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大切に囲われた箱入り令嬢

初めまして!

初投稿です。

何卒よろしくお願いします。

 ユリアナはビクトール侯爵家の箱入り娘――と周囲からは認識されているが、本当のところは少し違っていた。

それを知っているのは、ビクトール家の親族と、仕える者のみ。


 ユリアナはビクトール伯爵の前妻の娘で、彼女はユリアナがニつの時に事故で亡くなった。

その後、ビクトール侯爵は一年も経たぬ内に、後妻のアマンダを迎えたのだ。

彼女は娘のベラと息子のユージンを立て続けに産み、大層可愛がった。


 しかしユリアナについては、違っていた。

アマンダは、ユリアナのことを疎ましく思っていたのだ。

そうは思っても、あからさまな態度は取れなかったアマンダは、ユージンを産んでひと月後のこと、ユリアナを屋敷には置かず領地へ追いやったのだ。

ユリアナの希望でと、周囲に嘘を吐いて。


 突然父親と離れて暮らすことになったユリアナは、しばらく塞ぎ込んでいたが、継母に虐められる本を読んだことをきっかけにして、虐げられるよりマシだわと思うことにした。


 現に、ユリアナは恵まれていると思う。

本の中の虐げられるヒロインのように、食事を抜かれることもなければ、周囲にないがしろにされるわけでもない。

心優しい使用人らは親切だし、家庭教師からしっかりと教育は受けられる。

領地内であれば好きなこともできた。


 ただ、他所との交流は一切ない。

お茶会に参加したこともなければ、町に出たこともなかった。


 ここキュロノン国では、ほとんどの貴族令嬢は十五歳で社交界にデビューする。

しかし、今年で十六歳になるユリアナは、大切に(・・)囲われていて、常に領地にいた。



 それに比べ、四つ下のベラや五つ下のユージンは違った。

二人は王宮にしょっちゅう出向いていたし、ベラについては王子妃候補の一人だった。


 本来であれば長女のユリアナが候補になるものだが、アマンダが彼女を差し出すわけがない。

ユリアナは大切に(・・)囲われていたから。

アマンダは強くベラを推し、おかげで彼女は最有力候補である。


 そんなベラとユージンだが、ユリアナに意地悪をするような性質ではなかった。

アマンダに内緒で領地に訪れては、町で買ったという珍しい土産を持ってきたり、アマンダの愚痴や王宮での話を聞かせたりする。

二人は母親には似ず、心優しく聡明な子供で、「お姉様、お姉様」と懐き、可愛かった。


 だが、反対に二人がこの状況に満足していなかった。

事あるごとに一緒に屋敷で暮らそう、とユリアナを誘うようになる。


 それにユリアナはほとほと困った。

初めこそ、家族と離れて暮らすことを嘆いていた自分だが、今は二人のようになりたいとこれっぽちも思わない。

のんびりと暮らしてきた自分が貴族社会でやっていけるとも思えない。

一度も目にしたことのない華やかな世界に何も魅力を感じなかった。


 ユリアナには領地で趣味の乗馬と読書、それから菓子作りができれば幸せだった。

最近ではガーデニングにも手を出して、ハーブを育て始めている。

田舎暮らしを気に入っているのである。


 だが、ベラはそれを勿体ないと言う。

彼女がそう言うのは尤もだった。


 ユリアナはストロベリーブロンドの艶やかなカール混じりの髪に、真っ白な肌と目鼻立ちの整った美人で、体つきは女性らしい。

社交界に出れば、たちまち貴族令息の視線を奪ってしまう、そんな見た目だった。

さらに家庭教師がしっかりと淑女教育を行っているので、どの家に嫁いでも恥ずかしくない。


 それなのにユリアナは、幼い頃から囲われているせいで、自分の魅力にさっぱり気が付いていないのである。

ベラやユリアナを慕う使用人らは歯がゆい思いをしていた。


 自分は一生ここで好きなことをして暮らすの――そう信じていたけれど、ある日の午後、突然の来訪があった。

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