表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

歳園さんの美しき怒り

_人人人人人人_

> 登場人物 <

 ̄Y^Y^Y^Y^Y ̄


歳園(さいえん) 姫子(ひめこ)


- 飛び抜けて成績が優秀だったため、カンニング疑惑をかけられた

- しかしそれ以外に疑惑をかけられる要素が無かったため、すぐにたち消えた

- しかし、疑惑をかけられて怒ったため、真犯人を探すことにした


忠信(ただのぶ) 和臣(かずおみ)


- 少女の隣の席の少年

- 少女に協力することになる


稲垣(いながき)


- 数学教師

- 少女に一旦疑惑をかけて、怒りを買ってしまう


■阿木くん


- テニス部部員

- 容疑者の一人


■尾藤くん


- テニス部部員

- 容疑者の一人


■清水さん


- テニス部マネージャー

- 容疑者の一人

 和臣はまだ読んだことは無いのだが、『不思議の国のアリス』にはハートの女王という人物が出てくるらしい。

 怒らせると怖いらしい。

 それでいてとても怒りっぽいらしい。

 まるで歳園姫子さんのようだなあと、和臣は思った。


*


 その歳園姫子さんは席についたまま、美しき切れ長の目を細めて、教壇の稲垣を睨みつけた。

 これだ。和臣は思った。歳園姫子さんは怒りっぽく、怒らせると怖いが、怒っている姿がこの世で一番美しい。

 和臣は特等席から歳園さんを見つめた。隣の席なのだ。

「……証拠はあるんでしょうね?」

 歳園さんは稲垣教師に問いかけた。

 美しき怒りに気を取られて忘れかけていたが、今は緊迫した状況だった。

 稲垣によると、歳園さんは(稲垣が担当した)数学の授業で、テストの問題用紙を盗み見たらしい。

 そして満点を取ったのだと、稲垣は主張している。

「……まず第一に、問題用紙を誰かが盗んだのは確かだ。これを見なさい」

 稲垣はスーツの懐から、折りたたまれたA4のルーズリーフを取り出した。

「何者かが問題用紙を盗み、このルーズリーフにメモを取ったようだ。ゴミ箱から見つかったよ」

 稲垣はルーズリーフを歳園さんに差し出した。

 歳園さんは一瞥すると、

「私の字ではないですね」

「おそらく実行犯は別にいるのだろう。歳園さん、あなたはこの教室で恐れられている。誰かに命令して、問題用紙を盗ませたのではないか」

「なぜ私を疑うのか、そして証拠は?」

 歳園さんは最初の問いを繰り返した。

「歳園さん、あなたの答案はこれだ。ルーズリーフのメモと一致している。特に問4なんてひどいものだ」

 稲垣は歳園さんの答案用紙を差し出した。歳園さんはそちらも一瞥すると、

「問4はこうしか解きようが無いと思います」

「それでも、解答の道筋が出題者とまるっきり一致するなんてことが、あり得るだろうか?」

「……稲垣先生と同じ程度の解答しかできないなんて、私もまだまだね」

 歳園さんは呟いた。意図してかどうかは分からないが、かなり挑発的な言動と言える。

 もともと静かだった教室がさらに静まり返った。誰かが息を呑んだ。

「あ、あの先生」

 和臣は割って入ることにした。

「問題用紙がいつ盗まれたのか、そしてそのメモがいつ書かれたのか、そういったことを考えてみてはどうでしょうか?」

 和臣は稲垣に問いかけた。

 稲垣は細い目(こちらは元々細い)で和臣を見た。

「問題用紙は3日前から一昨日にかけて作り、昨日のテストで配布した。あまり時間が無いので、メモを見てすぐに覚えられるものが犯人だと思われる。

