15 脱出は面倒だ(1)
「――金貨20枚から!」
次のオークションが始まったようで後ろの方から司会者の声が聞こえる。
目隠しが外れた状態で担がれ明かり一つない道を歩いている。
「すみません。トイレに行かせてはもらえないでしょうか?」
「我慢しろ」
不機嫌そうな声で答えてくれた。
「お腹が冷えてしまって……」
今の格好はギルドで着ていた服装ではなく腹部が見えるボンデージだ。客観的に見れば背徳的で結構エロい格好だったりする。
幼女に着せる衣装ではないだろうに……。
それから数分間、我慢してやっとついた。
「ここでしろ」
ケンケンで便座(ぼっとん便所)の個室に入り、男の死角に入る。
隅の方から黒い炎が虚空から猫を象った者が現れ、今回は黒い粒子になって吸い込まれるのではなく、炎が纏わってドンドン小さくなり子猫になった。
「さっさと出てこい」
10分たった手も出てこない事に焦れて声をかけながら近づいて来る。
個室は一つしかなく、ドアにも鍵がないので普通に入ってきた。ドアの内側に身を潜め、奥にまとめている服に目が行っている間にそそくさと出て行った。
「あいつどこ行った?!」
隅にいれば明かりもないこの部屋では俺は見えまい!
慌しく探しに行った。
よし、上手くいったな!
廊下に出ても壁とくっつくぐらいに寄って当てもなく進んでいき、人型のときより夜目が利くので瓶やゴミを避けて進む。左の曲がり角の限界まで進むとドアがあり、人気がないか確認すると人型に戻り、ドアを開け中に入ると豪華そうな壺や剣、生物までいる。
「これが魔物か……」
遠目でしか見ていなかったので、そこまでだったがマジかで見るとその凶暴さがわかる。
この部屋には人間や亜人はいないようで気にせず歩けるが羞恥心がなくなった訳ではないので早く服が欲しい。
服を探すが一向に見つからず代わりに古めかしい本が一冊見つけた。
それは土の魔導書でいろいろ書かれている。これと似たような本はなくこれ一冊だけで少し残念だ。
【岩石弾】【人形製作】【石槍】【鉱物操作】など、攻撃系のものや製作系のものがある。
「……ん?」
魔導書を読んでいると文字が消えていき、思い出そうとすると一言一句思い出せる。
「形を成して作り出せ【石槍】オォ!槍が出てきた!?」
刃もついていない状態なので鈍器としてしか使えそうにない。でもいかんせんと重い。この体だと筋力が足らなくて投擲武器にも持ち歩くこと出来ない。
「まあおいていこ……」
あとは逃げるだけなんだが……。
人型で廊下で寝てる所を見つけてもらうか?いや、それだと確実に犯される確率が高い。この世界ってロリコンの温床だからな。
これはあんまりしたくないがもと来た道を戻り客に紛れるか。これが一番脱出できる確率が高いと思われる。
賢い奴ならもっといろいろ思いつくんだろうけど、俺の不出来な頭ではこれぐらいしか思いつかん……。
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