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(九)

 夕暮れ時の公園で連絡先の交換をしてすぐにオレと鶴瀬さんはそれぞれの帰路に就いた。彼女が電車なのかバスなのかオレは知らなかったけど「商店街はまだ人通りも多いし大丈夫よ」と言いながらオレの帰るのとは逆の方に歩いて行った。オレは彼女の姿が見えなくなるまで見送っていたけど、交差点を曲がるときに彼女が振り向いて胸の前で小さく手を振ってくれたのはちょっと嬉しかったな。てか、見送ってたのは正解だったぜ。

 さて、帰るとするか。オレはワコに脳内で問いかけた。


「ところでさ、鶴瀬さんって電車なのかバスなのか知らないのかよ」

「あ、忘れてた」

「ったく、肝心なときに役に立たない幽霊だよな。こりゃ成仏までの道のりは長そうだぜ」

「大きなお世話だぜ。さてと、これにて一件落着、とりあえずオイラは消えるぜ。またな」


 一方的に言うだけ言うとオレの周囲からワコの気配が消えた。どうせスマホの中で昼寝でもするんだろうな。



 夕食は冷食のピザやらパスタやらピラフやらを適当なローテーションで、でもサラダと簡単なスープは欠かせなかった。独り暮らしで栄養が偏らないように一応気を遣ってるつもりだ。これにはワコも感心してるようでいつもオレの目の前に座って眺めていたっけ。

 そう言えばワコのやつまだ寝てるのか?

 でもいいか、久々に落ち着いた夕食も悪くないよな。


 するとデスクの上に置いたオレのスマホが着信のバイブレーションに震えた、それは断続的に。これは電話の着信ではない、メッセージだろう。オレは食事もそこそこにスマホを手に取る。着信はまだ続いていた。


正宗まさむねくん、今日はありがとう

>正宗くん、見てるかな?

>そうだ、今度いっしょにどこか行こうよ


 相手は鶴瀬さんだった。それにしても今日の今日でいきなり名前呼び?

 いや、違う、これはワコの仕業に違いない。そうか、連絡先交換ってこのためだったんだ。まったくとんでもない幽霊だよ。

 すると今度は長めのバイブレーション、電話の着信だ。もちろん相手は鶴瀬さんだった。オレはすぐさま電話に出た。


高坂たかさかくん、今こっちにワコちゃんが……」

「やっぱりな。メッセージが飛んできてるんだけどいきなり名前呼びなんてあり得ないって思ってたんだ」

「もう困っちゃう……あ、ワコちゃん……」

「よお、正宗ぇ、そんなわけでデートだよデート」

「テメエいい加減に……」


 鶴瀬さんにしてはめずらしく焦りモードで、とりあえず彼女はスマホの電源をオフにした。


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