表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/10

(六)

 マジでバツが悪い。するとここぞとばかりに声を上げたのはやはり唐沢武だった。


「Yo――、Yo――、どうした高坂たかさか政宗まさむね……」

「ごめん、悪かった。オレ、帰るわ」

「てか、理由を話してみろよ政宗」


 フォローのつもりだろうが豊春とよはる、今のオレはお前と話す気になれないんだ。でも他のみんなの目もあるし苦しい言い訳をするしかなかった。


「スマホ……スマホの調子がまた悪くってさ。それでつい、ほんとごめん」


 そう言いながらオレはカバンから財布を取り出した。とりあえず参加費だけでも払ってとっとと帰ってしまおう。今日の会費は三〇〇〇円だったが財布に入っているのは五千円札一枚だけ、だけどしょうがない、とにかくオレはこの空気から逃げ出したかったんだ。


「これ会費。釣りはいらない、迷惑料ってことで」

「おい、待てよ、政宗」


 呼び止める豊春の声を背中に聞きながらオレはルームを後にした。店を出るとオレは足早に商店街を突き進む。しかし行くあてなんかなかった、とにかく歩くしかなかったんだ。


「高坂く――ん、待って、待ってったら」


 その声は鶴瀬さん、どうやらオレを追いかけてきたみたいだ。でも無駄だぜ、オレはあの場に戻る気なんてないんだから。


「とにかくさ、落ち着こうよ」


 足を止めたオレに追いついた鶴瀬さんは肩で息をしながら財布から千円札を二枚取り出してオレに寄こして来た。


「高坂くんって独り暮らしだったよね。二〇〇〇円は大金でしょ。だって食費にしたら何食分?」


 確かに、勢いで有り金全部を置いていったんだ、冷静になって考えてみるとマジでやらかしちゃったよな。


「とにかく、はい、これお釣り」

「あ、ありがとう。マジで助かる」


 しかしこれもこれでバツが悪い、どうしたらいいんだよ、オレ。すると頭の中でワコの声が響く。


「とりあえず歩こうぜ。往来の真ん中だしさ、近くに座れるとこ、公園とかあればいいんだけどよ」

「そういえばあるわね、公園。高坂くん、ちょっと話そうよ」


 まさにシンクロ。もしかして鶴瀬さんってワコの声が聞こえたりするのか、まさか霊能力とか……?

 そんなことを考えながらオレたちは商店街から少し離れた児童公園にやって来た。学校から帰って日暮れまでのひととき、遊具の前では子供たちが順番待ちをしている。オレと鶴瀬さん少し離れた水飲み場に近いベンチに並んで座った。


「実は私、見えちゃう人なんだ」


 座るやいなや鶴瀬さんはオレに人懐っこい目を向けてそう言った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