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第4課題 LEECH 第6問

「おはようございます。本日から何卒よろしくお願いいたします」


「おぅ」


「うぃっす」


「へーい」


 行李輸送に到着すると、昨日麻雀を打っていたメンバー4人が全く同じ生き物とは思えないくらいに一生懸命に伝票をペラペラとめくっていた。


 仕事人としての目つきになっている。


 その中心にいた幸雄が、目線を私に向ける。


「うゎお! 鐘子!」


 おやおや、私の魅力が男達を釘付けにしてしまったみたい。


 私もまだまだ捨てたものじゃないわ。

 

 なんて自惚れていたら、重いもよらぬ言葉を幸雄が発するじゃない。


「一体どうしちまったんだよ、その恰好?」


 残りの従業員達も幸雄の声に反応し、振り返って私を見つめる。


 3人の手が同時にピタッと止まったことから推察するに、同様の感想を持ったのだろう。


 幸雄がやれやれという表情で私の元に歩いてきた。


 一体何なのよ、あんた達! この魅力が分からないの?


「鐘子。運ちゃんの世界っつうのは脳みそは足りないが体力だけが自慢の野郎が集い、泥だらけになって、汗かいて、朝から深夜まで24時間ブツを或る所から或る所に運ぶのが仕事だ。本当に女と縁遠い世界だ。仕事の大半はトラックの運転席で独りっきりでハンドルを握っているし、倉庫の現場もほとんどがおっさん。たまにヤンキーあがりのネーちゃんいるけど、大概コブつきとかバツイチとかで面倒臭ぇんだよ。だから、俺達は日々ハンドルを握りながら、絶えずチンコを握らせる女の事を考えている。そんな俺らにとって一番縁遠い存在がキャリアウーマンだ。頭の良いオンナを己のチンコでヒーヒー言わせ、服従させる。そんな妄想を描きながら日々己のチンコを握る。つまり、キャリアウーマンとは俺ら運ちゃん連中にとって一番のオナニーマスコットなんだよ。そんな恰好してみぃ。この行李輸送を訪れる運ちゃん達に、次々と輪姦されちまうぞ」


 といいながら、昨日私の応対をしてくれた下っ端茶髪ヤンキーの股間をおもむろにグイッと掴む。


「ほら、こいつもカッチカチになってやがるだろ。鐘子も握ってみ?」


「いやいやいやいや、結構です」


「へ? 本当にいいのか?」


 なーんだ、ザンネーンと、幸雄はにやけながらその辺の椅子に無造作にかけられていた作業着を私にポンと投げてきた。


「運ちゃん連中に犯されたくなかったら、さっさとその作業着に着替えてきな。お前ぇら、さっさと伝票チェック終わらせねぇと、午前のブツ遅延すんぞ」


「おぅ」


「うぃっす」


「へーい」


 男たちは再び仕事モードへ戻っていった。



「あの……どこで着替えればいいんですか?」


 私の声はどうやら届いていない。


 仕方がないので、事務所の奥に便所と下手くそな手書きで書かれた木製のドアを目指すことにした。


 歩きながら作業着の匂いを軽く嗅いでみると、『おうぇっ』と思わず声を吐きたくなるような男臭が鼻を襲った。


 こんなの着たら、肌に匂いが染み込んで一生男臭い女になってしまうだろう。


 なんて日だ。


 でも今日はパート初日だし、私もちょっと場違いな恰好だったかも……。


 仕方ない、我慢しよう。



 勢いよく便所のドアを開けると、作業着の臭いを上回る強烈なアンモニア臭と生臭さが再度私を襲ってきたのは言うまでもない。


 何度も窒息になりそうながらも、白い(というかシミで卵色に変色)Tシャツに深緑色の短パンオーバーオール、そしてその胸元にやはり金文字で『行李輸送』と書いてある作業着に身を包み、幸雄の元へと戻る。

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