令和二年、雨天決行
レビュー執筆日:2021/4/15
●「令和二年」のドキュメンタリー的な意味合いを持ちつつ、これまでの彼らの延長線上にある要素も感じられる一作。
【収録曲】
1.令和二年
2.世界の解像度
3.太陽の羽化
4.馬鹿騒ぎはもう終わり
5.曇天
<ボーナストラック(初回盤のみ)>
6.令和二年 (acoustic version)
7.積み木(acoustic version)
8.東京 (acoustic version)
個人的にはかなりの傑作だった『ボイコット』から1年も経たずにリリースされたamazarashiの新作となるEP。今作は「新型コロナウイルスの影響下で作られた作品」ということが強調されていますが、そのイメージ通り、全体的に暗い印象を抱かせる歌詞が多いように感じられます。特に、冒頭に収録されている『令和二年』には「中止の卒業式」「封鎖の公園の桜」等といった直接的な描写が多く、タイトル通り、令和二年(2020年)という年を生々しく切り取った楽曲になっているのではないでしょうか。
ただ、これまでの彼らと比べて歌詞の雰囲気が急に変わったかというと、別段そういう印象は受けませんでした。2020年に対する直接的な描写に関しても、先程挙げた『令和二年』を除けばそこまで多くありません。例えば、今作には『馬鹿騒ぎはもう終わり』という曲があり、タイトルだけだと「コロナ禍により馬鹿騒ぎができなくなってしまった」という意味合いに見えるかもしれませんが、歌詞全体を見る限り、「若い頃みたいに馬鹿騒ぎはもうできないと昔を懐かしむ」といった意味合いの方が強く感じられます。また、『曇天』の冒頭に「とにもかくにも僕らの日常は奪われた」というフレーズがありますが、彼らの楽曲においてこのように「ある種のディストピア的な世界観で綴る」といった手法を用いるのは今に始まった話ではありません。
メロディやサウンドに関しては、全体的に盛り上がりを抑えたような印象を受けました。もしかしたら、2020年のドキュメンタリー的な意味合いを強めるために敢えてそうしたのかもしれませんが、個人的には、一つの作品として聴くにはやや地味に感じられるところもあります。
「令和二年」という特定の年を冠しながらも、これまでの彼らの延長線上にある要素も感じられる本作。そう考えると、「コロナ禍によってこのような作風になった」と言えると同時に「2020年という年がamazarashiの歌詞の世界観をある意味体現したような年だった」と言えるのかもしれません(前作にも『マスクチルドレン』という曲がありましたし)。2021年はそういった状況が少しでも打開される年になることを願うばかりです。
評価:★★★★