着きましたよ。」

「あれ? ごめん寝ちゃってた? わざわざ家まで送ってくれたの?」

「気持ち良さそうに寝てたのでお連れしました。」


 家まで送ってもらって、彼にお礼をする。一応、普段通りに接してくれているだろうか。


「ありがとー」


 帰る彼に手を振って、見送る。


 しっかり寝る準備をし酔いを覚ましベッドに入った。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 6時半のアラームで目を覚ます。


 髪も整え、メイクもナチュラルに、服装もバッチリ、鏡で笑顔のチェックも済んだ。


 気合い入れて穂積くんの部屋に走った。


「ごめん。穂積くん! おはよう!」

「おはようございます。田部さん。」


 ドアを開けてそこにいたのはエプロン姿の穂積くん。普段と変わらず落ち着いた様子。


「昨日はごめんね。気持ちよく呑んでたはずなのに気がついたら家のベットにいたよ。昨日、何してたか全然覚えてないの。何か迷惑かけなかった?」


 お酒のせいにして覚えてない事にしてしまった。


「だいぶ酔ってしまったみたいなのでお家まで送って行きました。ゆっくり出来たなら良かったです。」


 違う違う、ちゃんと言わなくては、そう思った時に穂積くんが続けた。


「それより田部さん。今日は天気も良さそうですし、おにぎり持って外で食べませんか?」

「良いの?」

「はい、行きましょう。」


 酔って迷惑をかけた私をお出かけに誘ってくれた。


 すでに用意されているお弁当と水筒を持って近くの公園まで来ている。陽の光が暖かくて気持ちがいい。


「気持ち良いですね。ここで食べましょうか?」


 穂積くんも同じ事を思っていたのか、日の当たるベンチを指差していた。

 ベンチに腰掛け、お弁当を広げる。しっかり温かいお茶までつけてくれる。


「これ、中の具材がそれぞれ違うんですよ。まあ、遊びと思ってやってみてください。」


 そう言って1枚のメモを見せてくれる。その内容は次の通り。


 ・梅:大吉。恋愛運絶好調。想い人と両想いになる。

 ・おかか:中吉。金運アップ。宝くじ当たるかも。

 ・昆布:小吉。健康運アップ。スポーツに運あり。

 ・鮭:末吉。探し物出てくる。

 ・ツナマヨ:吉。勉強はかどる。


 具材がおみくじみたいになっているようだ。


「へえー、そんなもの仕込んでたの? 穂積くんって面白いね。」


 朝からわざわざ作ってくれたと思うと嬉しくなる。


「どれがいいかな? じゃあ、これ!」


 私は1つ取って、すかさず齧り付いた。


『すっぱっ! これは間違いなく梅。』


「ああっ! これ、うっ…… うまい!」


 梅ってたしか恋愛運のやつじゃん。想い人と両想いになるやつ。私と穂積くん……両想いだよね。勘違いじゃないよね……


『もう、わからーん!』


 具材を悟られてもなんか気まずい! 他のおにぎりからバレてもなんか気まずい! 食べるしかない!


「え、田部さん、そんな慌てなくても。」

「んぐんぐ……う、うるさーい!もう食べちゃったんだから! もう一個もらっちゃお!」


 穂積くんが持っているおにぎり以外をみんな食べてしまった。それでも彼はニコニコとして私を見てくれていた。


 昨夜、「酔ってない時に結婚の事を俺から言う」と言ってくれていた。

 それなら私から言うのは待った方がいいのだろうか。そもそも、まずはお付き合いの合意をするのが先だろうか。


 何度も穂積くんの顔を見ては切り出せずに別の話題を出しては俯いてしまった。

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