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呼んでいいよ ~ 初めてのホワイトデー ~(高一のホワイトデー)

高校1年生のクラス委員で一緒になった和田くんと田中さんは縁あってお付き合いを始めます。


二人のその年ごとのホワイトデーに絞ってピックアップいたしました。


※ 全4話となり、4話目が新作となります。

今回は和田くん視点です。




「では、張本人に訊くけど……この子は何をくれたの?」


姉ちゃんは半分悪戯っぽく悩んでいる。相変わらずの肚黒さが抜け切れていない。

でもまあ、泣いていたこの間よりはずっといい。

やっぱり姉ちゃんが泣いて沈んでいるのはオレも辛い。


「ん?どした?芳政(よしまさ)?」


オレは照れ隠しにぼやいてみせる。

「どした?じゃねえだろ?姉ちゃんが食っちまったんじゃん! 貰ったチョコをさ


「そうだよ。だから協力してんじゃん…… うん! 思い出した、この子はゴ●ィバのキープセイクだ、あのハート缶!」


「ああ、姉ちゃんが物入にしたやつね」


「そうそう。これは3000円くらいかな?」


「で、こっちは?」


「ああ、『ソリッドチョコ猫ラベル』。これも美味しかった。 2000円くらいかな」


「このピンクの包みは覚えている?」


「それは手作り、ハート型のチョコサンドクッキー」


「そうか……手作りか……」


約1か月前のバレンタインデー当日、

前年まではノーチョコデーだったオレが紙袋を提げて帰ってきたので

母さんはオレを下にも置かないような盛り上がりっぷりだった。


おかげで遅くに帰って来た姉ちゃんは、その行動を追及されるのを免れたのだが、

その数日後、

いきなりオレの部屋にズカズカ入ってきて、まだ処遇を決めかねていた机の上のチョコ達をバリバリ()()()()始めたのだ。

「遊ばれた!!」と


なんでも同じ生徒会役員の変わった苗字のセンパイに告って…

まあ、セイコーしたらしい。バレンタインデー当日に!!


「でも、アイツ、私のこと、遊びだったんだ」


「ここ数日のことで、そんなの分かんないじゃん」と慰めてみたが


姉ちゃんはチョコを頬張りながらポロポロ涙をこぼす。

「私が情報通って知ってるでしょ? “情報通”って入って来る情報は選べないの、聞きたくない事も入ってくるの!! バリバリ」

青虫ばりに食いつくしてやがる。一応オレがもらった物なのだけど……

主に“壁ドン三人娘”から


「あ、きなこもちチョコじゃん、口直しにちょうどいい」と姉ちゃんが手を伸ばし掛けたその黄土色の包み紙のキューブチョコをオレは慌てて取り上げた。

「これはダメ!!」


「え~ なんで…… あれ、それって、ひょっとして芳政の“本命”?」



バレンタインデー当日のHR終了後、田中さんは自分の机の上に箱買いしたこのキューブチョコを広げ、皆に一つずつ配っていた。


「和田くん!」

と声を掛けられて

オレはニヤニヤしそうになるのを必死に抑えて田中さんの方へ振り向いたのに……

「……は、可愛いコ達からたくさん貰っているから、要らないか!」

と言われて

心底ガッカリした。

田中さん、吹き出し笑いで

「和田くんは、見境なしの贅沢者だねえ~、ま、いいわ、義理を欠くのは、私も本意じゃないし……」

と、このきなこもちチョコを投げてくれたのだ。


な!、このキモチ分かんだろ?

