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どんな本でも、一発で100ページ目を開ける。それが俺の特殊能力だ。まさか、これで世界を救うとは思ってなかった。そして、また滅ぼすとは。

作者: WsdHarumaki

どんな本でも、一発で100ページ目を開ける。それが俺の特殊能力だ。まさか、これで世界を救うとは思ってなかった。そして、また滅ぼすとは。俺は世界を救う英雄とも悪魔とも言われる事になる。「なんでユージョンはぽんこつなのよ」幼なじみの詠唱師のミアは俺をポカポカと殴る。


赤毛のミアは、俺の背中で泣いていた。俺は呆然と首都の崩壊する状態を見ながら逆に晴れやかに笑っていた。


「腐敗しているわね」ミアがつぶやく。ソドムと呼ばれるその都市は、快楽と汚辱で薄汚れていた。都市中にある宿は全てが売春宿で快楽を与える為の施設だ。俺はその都市で生まれた。美形ではないので肉体労働に回される事になる予定だ。でも音楽の才能を見いだされた。


この世界では詠唱呪文が長い。音声詠唱のために100ページ以上を使う場合もある。終わりあたりのページで締めくくりをするので重大な役割がある。複数の詠唱者がパート順に唱えればいいが、抜けたり遅れたりすると失敗をする。


俺はそんな中で周囲の進捗を見ながらラストで締めるパートを受け持つ。俺の特殊能力は詠唱が遅れている状態でも、きちんと魔法書の100ページ目を開いて詠唱できる事だ。


最後のページからめくれよ、君たちの指摘は判るが、常に100ページ目が大事なのだ、101ページや99ページを開いてしまうと逆算して戻るページ数を間違うかもしれない。でも100ページなら簡単だ。


今日も糞みたいな仕事だが、ドブ掃除だ。複数の詠唱魔法を組み合わせる。浄化や除菌の呪文を組み合わせながら、最後に合体詠唱で完成する。調整しながら、俺のパートが終わると100ページを即座にめくって待機をする。ミアの指揮を見ながら詠唱を完成させた。


ドブに美しい水が流れる。どうせすぐ汚れるが。「掃除屋 次だ」偉そうに俺たちを連れ回すのは、ボスのホレスだ。ボスは子供の俺たちを使いながら金を儲けている。まぁ子供でも売春宿で働くよりはましだ。あの子達の悲惨さは見ていられない。


ホレスが俺たちを殴る「もっと速く歌えよ」無理難題を言う、複数の詠唱が絡み合わないと効果は出ない。もっと簡単な攻撃魔法ならすぐできるが、複雑な環境を変化させるのは、シビアな調律が必要だ。


いつも城壁掃除や井戸の水の浄化をして回るが、キリが無い。すぐ翌日に汚れるのだ。管理者で暴虐の王は、無駄に金が使われるのを嫌った。一気に浄化しろと言う。


ホレスが上機嫌で俺たちに命令をした「都市全体の浄化だ」呆れる俺たちの尻を叩きながら、新しい詠唱呪文の本を用意する。しばらくは本を見ながら練習をして成功する確率を上げようとしていた。


「王から今すぐやれと命令だ」練習不足のまま俺たちは城壁の上の物見の塔に登ると詠唱を開始する。長い詠唱をしている間に、首都のブロックがどんどん浄化された。ホレスは嬉しそうだ。でも何か変だ。住民が逃げ回っている。「なんだあれ?」俺たちは詠唱を中止しなかったが、首都の中で悪魔族が暴れている。


ホルスは「お前らここで詠唱していろ」と叫ぶと塔を降りる。城壁の上を走っているホルスを目で追っていると、体が変化をして翼のある悪魔になる。ホルスは下で逃げ回っている人を襲いだした。


俺は嫌な予感がしていた、詠唱が間違っているのでは?でも本に書いてある通りだ。俺たちはすべてのブロックを浄化すると、詠唱をやめた。急いで俺は100ページ目を確認した。


俺の本だけ誤植が混じっていた。ある年齢以上の大人を全て悪魔にする魔法だった。複雑な組み合わせで異様な効果が出ていた。指揮者のミアは泣き終わると「どうなるのこの国は?」と聞いてくる。俺は気取って「悪魔を消す詠唱をすればいいよ」と答える。


悪徳を楽しむ、すべての大人達は悪魔になり、俺たちの詠唱で砕け散る。国は子供達が再建すればいい。ミアの肩を抱きながら俺は唱い続けた。


終わり

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