 歳園さんは記憶力にも自信があったはずだ」

 稲垣は歳園さんを見た。

「ええ、私は記憶力が良いので、必要条件と十分条件の違いを覚えています。数学の授業で出てきた概念でしたね?」

 歳園さんは稲垣に問いかけた。

 つまり、歳園さんはメモを見て覚えられるかもしれないが、メモを見て覚えられるものが歳園さんだけとは限らない、ということを、皮肉交じりに言っているのだ。

「授業をよく聞いてくれて感謝するよ」

 稲垣も皮肉交じりに言った。

「この件はさらに検討が必要だ。今日はここまでにしよう」


*


「……忠臣みたいな名前の、君」

 歳園さんは和臣に話しかけた。

「忠信和臣だけど……」

「ああ、そうだった。忠信君」

 記憶力が良いと主張したばかりのわりに、人の名前を全く覚えていない。

「手伝ってほしい。私は、私の潔白を証明するために行動に出ることにした」

「行動って?」

「調査だ。真犯人を見つけて、土下座させる。さらに稲垣教師にも土下座させる。その様子をスマホで取って、クラウドに保管する」

 やはり『ハートの女王』の怒りは怖い。敵にだけは回したくない。

「……流出させないでね」

「無論だ。それで、忠信くんは手伝ってくれるのか?」

「手伝うけど、なんで僕が必要なの? 一人でできそうな気がするけど」

「私は、この学校の人間の顔をほとんど覚えていない。興味が無さすぎて」

「……ああ、そう」

「それでは、調査開始だ。ひとまず職員室で聞き込みしよう」

「いきなりハードな場所から始まるなあ」

 歳園さんは上履きをカッカと鳴らして、教室を出た。


*


「稲垣教師」

 歳園さんは職員室に入ると、コーヒーを飲んでいた稲垣に話しかけた。

「……君か」

「早速ですが、3日前と一昨日の行動を詳細に思い出してください」

「聞き込みかね。まあ、確かに思い出す必要はあるな」

 稲垣はコーヒーを飲みながら、しばし沈黙した。

「問題用紙はいつものように、部活の合間に作成した」

「何部ですか?」

「テニス部だよ。覚えていないのか? 記憶力が良いのに」

「興味が無さすぎて」

「……テニス部の部室に机とパソコンと簡易的なプリンターが置いてある。

 そこで問題用紙を作成した。完成したのは一昨日の午後4時頃だ」

「その後は?」

「部活動は午後6時までだ。その後、部室を出て、職員室で人数分にまでコピーした。

 ただ、職員室に入ってからは、盗まれることは無いという気がするな」

「なぜです? 誰もいなかったとか?」

「逆だよ。常に誰かの目がある。それにコピーしたあとは施錠した引き出しの中に入れておいた。鍵には別状ない」

「なるほど、つまり怪しいのはテニス部ということですね。

 忠信くん、行こうか」

「ま、待て。まさか君たち、誰彼問わず犯人扱いするつもりか?」

 稲垣が慌てて聞いた。

「しかたない。私も犯人扱いされましたからね」

 歳園さんは答えると、カッカと上履きを鳴らして、職員室を出た。

「……しょうがない、せめて私もついていこう」

 稲垣はコーヒーを飲み干して、歳園さんの後を追った。

 最後に和臣が、教師たちに会釈をして職員室を出た。


*


「それで、部室というのは」

「運動場横の部室棟にあるよ。テニス部は、2階の東寄り」

 和臣が教えると、二人は外履きに履き替えて運動場に向かった。

 後ろからは苦い顔をした稲垣がついてくる。

「ここだな」

 歳園さんは階段を上がると、2階東寄りの部屋のドアを開け放った。

