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おいしい短編集

グレープフルーツ

作者: シリウス

オレンジ色の硬い皮。

切れ込みを入れ、現れるザラザラと白い生地。

張り巡らされた、乾き切った管。

それらを全部丁寧に剥いて、一つ一つ、重みをとっていく。


パッと鮮やかなルビー色。

細長い果肉の袋が剥がれないように気をつけて皮を取り除こうとしても、ほろほろとわかれてしまう。

憎いことこの上ない。

房の形を維持しているのは幾つかだけで、残りは不恰好な角ばった形をしてキッチンの台の上に転がっている。

ただ、白い灯りに照らされてどれも磨かれた宝石のように艶々と輝いている。


我慢できなくなって一口食べる。

剥き出しの果実の粒一つ一つが舌を潤す。

やっぱりこの労力は無駄じゃなかった。


結局全部剥き終わるのに20分近くかかってしまった。

初めて自分で剥いた、グレープフルーツ。

甘酸っぱい、ちょっと寂しい味がする。

前の日に作った寒天も合わせるとちょうどいい具合に甘くなって、夏になったな、としみじみ思う。


ここに来て初めての季節変わり。


この季節になると葡萄をよく食べた。小さいぷちぷちした葡萄が多かったが、祖母から送られてきた大粒の葡萄や巨峰やマスカットもかなり食べた。

皮の剥かれた、薄緑のよく冷えた葡萄ほど美味しいものはない。そして食べ終われば、タッパーに残った果汁を飲み干す。


私の宝石たち。


いつも私の前に出てくる果物は皮が剥かれ、綺麗になった状態だった。


なんの疑問もなく、果実を頬張っていたあの頃に戻りたい。

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