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3 最初で最後の賭け


 母が折れてくれる事になった。何をしでかすか、わからない娘の身を案じての事だ。もちろん養父の母への説得が、あったことは言うまでもない。

 しかし当の私は今や養父の事で頭が一杯でカッコイイ先輩の事も、どこへやら。

 突然やっぱり女子校に行くと言い出したのだ。母は


「反発の反発ぅ?」


と、笑っていたが母への後ろめたい気分を自分が譲歩することで解消しようとしたのだった。

 養父は以前と変わらず接してくれていた。変わらなさ過ぎて不思議な気持ちになった。

 あの雨の日の事は、何だったのか?もしかして私の潜在意識の願望が夢になったのか。はたまた幻かと。

 私はその事を養父に確かめたかったが何故か口に出来なかった。もし、ただの夢だったら...。それが怖かった。

 そうなるより自分の中で現実と受け止め心の内に留めて置く方が、いいと思ったのだ。

 しかし露骨なアプローチは繰り返した。出掛ける時、車では助手席に座り、買い物中は、養父の腕にからみつきデートでもしているように振る舞った。

 母は私の豹変ぶりに驚いていたが実父を幼く亡くした娘の胸中を思い自由にさせてくれていた。

 仲がいいのは良い事だと好意的に受け止めてくれていたのだ。娘の淡いたくらみも知らずに...。



 女子校の進学も滞りなく済み。あんなに母とやり合った日々は、なんだったのかと思える程、平穏に暮らしていた。

 女子校は当然男子が、いないので共学の様にすましたり緊張したり、それほど見た目を気にしなくても良かった。その分、気楽であった。

 入学から、ひと月程して母へ一通の往復葉書が届いた。女子校時代の同窓会の招待状だった。温泉旅館に泊まり込みで行くらしい。

 しかし、その日は私の誕生日と重なっていた。


「愛子の誕生日の方が大事だから、断るわ」


と母は言っていたが明らかに残念そうだった。私は養父と一緒に母を説得して、その日同窓会に送り出した。


「女子校の同窓会なら良くある不倫話などには、ならないだろう。」


と父は冗談を言ったりしていた。母は、


「当たり前でしょ」


と笑いながら上機嫌で出掛けて行った。

 


私は見送りながら、ほくそ笑んでいた。


こうしてまんまと養父との誕生日の夜。


二人だけの時間を勝ち取ったのだ。


宿敵はもちろん。母親だ。




 私は早めにシャワー浴び、出掛ける準備を始めた。下着は新しいものを着けた。母に内緒で白のレースの上下をお小遣いで買っていた。

 まだ勝負下着と言う概念は、無かったが先日、買い揃えた新しい物、全部身に着けて養父と出掛けたかった。

 少しでも、かわいいと思われたかったのだ。うすいピンクのマニュキア、イヤリング、光沢のあるリップも、はじめてしてみた。白のワンピースを着る前に鏡の前に立ってみた。

 平均並の身長、胸は少し大きな方か、しかし、私より遥かに大きい巨乳をたたえるがいたから自慢にはならない。

 身体を(ひね)って後ろを見ながら、つま先立ちをした。ヒップは我ながらカッコイイ方だと思っていた。

 母は骨盤が大きく豊かなヒップをしていた。

胸も見知らぬ男性が振り向く程の巨乳だ。わたしも大人に、なったらあんな風になるのかな。イヤだなぁと思った。


「なんだか、いやらしいのよ。ママの身体。

まぁパパが見染めたくらいだからね、しょうがないか。」


 独り言を言っていると階下から養父が呼ぶ声がした。


「愛ちゃーん。準備できたぁ?

タクシー呼んでいいかな?」


「はーい!」


 私は急いでワンピースを着ると階段を降りて行った。スキップでもしたい気分だった。階段では危なくてできないが...



 タクシーで予約したレストランに向かった。外はもう街灯が付きはじめていた。

 私は後部座席でピッタリ養父にもたれ掛かっていた。顔を、あげると運転手の目がバックミラーに映っていた。疑いの目を向けているようだった。親子にしては妖しい雰囲気がしたのだろう。

 私は「ファー」とあくびをした振りをして誤魔化した。


 レストランでのコース料理は美味しかったが、まだ子供には馴染めない食材もあった。

 養父は残していいと言ってくれたが私は頑張って完食した。いつまでも子供扱いされたくないと思ったのだ。

 最後に御決まりのサプライズケーキが出て来た。今は誕生日利用と伝えると、どこの店も、それを用意してくるれるが当時は毎年自宅で誕生日をしていたので初めてのレストランディナーでのサプライズは子供心には衝撃的であった。

 嬉し過ぎてテーブルが、なかったら養父に抱きついていただろう。

 プレゼントは、なかった。私が何も買わなくていい。と伝えてあったのだ。そのかわり


「その日私が欲しいものを発表しまーす!」


と、おどけて養父には伝えていた。


これは怖すぎる逆サプライズだっただろう。


私はその日、最初で最後の賭けにでたのだ。




続く

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