「頼もう!」

「誰だよ!」

「今着替え中!」

 まさに放課後が始まったところだったので、テニス部は着替え中だった。

 歳園さんはまるで気にせずに部室に入ると、人数を数え始めた。

「9人いるな。これで全員か?」

「いきなり入ってきてなんだよ!」

 テニス部たちは歳園さんに困惑していた。

「私は歳園姫子。この中学校の2年生だ。

 実はテニス部顧問の稲垣先生の情報によると、ここでテストの問題用紙が盗まれたそうだ。

 私にも容疑がかかっている。私は潔白を証明するために、真犯人を見つけて土下座させることにした」

 歳園さんはテニス部たちに説明した。

「俺たちも知らないって!」

「ふむ、確かに3年生と1年生は無関係である可能性が高いな。除外しよう」

 歳園さんは3年生と1年生を部屋の外に放り出した。

 (ちなみに、ネクタイの色で見分けるのは容易だ)

「残りは2人か。どちらかが犯人だな」

 歳園さんは阿木と尾藤の2人を交互に見た。

「何の騒ぎ?」

 外から声がした。入ってきたのはマネージャーの清水さんだ。

「ああ、『テニサーの姫』さん、あなたも2年生だった」

 相変わらず他人の覚え方が曖昧だった。

「清水です」

 清水さんに、歳園さんはここに入ってきたときと同じ自己紹介をした。

「……というわけで、あなたも犯人である可能性があるな」

「疑うなら、どうぞご勝手に」

 清水さんは肩をすくめた。

「清水さん、一昨日の部活動の最中、どういう行動を取っていたか覚えている?」

「基本的にテニスコートにいたけど、一度トイレに行った。あと、みんなのドリンクを作るために、一度部室に入ったよ」

「トイレってどこ?」

 歳園さんがぶしつけに聞いた。

「部室棟には無いです。運動場にあるトイレは汚れているから、校舎まで行ったよ」

「ドリンクづくりというのは?」

「あそこに」

 清水さんは部室の端にある、大きな水筒を指差した。

「あの水筒の中に冷水を入れて、粉末も入れて、よく振る。結構重たいけど、まあ、大した作業じゃないよ」

「なるほど……。3分から5分ってとこかな。

 稲垣教師」

 歳園さんは稲垣を呼んだ。

「清水さんが部室に来たときを覚えていますか?」

「ああ、確かに来たよ。その時私は……、確か、プリンターを使っていたんじゃなかったかな」

「あ、たぶん、そうでした」

 清水さんもその光景を思い出したようだ。

「完成したのは16時ごろと仰っていましたが」

「うん、たぶんそんな頃合いだろう」

「ドリンクを仕込んだのも、16時ごろだったと思う。いつもその時間、少し空くから」

 稲垣と清水さんの意見に食い違いは無い。

「プリンターはディスプレイの隣か……」

 歳園さんはプリンターのある場所を確認した。小さな机にディスプレイとプリンターが並んでいる。

「コピーする部分に問題用紙を忘れていたとか?」

 和臣が言ってみる。

「それは無いな。問題用紙は3枚に及ぶから、どうしたって取り出す作業は入る。そもそも、このプリンターは本当にプリントしかできないタイプだし」

 稲垣が答えた。

「ふむ。では、他の容疑者の話を聞こう」


*


 阿木は気の弱そうな顔を歳園さんに向けた。

「僕も容疑者なの……?」

「一昨日の行動を知りたい。

 問題用紙が作られたのは3日前から一昨日にかけてで、完成したのは一昨日の午後4時頃だ。稲垣教師は『問4』をカンニングされたと主張しているが、問4はテストの後半だから、一昨日が怪しいことになる」

