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社畜の天職はダンジョンファーマーでした  作者: 御歳 逢生
第1章 転生、そしてダンジョンを開墾してホワイトファームへ!
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第14話 クロの成長と、ダンジョン警備体制の強化


佐倉に「クロ」と名付けられた幼いシャドウウルフは、その日を境にホワイトファームに留まるようになった。

当初、ギルやフーガたちは警戒心を露わにしていたが、佐倉の「仲間だ」という言葉と、クロ自身が持つ幼く純粋な感情に触れ、やがてその存在を受け入れていった。

特に、ギルはクロにじゃれつくように遊ぶようになり、ガッシュもその小さな体に興味を示すなど、魔物たちの間に新たな交流が生まれていた。


佐倉は、クロのために特別に、『グリーンサムズ・ブースト』で育てた高栄養価の肉を与えた。

ダンジョンで得られる魔物の肉は、普通は硬く、独特の臭みがあるものだが、佐倉のスキルを通すことで、柔らかく、深い旨味を持つ、極上の肉へと変化する。

クロは、初めて味わうその美味さに、一口食べるたびに全身を震わせ、佐倉に体を擦り寄せた。


栄養満点の食事と、佐倉の温かい愛情、そしてホワイトファームの清らかな魔力の中で、クロは驚くほどの速さで成長していった。

たった数日で、クロは子犬だった面影を残しつつも、立派なシャドウウルフの体つきへと変化を遂げた。

その漆黒の毛並みは、夜の闇に溶け込むほどに深みを増し、瞳の奥には、鋭い知性が宿り始めていた。


佐倉は、そんなクロの成長に目を細めながらも、彼の内に秘められた特別な能力に気づき始めていた。


(クロは、ただのシャドウウルフじゃないな……)


佐倉の『共感の響き』には、クロから送られてくる感情と共に、ホワイトファームの周囲にいる魔物たちの「気配」が、より鮮明に伝わってくるようになっていたのだ。

それは、まるでクロが、自身の感覚を佐倉と共有しているかのようだった。


ある夜、佐倉が日報をまとめていると、クロが突然、低い唸り声を上げ始めた。

その感情には、敵意や怒りではなく、明確な「警告」が込められている。

佐倉は、その警告に従い、『共感の響き』を周囲に広げた。

すると、ホワイトファームの境界から少し離れた場所で、数匹のゴブリンがこちらを窺っている気配を捉えた。彼らは、ホワイトファームの存在を嗅ぎつけ、食料を奪いに来ようとしているようだった。


「クロ、あいつらを追い払ってきてくれるか? ただし、傷つける必要はない。ただ、ここに近づくなと警告するだけでいい。」


佐倉が指示を出すと、クロは「クゥン!」と力強く鳴いた後、夜の闇へと溶け込むように姿を消した。

数分後、佐倉の『共感の響き』に、遠くからゴブリンたちの悲鳴と、クロが放つ威圧的な感情が流れ込んできた。

そして、ゴブリンたちは蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていった。

クロは、ゴブリンたちに傷一つ負わせることなく、ただ圧倒的な存在感と威嚇だけで、彼らを追い払ったのだ。


クロのこの能力は、佐倉に新たなアイデアをもたらした。


(これだ! クロを、ホワイトファームの『警備・巡回担当』にしよう!)


シャドウウルフは、本来、影の中を自在に移動し、気配を消すことができる。

クロのこの特性と、佐倉と共有する『共感の響き』を組み合わせれば、ホワイトファームの警備体制は飛躍的に向上する。


佐倉は、クロに新しい役割を与えた。


「クロ、これからは、毎日定時で、ホワイトファームの周囲を巡回してほしい。そして、怪しい魔物の気配を察知したら、俺に教えてくれ。危険な存在が近づいてきたら、彼らを傷つけず、ただ追い払うんだ。」


クロは、新しい「仕事」を与えられたことに、誇らしげな感情を佐倉に送った。

彼にとって、佐倉と、そしてこのホワイトファームは、自分を守ってくれるだけの存在ではなく、自分が守るべき、かけがえのない「居場所」になっていたのだ。


翌日から、クロの働きぶりは目覚ましかった。

彼は、夜になるとホワイトファームの周囲を、まるで幽霊のように音もなく巡回し、佐倉の『共感の響き』に周囲の状況を常に報告してくれた。

これにより、佐倉は安心して眠りにつくことができ、ホワイトファームの夜間の安全は確固たるものとなった。


佐倉とクロの間には、言葉を超えた、深い絆が生まれていた。佐倉が「定時」を告げると、クロは必ず佐倉の元に戻り、その日の報告をする。

そして、佐倉が頭を撫でてくれるのを、子犬のように無邪気に待っているのだ。

クロの存在は、ホワイトファームに新たな「安らぎ」と「安心感」をもたらした。


佐倉のホワイトファームは、昼間はそれぞれの役割をこなす魔物たちの活気に満ち、夜はクロの確かな警備に守られ、安全で、穏やかな時間が流れる場所へと進化を遂げていた。

ダンジョンという過酷な世界で、人間と魔物が、それぞれの得意なことを活かし、互いを信頼し合う、奇跡の「共同体」が築かれていた。

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