第4課題 LEECH 第5問
昨日までの退屈な日常から打って変わって私のパート生活が始まった。
自宅から車で10分と近くではあるが、今までのキャリアウーマン時代を僅かながら彷彿させてくれる通勤生活の復活に思わずテンションが高くなる。
出勤初日ということもあり、黒のパンツスーツに黒のパンプスを合わせ、シックに決めた。
そして髪をルイヴィトンのバレッタで纏め、唇に深紅のルージュを塗り合わせる。
勤務は朝10時から16時までと甘っちょろいシフトだが、今日は7時に起き、ネコや飛脚などの同業他社に関する記事が無いか、日本経済新聞に目を通す。
旦那は病院経営に加え、医学博士として重要な研究が大詰めになっているらしく、携帯で私と連絡を取り合う時間も儘ならない様子。
私から一方的に送られたラインの既読通知だけが、夫からの存命証明。
夫の賛成を得ずしてパートを始める事に後ろめたい気持ちもあったが、別にやましい事をしているわけでもないし、「都留でやりたい事が見つかってよかったじゃないか」と、きっと喜んで応援してくれるはず。
そうよ、そのはずと自分に言い聞かせると、機動戦士ガンダムのアムロの如く自宅の玄関を勢いよく飛び出した。
「孝 鐘子、行きまーす」