「でも僕は当日、早退したよ」

「早退した時間によって、可能性は変わってくる。

 さあ、何時頃だった?」

「部活が始まってすぐだから、午後3時半くらいかな。

 家から電話があって、急いで帰ったんだ」

「家から電話?」

「要件まで言わなきゃいけない?」

「いや、それは行き過ぎか。

 まあとにかく、午後3時半に早退したと。それなら、部室に荷物を取りに来たんじゃないか?」

「荷物も取ったし、着替えもしたよ」

 ここで歳園さんは稲垣を見た。

「ああ、確かに早退しに帰ってきたよ。その時、私は問題作成に集中していた。軽く話して、すぐに開放した」

「つまり、まだ問題は作成途中だった?」

「うん、そのはずだ」

「……ということは、阿木くんが犯人とは考えづらいのでは?」

 和臣が言った。

「そうかもしれないし、そうでないかもしれない。尾藤くんはどうだ?」

 尾藤は普段は快活そうな少年だったが、今はやや不機嫌だった。

「当日にラケットが壊れた」

「ラケットが? で、どういう対応を?」

「部室に行って、新しいラケットを持って帰った」

「じゃあ、部室に入っているな」

「そうだよ。でも、問題用紙を盗んだとか、そんなことはしてないよ」

「可能性の話だ。何時頃に部室に入った?」

「4時……、半ってとこかな?」

「稲垣教師のほうはどうだ?」

 歳園さんが向き直ると、稲垣も待っていたかのように、

「確かにそんな時間だ。私は問題作成が一段落して、仮眠を取っていた」

「仮眠! 重要じゃないですか!」

「いや、少しうとうとした程度だ。尾藤が入ってきたのにも気づいて、少し会話したはずだ」

「ああ、『おつかれ様です』って言ったよ、確か」

「……問題用紙は?」

「清水さんが入ってきたときにプリントして、そのまま机に置いておいたと思うが……」

「尾藤くん、君は机に近づいたか?」

「とんでもない。ラケットを取っただけだって」

「……なるほど。ある程度情報を得られたので、ここで解散する。ご苦労だった」

 歳園さんは足音も高らかに出ていった。

「なんなの、あの人」

 清水さんが嫌悪をあらわにした。

「強烈なキャラクターですね」

 阿木が呟いた。

「真犯人が見つかればともかく、これで歳園さんが犯人だったら、逆に土下座させる」

 尾藤が言った。

 和臣は足音を忍ばせて部室を出た。


*


「ふむ、隣の部屋は空きか」

 歳園さんは何事も無かったかのように隣の部屋を開けた。

「ここは本来、野球部の部屋なんだけど、不祥事で活動停止だって」

 和臣が説明する。

「誰かがここを利用した可能性もあるか……。どちらにせよ、問題用紙を盗むトリックを暴かないとな」

 歳園さんはしばらく美しき顔を伏せていたが、

「容疑者は3人。阿木くんが3時半、清水さんが4時、尾藤くんが4時半にそれぞれ部室に行っている。

 問題用紙のほうは、3時半にはまだPCの中、4時頃プリント、4時半には机の上に置いてあった。

 これだけ見ると、尾藤くんが怪しいように思えるが……」

「思えるが、なに?」

「証拠が無い。尾藤くんは机に近づいていないし、問題用紙を盗んだという証拠も無い。

 証拠もないのに疑うと言う行為は、まさに私が受けた行為だから、繰り返すわけにはいかない」

「誇り高い」

 和臣は歳園さんの言葉に感心した。

「じゃあ、他の可能性としては?」

「可能性の話だが、稲垣教師が問題用紙を横流ししたとか」

「稲垣先生が?」

「横流しなら、アリバイの問題はそもそも意味がなくなる。職員室に帰ってからでも誰かに渡せばいい」

「でも、問題用紙を盗まれたと騒ぎ出したのは、稲垣先生だよ。それって、自分の立場が怪しくならない?」

 和臣の指摘に、歳園さんはうなずいた。

「そうだな。稲垣教師が私を疑い出さなければ、そもそもカンニングの話すら無かった。そして、彼が犯人だとすればそちらのほうが都合が良かったはずだ。

 つまり、不合理だ。不合理は嫌だな……」

 歳園さんは美しき顔を歪めた。

