七号線ロストボーイズ
レビュー執筆日:2022/6/13
●「希望」という言葉を「影」や「エンタメ性」でamazarashiなりに上手く解釈したアルバム。
【収録曲】
1.環状道路七号線
2.火種
3.境界線
4.ロストボーイズ
5.間抜けなニムロド
6.かつて焼け落ちた町
7.アダプテッド
8.戸山団地のレインボー
9.アオモリオルタナティブ
10.1.0
11.空白の車窓から
前作のEP『令和二年、雨天決行』で暗い雰囲気の世界観を押し出してきたamazarashiですが、今作においてはその反動か、全体的に「力強さ」や「明るさ」を感じさせる楽曲が増えたように思えました。『火種』や『境界線』は「戦う者の覚悟」をエネルギッシュに歌っているように感じられますし、『アオモリオルタナティブ』のサビにおける「君はもうきっと大丈夫」というフレーズはかなりストレート。『空白の車窓から』は彼らのアルバムの最後の曲としては珍しくハイテンポで疾走感のあるナンバーになっています。まあ、別に以前の彼らと比べて作風が大きく変わったというわけではありませんが、少なくとも今作には『空っぽの空に潰される』や『令和二年』のような終始暗い感じの楽曲は収録されていないように思えました。
ただ、ポジティブな要素が強くなったとはいえ、底抜けに明るい感じにならずにある種のネガティブな面も付きまとっている点からは彼ららしさを大いに受け取ることができます。例えば、『境界線』は先程挙げたように全体的に力強い雰囲気を持っていますが、サビは「境界線の向こう側で 忘れさられ終わる定め」というフレーズで始まっていますし、『1.0』においては「悲観とは未来にするもので そう考えると悲観しているだけましだと思いませんか」といった前向きなのか後ろ向きなのか判断しかねるような歌詞が出てきます。『かつて焼け落ちた町』や『戸山団地のレインボー』のようにボーカリスト兼ソングライター・秋田ひろむの出身地・青森に関する決して明るいとは言えない具体的な描写を伴った曲もあり、そういった様々な要素が「影」となり、その対比として彼らならではの「希望」が色濃く浮かび上がってくるのではないでしょうか。
言葉数が多過ぎるように感じられるところもあるのですが、歌詞の内容自体はそこまで押しつけがましい雰囲気ではないですし、ギターロックやヒップホップ、ピアノをメインにしたバラード等と相変わらず曲調の幅は広め。「泣かないで ロストボーイ ロストボーイ」(ロストボーイズ)や「死んだらどうか 相談しようそうしよう」(アダプテッド)のようにメロディとしっかりと結び付いたフレーズが随所に出てくるということもあり、個人的にはそこまで「しつこさ」を感じずに聴くことができました。
強いメッセージ性や先程挙げたような「影」を持ちつつも程良くエンタメ性を持っており、「希望」という下手したら無責任なものになってしまいかねない言葉をamazarashiなりに上手く解釈したアルバムになっているのでないのでしょうか。
評価:★★★★★




