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王旗を掲げよ~胎動~  作者: 秋川 大輝
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開戦準備

 

 広場には百五十人の武装した兵が並んだ。十人づつ十五列だ。

 この十人が一つの分隊になり、十人は二人づつ五組に分かれてバディと呼ばれる相棒を持つ。

 そして、十二列までが戦闘部隊。残り三列が糧食、装備、救護の分隊になる。これらが合わさって中隊と呼ばれた。


 主上が新たに作られた軍制だ。

 中隊は三つの小隊からなりこの上には大隊が、その上には連隊があり、師団がある。


「揃ったようだな」


 声とともに現れたのは、エルフのレイムさんだ。

 兵士たちはさすがに声を上げることはないが、それでも驚きに目を見開いている。

 それも当然だ。彼らは初めてエルフを見るのだ。寓話でしか知らない存在のエルフを。あっしだって未だに緊張してしまう。


「はい。言われた通りに並ばせやした」


 傍らに浮かぶレイムさんを見る。


「おまえたちが選抜しただけあって、まだまともだな。それでも数人は、どうしようもないのが混じっている」

「まだ、あっしの精進が足りません」

「そんなことはない。他はもっとひどいぞ」


 言いながら、レイムさんは紙に印をつけていく。

 広場に整列した兵士たちを縦と横に番号を振った紙だ。印がつけられたのは七人。


「これは駄目だ。ルクスに黒と赤の靄が刻まれている。犯罪歴を調べた方がいいな」

「承知しやした。すぐにでも除外します」

「そうしろ。それとあたしは疲れた。少し休ませろ」


 リルザ王国の動きも近い。編成も態勢も整える必要がある。レイムさんも国中を飛び回っているのだろう。

 あっしはレムさんに礼を示すと、下に立つエルドに目を移した。

 

すぐにエルドは頷き、

「総員注目。中隊長、ルーフス大尉よりお話がある」

声を張る。 


 これを見れば、エルドも叩き上げの兵士のように見えた。


「諸君。リルザ王国は、すでに国境に四十万もの兵を集めている。このキルア砦が最前線だ。しかし、この砦も足止めにはなるまい」


 兵士を見渡す。

 敵の数に、明らかに呑まれるものが多い。仕方がないだろう、これから死ねと命令されると思っているのだ。


「これより、中隊を分ける。第一から第三分隊は門上の回廊に付け、第四から第六分隊は門内の守備に付け。第七から第十五分隊は広場にて待機、再編成を行う。各分隊長は指揮を副官に任せて本部に集合。以上だ」