オレにとってはこれが一番、サイコーなんだ。

だから泣いてる姉ちゃんにもあげられない。


もったいなかったけれど、ソッコー食べた。


で、コッソリ包み紙をしおりとして使っている。



「この三人は本気だよ、ちょっと、オリエンテーション旅行の時の写真見せてみな」

とオレに要求する姉ちゃんは、オレより1個上の同じ東高のセンパイだ。


オレが指し示した三人の顔を見て

「選り取り見取りの美人揃いじゃん!!」と肘でウリウリされた。


「で、このコ達ではない、芳政の“本命”は?」


と聞かれたので

「写ってない、この写真を撮っている当人だから、写りようがない」

と答えた。



そんなこんなで、ホワイトデーのお返しに頭を悩ませている。




「ゴ●ィバの()には同じゴ●ィバのグランプラス、ソリッドチョコ猫ラベルの()にはフクロウ柄のキャラッセルか…… で、手作りの()にはどうすんのよ」


「簡単トリュフを手作りする、クックパッド見て。だから姉ちゃん! 分からないとこがあったら教えてくれ」


こうして、そのトッピングとしてのスプレーチョコを買い出しに行った100均で、オレは一番の悩みを解決する物を見つけた。



--------------------------------------------------------------------


放課後、ちょうどうまい具合に独りで居る田中さんを見つけた。


オレはネクタイの上から胸に手を当てて、今日何度目かの深呼吸をした。


やっぱり今回が一番緊張する。


マジ、心臓早鐘!


ガラガラと教室のドアを開ける。

「学級委員が机の上に座っていいの?」


田中さんがこちらをチラ見する。

「和田くんだって、いっつも座ってんじゃん、あ、ドア閉めてね。3月も中旬なのに寒いね……」


「3月は気温の変動大きいから…ほら、中1の頃だっけ? 大雪になったし……」


「そうだね……思い出した、あの時、私、猛烈に好きな人がいてさ!」


「えっ?!!」

オレの胸は激しくざわつき鼓動はますます早鐘だ!!


「ひょっとして同中の人?」


田中さんはアハハハと笑った。

「ワタシャ腐女子だよ!好きだったのはリヴァイ様 でね、当時中1の私は雪降り積もるイベント会場の関係者専用ルートで声優のヒロシ様の出待ちをしていたのでした。チャン♪チャン♪」


キラキラと笑う田中さんの横顔に見惚れ、とんでもないライバルたちが立ち塞がっているのも思い知らされた。


「そう言えば、スケベな和田くん。ラブレター見たよ」


クツクツ笑う田中さんは「シマちゃんから送られた」とLI●Eの画像を見せてくれた。


そこには確かに、オレがキャラッセルと一緒に手渡した手紙の画像が表示されている。


揣摩八重子(しま やえこ)様 先日はバレンタインデーにチョコをいただきありがとうございました。 物の価値が分からない僕なので、家族の者にその価値をレクチャーされながら分け合って美味しくいただきました。 それに見合うかどうか、自信はありませんが、ホワイトデーにお返しを贈らせていただきます。 それと、お手紙も読ませていただきました。実は僕には好きな人がいて、片想いをしています。なので揣摩さんのお気持ちは、少し分かりますが、ごめんなさい。 あなたの気持ちには応えることのできる僕ではないのです。お許しください』


「あなた、これとほぼ同じ文面を、加藤にも明美にも渡したでしょ?! 今日一日、大変だったんだから……特にあの三人、こじれるわよ~!」


しまった!! 考えが足りなかった。 断るにしても、オレはもっと努力しなきゃいけなかったんだ!!


「本当はあの三人の中の誰かなんでしょ? バカねえ~! こういう時はハッキリと意中の人と付き合ってあげたほうがいいのよ」


オレ、たぶん胸の痛みで顔が引きつっていたと思う。


「片想いの人はあの三人じゃない」


「えっ そうなんだ ま、それでも、その人に告白した方がいいよ。なんか、どうやら私にまで気を遣ってくれてるみたいだけどさ、“チ●ルチョコ”の私の事なんかより、やる事があるはず!」


