9 街だ仕事だ(4)
この状況どうしましよっか……。
良い方に予想するなら、受け入れてくれる。悪い方なら奴隷商に売られるのが妥当だろうな……。
不穏な空気を耐えながらこれから起こる未来を想像していると、耳に触られる感覚がして目を開けるとテルシェが近くにおり、驚き数歩後ずさった。
「な、何でしょうか?」
「珍しく亜人ちゃんに会ったからついね。嫌だったらごめんなさいね」
申し訳なさそうに謝ってくる姿を見ると、悪意はなさそうだ。
「この事は黙っていてくれませんか?」
「良いわよそれくらい」
あっさりと了承したことに呆けてしまった。
そんな顔を見て、クスリと笑いながらリナの想像していた事を当ててきた。
「ああ、売られるって思ってる?そんなことしないよ。貴方ぐらいの子なら金貨数百枚で取引されるわね」
「数百ッ!?」
ここまで来るのに見つからなくて良かったね、と言われたが本当に良かった。
確かにサラさんが俺を売ろうとしたのは納得できる。俺を追い出せて、大金まで手に入るなんて最高すぎるな。
「今はそんなことよりお風呂入るのが先だよ」
「え……」
手をイヤらしく動かしながら近寄って来るのはやめていただきたい。
「その手はな、何ですか……」
「さ~なんでしょうね」
この後、耳や尻尾を触られながら洗われた。
◇◇◇
最近、内面まで女性化が進んで来てる気がする。
でも男を好きって言うのは一切無いけど……なんか気が重い…………。
「うん、とても似合っているわ」
「……ありがとうございます」
元は金髪だった髪も色が抜けていき今では銀髪になってしまった。
「でも本当に綺麗な銀髪ね」
でも伸びるスピードが一般人より数倍早いので今の長さは脹脛まで伸びている。
「服も来たことだし帽子も被ればバレないはず」
動きやすい短めのスカートに半袖の服を着てお金を稼ぐ。だがその前にギルド職員に挨拶が先だ。
「じゃあまず自己紹介から、この子はリナちゃん年齢は六歳、基本的には雑用をやってもらいます」
紹介前にステータスカードを渡している。そのときに奴隷と見て目を見開いていたが何も言わずに返してくれた。
「リナです。迷惑をかけないように頑張ります」
ペコリとお辞儀しその後に職員の紹介をしてくれた。
「リナ、机と椅子をふいた後、調理場に行って調理補助、接客が追い付かなかったらそっちに回ること」
返事をして仕事に取りかかる。
机の木目に沿って拭いていき椅子も同じ様に拭く。それを机一つ、長椅子二つの一組を三十から四十組拭き、それが終わると布巾は濯ぎ干し、調理場へ行く。
「お前が新しく入ったガキか」
「は、はぃ……」
「返事が小さい!!」
「はい!!」
返事だって小さくなるよ。そんな怖い顔だと…………。
目はつり目で口にはうっすらと牙が見えるが鬼のような角も無く、動物やエルフのように獣耳でも長くも無かった。
「じゃあ洗い場行ってこい」
「は、はい!」
指示が下ったのでそれに従い洗い場え行く。
食器が数が物凄く多く、洗っても片付ける場所を覚えるのが大変のようだ。
「頑張ろう……」
食べ残しを捨て水のはったシンクに皿を投入して汚れを落とし、次の湯のはったシンクで油分を落とし、水の中に洗剤の入った次のシンクに投入し洗い、洗い終わったやつを拭いていく。
最後にせっせと皿を片付ける。
「やっと終わった…………」
三時間近くかかりやっとのことで終わり一息つき、休憩していると――。
「サボるぐらいなら接客でもしてこい!!」
「は、はい!!」
肩をびくつかせた後、逃げるように調理場を後にした。