「こんなとき、TVやなんかの名探偵だったら、あっさり解決するんだろうがな。私はどうやら、力不足のようだ」

「TV」

 和臣は反射的に言った。

「なんだ、忠信くん。私だってテレビを見るときもあるよ」

「いや、そうだろうけど。

 あの部室、テレビも置いてあったなと思って」

「ああ、試合のビデオでも見るんだろうな。予算があって良いなあ。私も予算がほしい」

「テレビがあればできる……、でも」

「できるって、何が?」

「問題を盗むことが。でもそうだとすると、イメージと少し違うな」

 考え込み始めた和臣を見て、歳園さんは

「私を置いてけぼりにするな!」

 と言った。


*


「今日は散々だったな。変な女子が着替え中に入ってくるし」

 放課後の校門前。尾藤が愚痴るのが聞こえる。

「そうだね……」

 阿木が相槌を打つが、どこか気がない調子だ。

「変で悪かったな」

 歳園さんが二人に詰め寄った。和臣と一緒に待ち伏せしていたのだ。

「な、なんだよ、お前ら」

「実は尾藤くん、君には用は無い」

 歳園さんは尾藤を押しのけると、阿木に話しかけた。

「阿木くん、君は問題用紙を盗んだんだろう?

 いや、『問題データ』を盗んだと言ったほうがいいか」

 阿木の目が大きく見開かれた。

「……そこまで分かっているなら、しょうがないね。僕がやったよ」

「っておい!」

 尾藤が割り込んできた。

「そんなわけないだろ、こいつが部室に入ったとき、問題はまだ作っている最中だったらしいじゃないか!」

「そこがポイントなんだ」

 歳園さんは指をぴんと立てた。

「もっとも、こいつは受け売りの推理だがね。解いたのは、忠信くんだ」

 和臣は尾藤に説明した。

「部室にある先生のPCに、これが刺さっていた」

 和臣はケーブルを見せた。

「これ……、USBか?」

「いや、HDMI。PC本体とディスプレイをつなぐケーブルだ。

 阿木くんは事前にこのケーブルを刺して、PCをディスプレイと部室のテレビの2画面で表示される状態にしておいたんだ。

 多くのPCでは、ディスプレイが2台あるときの表示の仕方を設定できる。この場合、事前に同じ画面が両方に表示されるように設定して、家族の電話だと偽って早退。着替えに入ったときにテレビをつけて、画面をスマホで撮った。

 問題すべてを録画はできなかっただろうけど、それでもカンニングとしての効果はあげられる。

 ケーブルはいずれ回収するつもりだっただろうけど、今日は歳園さんが騒いだりして、できなかった」

「証拠はあるのか?」

「このケーブルを買った店に、阿木くんを連れていけば分かる。そこまでしようとは思わないけど」

「ごめんよ。成績が落ちると、家族に心配されるから、つい……」

 阿木くんは謝ったが、歳園さんは

「私が求めている謝罪の方法は、それじゃない」

 と言った。

 阿木くんは流れるように土下座した。というか、させられた。


*


「すまん! 勝手な疑いをかけた!」

 職員室ではさらに稲垣にも土下座させるあたり、さすが『ハートの女王』だ。

 和臣は歳園さんの美しき怒りに、少し怯えた。

「……というわけで、これで一段落だな」

 歳園さんは和臣に言った。

「疑いが晴れてよかったね」

「だいたいは君のおかげだ」

 歳園さんは和臣に微笑んだ。稲垣に土下座させたままで。

「君ならば、もしや……」

「もしやって、何?」

「いや、私はこの性格だから、抱え込んでいる問題がいくつかある。

 その中の推理が必要な問題を、忠信くんに任せようかと思ってな」

「……ちょっとそこまでは」

「引き受けてくれれば、君の名前を覚えよう! これは相当名誉なことだぞ」

「……まだ覚えてなかったの?」

 どうやら、歳園さんの周りにはまだまだ事件があるようだ。

 二人は、土下座する稲垣を尻目に、職員室を出て校門に向かった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