オレは思わず

大きくため息をついてしまった。


無言で、

手に持ったプレゼントを差し出す。

田中さんの為に

見つけ出したプレゼント

中身は100均だけど

包装紙も

やっぱり100均だけど

この事だけの為に

田中さんをイメージして

選んで買った。


「ホホホ チ●ルチョコが包装紙の付いた箱になったよ、わらしべ長者だね。開けていい?」

と可愛く小首を傾げられて

オレは一も二もなく頷いた。


「うわあ!! デッサン鉛筆?! 8本入り?! 6Bも4Hもある!! 凄い!!エモい!! 恐るべし100均!!」

とめちゃめちゃ感激してくれた。


「こんな喪女腐女子まで感動させるとは!! キミはそのスキル、ムダ打ちし過ぎだよ!! それは逆に罪! 早く片想いのコに……」


オレはもう我慢できなかった。

「田中さんだから!!」


オレが大きな声を出したものだから、田中さんはキョトンとしている。でも、もう後へは引けない!!


少し、声は抑える。

「田中さんだから、田中さんがくれたチ●ルチョコだから一所懸命にそれに見合う“お返し”を探したんだ。こんな風に、喜んでくれる田中さんの顔を想い浮かべながら……」


田中さんは、まだいぶかしげだ。

だから田中さんが言うようにハッキリと告白しなきゃ!!


「好きです!! 田中さん! あなたの事がずっとずっと好きでした!!」


「へっ?! えっ?! ちょっと! いやいや、 えっ? ええっ~??」


ああ、なんて反応!! マジ凹む!!


田中さん、手を額に当てて凹むオレをマジマシと覗き込んだ。

その仕草、表情が可愛すぎて萌え死ム!!


「ワタシ喪女腐女子ダヨ 全~然!! 可愛くないんダヨ」


相変らず無自覚に可愛らしさを振りまかれてオレはクラクラする。


「可愛いよ!! めちゃめちゃ可愛いよ!! 息止まるよ!!」


「ア、アリガト、 何と言うか、何と言うか、うん、ちょっと困っているけど……」


「だろっ?! だから、困られるに決まってるから、ずっと我慢してたんだ!! それなのに、田中さん、あんな事言うから……」


「『決まってる』なんて決まってない!! 思い上がらないで!!」

田中さん、ちょっとだけ気色ばんだ。


「ゴメン……」


「それと……さ」


田中さんはオレの傍から離れて机の上に座り直した。


「田中さん、田中さん、ってあんまり連呼しないで…… キミのお陰でだいぶ慣れたんだけど……『タナカ』っていう響きがね、あんまり好きじゃないんだ。だから……」


そうなんだ! オレが悩んでいたことは、そういう理由だったんだ。


田中さんは一旦、目を伏せてから、すーっとオレを見た。


その潤んだ瞳のその顔で、どんなトドメの言葉をオレに投げかけて来るのだろう


覚悟を決めた。

よし、バッチ来い!!


「呼んでいいよ」


「えっ?」


「キミも呼んでいいよ『千景(ちかげ)』って」


「それって??」


「う~ん、つうか、呼べ! 命令!!」

田中さん、言いながら吹き出している。


「あ~あ、なんだか、すっごくドキドキした」


「オレも」


「いやいや それは変でしょ! ドキドキの原因を作ったの、和田くんだもん」


「オレ、田中さんの前だと、いっつもドキドキしてるよ」


田中さん、サッと顔を赤らめてパーン!とオレの背中をぶっ叩いた。

「千景でしょ!!」


「ん、あ、そう、千景には……ドキドキさせられる」


田中……もとい千景は

ちょっと困った顔で

でもニヘラと笑ってくれた。


「ドキドキの安売りは……しないでね」




。。。。。。。。。


イラストです。


和田芳政くん




挿絵(By みてみん)




田中千景さん


実は机の上に座っています。

(スカート部分をカットしてしまいました(^^;))




挿絵(By みてみん)







本当は昨日UPする予定だったのですがメンテナンスにぶつかり……(-_-;)


なので今日中には完結予定です。



元のシリーズはこちら⇒ https://ncode.syosetu.com/n4387hn/



お立ち寄りいただければ幸いです<m(__)m>

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