10 街だ仕事だ(5)
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逃げるようにホールへ出て来たがもう運ばれた後だった。
「あらら……もう運ばれた後か」
厨房に戻り、料理長にビビりながら言うと受付に戻れ、と言われそそくさと戻っていった。
「やっぱりあの顔、怖い…………」
◇◇◇
「料理長、あの子使い物になりそうっすか?」
「ん?ああ、まだ分からん。包丁を持たせて無いからな」
だが皿洗いや片付けはあの歳と体格で少し早く終わるとは思いもしなかったな。
「可愛かったな……」
「!?」
料理長からで無意識の言葉に下っ端口調の男は口元がひきつった。
「料理長、手を出さないでくださいね」
「そんときはそんときだ」
料理長は〝手を出す″という意味を殴ったりするというふうに考え、下っ端口調の男は犯すという意味に勘違いし聞こえるか聞こえない声でロリコン、と呟いた。
幸いこの二人の会話を聴いたものがおらず、料理長のロリコン疑惑がギルド内で囁かれることはなかった。
◇◇◇
「テルシェさん、他にすることはありませんか?」
「もう終わっちゃったのか~。でも手元の書類整理も終わってるし……」
あっ!と言い、受付をしているところの見学を見してくれるらしい。
「じゃあこっちに回ってきて」
「はい!」
カウンターに椅子を持ってきて、テルシェさんの横に座る。
思ったより椅子は高く、よじ登り座る。
「えっとね~まず、ギルドを利用する人は四種類に分けられるの。料理を食べる人、依頼する人、受託する人、練習場を使う人、これはすべてお金が関与しているの。まあ、報告して報酬を貰うのもお金が関与しているけどね」
「料理は分かりますが受託に何でお金が関わるんですか?」
「それはね失敗されるのは困るからよ。それに私たちのお給料にもなるのがここからと依頼の報酬から数パーセント差し引いたものよ」
じゃあ人数が増えると給料が減るのでは?
「受託しに来た人の対応だけど――」
「すんません、この依頼受けたいんすけど……」
新人なのか荷運びの依頼を受けたらしい。
「じゃあ見ててね。荷運びの依頼ですね。まず銀貨1枚もしくは銅貨100枚お願いします」
「やっぱ前金たけーな……」
項垂れるようにして銀貨を出す。
「それは数年前の人を恨んでください。それでは指定されている所でお待ち下さい」
「あいよ」
力無く手を振りながら出て行く様は哀愁が漂う。
「何であんなに高いんですか?」
少し悩んだ後、テルシェさんが教えてくれた。
「数年前に運んでる最中に店の人の見てないとこで冒険者がお金を取っていたのよ。お店の人が儲けを計算していたら会わなくて、苦情が入りだして料金を上げたんだよね、アハハ、ハァ……」
最後は笑っていたが声にはりがない。
「だ、大丈夫ですか?」
「大丈夫よ、最近は少しずつだけど信頼を取り戻しつつあるから」
そうは言うもののやはり声には元気がない。
「その話は置いといて、受付はこんな感じよ」
「そこまで難しそうじゃないですね?」
「だって受託はお金の計算と依頼の内容を読め理解していれば良いだけだもの。でもね、依頼の受付はお金の計算、内容の理解、は受託と一緒だけれど字を書けることが要求されるの」
「書くことがそんなに難しいんですか?」
日本では三種類の字が使われてるから余り実感がわかない。
すごい人は英語やフランス語まで話せるし書けていたからな……。
「覚えたら簡単だけどね覚えるまでが大変なのよ」
「俺――じゃなかった私はもう覚えてるよ」
一人称を俺と間違えて言ったときに首をかしげられたから慌てて言い直した。
字を書けると言っても余り驚かないから子供の戯言だと思われたのだろう。
「いらない紙みたいな物ありませんか?」
「そうね……これなら良いわよ」
渡されたものはお使いようの紙だ。
そこに近くにあった羽ペンでテルシェと書いた。
「はい」
「えーっと、テルシェ……!?」
その後はすごいの連続だった。頭は撫でられるは抱っこされ高い高いされるわで目が回る。
「ちょっとギルド長のところに行ってくるね」
そういって走っていった。
「…………」
「すみません、この依頼受けたいんですが……」
方針状態から立ち直るとそこには依頼を受けに来た人がいた。
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