17 脱出は面倒だ(3)
どれくらい歩いたかわからない。
光が見えだした頃には、スタミナを半分以上消費していた。
光の方へ目指して走っていくと司会者の声が聞こえてきた。
「――オークションは終了とさせ――」
言い切る前に反対側から焦ったように走ってきた男が司会者に耳打ちした。司会者は目を見開いたかと思うと耳打ちしてきた男を殴り、バランスを崩したところで足をかけ転ばして蹴りまくり、息の根を止めに行くかと思ったら体格が良い者が五人がかりでやっと司会者の動きを止めそのうちに男を助け出した。
司会者どんだけ強いんだよ……。
後から来たやつも二人ぐらい吹っ飛ばしてたぞ。
「チッ、こいつはミンチにして女に産ませたガキの餌にでもしてろ」
「は、はい、ただちに」
「し、死にたくねぇ!!死にた――ガハッ」
叫ぼうとした男の顎を蹴り、意識を飛ばした。
「おっと、失礼しました。こちらの不手際で商品の一人が逃げてしまい、捕らえるため建物の出入り口すべて閉鎖しますので少々お時間いただきます」
さっきの怒りの形相だったのが今は笑顔である。
この変わり身の早さが怖いわ!!
急がないと出られなくなるが、この調子だともう閉まってるだろうな……。
だが歩き回った感じ地下や二階とかではなさそうだから壁でもぶち抜くか?いやいやいや、早まってそんなことしたらこのスキルのことがバレてしまう。
自分が通れるくらいの穴を土の魔導書で開けて逃げるか。この姿だと逃げるのもそう難しくはないだろうから。
方針が決まれば行動が早い。近くの壁に【横穴】という、本では比較的簡単と書いてあった魔法を使う。
一瞬で穴をあけ音も無音だが一瞬だけクラっとした。
フラフラして見つからないように座って回復に努める。
一分もすれば元に戻った。
穴の奥は外ではなく舞台装置でゴチャゴチャしていた。子供が通れるくらいの狭さしかないが、今の子猫の状態なら簡単に通れる。
そのまま奥の壁に行き同じようにして穴を開けては休憩して、また奥まで行っては穴を開け、休憩する事を20回ほど繰り返してやっと外に出られた。
ここで人型になれば全裸ということもあるが耳と尻尾がバレるは避けたい。それに夜だと肌色は目につくしな。
次にどうやって戻るかだが、まず道に出て道なりに進んだらどこかの街にでもつくだろう。だがそれより餓死するかの不安があるな。
脱出前の14回目のときに休憩室みたいな所を通ったが俺を探してここにはいなかったのもあり机にあったパンや水を飲み食いしていた。
建物の入り口を探してそこからまっすぐに進んだら道くらいならあるはずだが不安だ。それより一刻も早くここから離れないと捕まってしまう。道付近に来たら人型に戻り身体強化で走って行けばそう簡単に見つかりはしないだろう。
それに早く街に行って服を見繕わないとな。
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