 言い終わると、壇上を下りる。


「なんだ、ルーフス。兵士が様になっているではないか」


 それは当然だ。

 あっしらはアセット、忍びだ。その役に応じた仮面ぐらい、造作なく付けて見せるさ。


「それより、主上はどうです」


 レイムさんはすでに周囲に結界を張り、声が漏れないようにしてくれている。おかげで安心して話すことが出来た。


「隆也か。隆也はこちらに向かってきておる。ここを抜いて来た敵を混乱させ、誘導するそうだ」

「あの近衛でですか」


 近衛騎士団は駄目だ。ルクスは多少強いが、練度が低く物の役に立ちそうにない。


「あれは、酷いな。ほぼ全員が野盗と変わらん」

「主上はなぜ、彼らを罰しないのですか」

「怒っているのさ。隆也は、近衛に対して本当に怒っている。王の側にいて、国の規範、軍の規範となるべき近衛があの体たらくだからな」


 怒っていると言って、主上はどうしようというのだろうか。

 広場を抜けて居館に入る。

 距離を置いて各小隊長とあっし付きにしたリブラム初級兵が続いた。


「分からんか」


 主上の考え、あれだけ深く考えられる主上だ。そして、本気で怒っている主上の考え。


「イグザムを殺して、リセットさせるのは許さないと言った主上だ。切り離すのは簡単だが、それなりの罰を与えらえられるのではないのか」

「そうだな。それと、近衛といえど絶対の存在ではないというメッセージだな」


 レイムさんが笑う。

 近衛を粉砕する気なのか、主上は。近衛は軍の中心であり、公貴の代名詞でもある。それが粉砕するとなれば、人々の意識は変わる。


「それよりだ。お前たちの主上とやらは、人使いが荒すぎる」


 四階に上がると、レイムさんは真っ先に本部の扉を開けた。


「リブラム、歩哨を頼む」


 言葉を残して、その後に続く。

 部屋の壁には大きく地図の張られた部屋。作戦本部と言うものになるらしい。

 さすがに立体地図は置けないが、紙に掛かれたこれだけの地図でも大層な金額だ。


 エルドたちが入ると扉が閉められる。

 途端に皆が思い思いの場所に腰を下ろした。すでに兵士の仮面を外している。


「それで、ルーフス殿。これからどうする」


 エルドが胡坐をかいたまま顔を上げた。


「レイムさんに言われた。やはり、皆が言っていたこの七人が、どうしようもねぇらしい」


 印の付けられた紙を置く。


「始末するのか」

「そういうわけにもいかねぇだろ。こいつらは、ラムザス殿の所へ送り返す」

「そのための、再編成と部隊分けだな」


 こちらの話にレイムさんは口を挟むことはない。

 基本事項だけ主上は伝え、後は任せてくれているのだ。

 それだからこそ、あっしらは主上の考えを読み取り、戦略と言う計画に齟齬が出ねえようにしないといけねぇ。


「ここに蓋をするには、最低でも百人は必要だろう。それに、糧食、装備、救護も欠かせねえ」

「あの七人を移送するには二個分隊は必要だ。それに、こちらも糧食、装備、救護は合わせて一個分隊必要だな」

「それに、忍びの一族、十人は残らなければな。監視と報告も必要だ」


 なんだよ、てめぇら。考えていることは同じじゃねぇか。主上の意図を汲み取る、心強い仲間じゃねぇか。


「決まったな。十二個分隊を残す」

「そうだな。ところで、ルーフス殿。表に立つリブラム初級兵はどうしたのだ」


 あの小僧のことか。


「あいつは、見どころがありそうだ。近くで様子を見て、使えるようならば、主上に推挙する」

「ほう、見どころがあるか」


 反応したのは、レイムさんだ。


「へい。まず、裏表なく働きやす。それに、状況判断が出来、先を読むのも深く思考しているようなので」

「面白そうなやつなのだな。あの者のルクスは問題ない。見極めるがよかろう」

「ありがとうございやす」

「それとな」


 レイムさんは机の上に降りてくる。


「言っていた場所の隠蔽結界、冷蔵結界は作っておいた」


 広場に現出する前に、そこまでしてくれていたのか。


「重ねて、お礼を申し上げます」

「構わんさ。それで、リルザの侵攻をいつと見ているのだ」


 この様子では、レイムさんもまだ主上と話は出来ていないようだ。


「明日以降です。十日ほど前に上級官吏辞職、公貴の廃止が決まり全てに監査が入りやした」

「監査と言っても形だけだろ。会計に詳しい者などそんなにはおらんぞ、この国には」

「形で十分でさぁ。それだけで、あいつらは怯えます。そこに、アベル様が動きました」

「ほう、何かしたのか」


 レイムさんは机に座り、手を上げた。

 この仕草は何を意味するのか、もう一族の皆は知っている。

 すぐに、カップと林檎酒が運ばれてきた。


「へい。彼らに揺さぶりを掛けました。今ならば、少し値は張るがリルザ王国へ案内すると」


 そのカップに林檎酒を注いでレイムさんに渡す。


「後ろめたい者は、それに乗るか。反乱を起こしようにも手兵がおらんからの」


 そのカップを煽った。


「それで、どうして値が張ると言ったのだ。格安だと言えばすぐに乗るだろう」


 やはり、主上の方が知恵はレイムさんより上だ。


「格安と言えば、何かあるのかと裏読みされやす。ですが、値が張ると言えば、足元を見た逃がし屋と勝手に考えやす。なにせ、盗賊も誘拐もこの国では生き辛くなりやしたから」


 レイムさんが、カップ置くと頷く。


「なるほどな。逃がした上級官吏と公貴が、リルザ王国の侵攻する大義になるわけか」

「さようで、それが着くのが今晩、闇に紛れてです」


 そのカップに再び林檎酒を注いだ。


 そのあっしを睨みつけ、

「しかし、言っておくぞ。おまえたちは隆也に使われ過ぎだ。あたしがこれだけこき使われても、それ以上のおまえたちがいるから、さぼりも出来ない」

レイムさんは不機嫌そうにカップを抱え込んだ。


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