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やるせな隊

こういう部隊ものでコメディーを書いて見たかったけど終わり方が中途半端になってしまった。

連載は気分が向いたらするかもです。

「はっ?」

「だからキミは新しく設立された部隊の隊長へ昇進だ。おめでとう」

「あのう、私は先月士官学校を卒業したばかりですが」

「異例の昇進スピードだ。光栄に思いたまえ。」

「はぁ...」


俺の名前はローデン・エルファ。

自国、ダスティーチェムニー王国の軍人だ。

幼いころから取り柄という取り柄が無かったので士官学校に入ることにした。

軍では家柄も関係ないとのことで庶民の俺でも稼げると思ったからだ。

だが士官学校卒業後に俺は一つのミスをした。

上司がとある部隊の軍事費を自分の懐へ入るようにしていた証拠をばら撒いてしまったのだ。

なんでって俺に会議に出す書類コピーしとけって上司に渡された書類の中に夜のお店で使ってた領収書の束が入ってた。

俺はそれをチェックせずに命令どおりにコピー。

そして会議資料としてお偉いさんにこれまた命令どおりに配った。

そのせいで上司の不正が発覚。

俺はその不正を暴いた、正義感ある男として賞賛された。

もちろんこれは皮肉だ。

不正を暴く奴はどの世界でも嫌われる。

ついたあだ名がチクりのローデン。

誰も俺に近寄らないし、仕事も渡してこない。

唯一ある仕事は他に誰も近くにいない、来ない窓の横で何か電報があった場合の受け取り係。

その電報が鳴ることは俺が受け取り係になってから一度もない。

そりゃそうだ。今の時代、電報なんて使うやつはいない。

楽といえば楽なのだがいかんせん暇だ。

今の上司や職場の人がたまに机に寄ってきて嫌味を言われる毎日。


「なんでまだ辞めないんだお前」


そんなの決まってる。

俺は理想の仕事を手に入れた。

何もせずにぼーっと壁を眺める毎日。

人によってはこの境遇は辛いんだと思う。

だが何もせずに金が入る。

士官学校に入る前の生活では泥水をすするような生活をしてたからな。

嫌味言われるだけで金が貰えるならいくらでも。

と至福の日々を過ごしていたら俺に昇進の話が来た。

いやいやいやいや


「いやいやいやいや」

「何か問題でも?」

「いやこのチクりのローデン、軍全体から嫌われている男ですので昇進するようなことをしてませんし、ましてや隊の隊長なんて出来るわけがありません」

「事実だがそれを自分の口で言えるお前は大物だな」

「とにかく私には無理です」

「いやぁ、キミがチクった上司がパクっていたお金がね、この新しく設立した隊のものになるはずだったんだよ。それを隊員に伝えたら是非ともキミを隊長に据えたいと」

「私には無理です」

「無理も何も決定事項だよ。しばらく待ってれば勝手に辞職すると思ってたのに辞めないからこういうことになるんだよ」


という形で今の職場を追い出された。

ただ働き同然で入る給料で飲む酒はまた格別だと言うのに。

まったく、俺が隊長なんて出来るわけないだろう。

だが働かねば食べれない。

蓄えなんてあるわけがない。

こうして俺は新しく設立された隊へ向かうのであった。

ところが、俺の目の前にあるこの物体はなんだろう。


「やぁ、あんたがうちの隊長になる人かい? いらっしゃい」


この地面から生えてるハゲでサングラスな生首はなんだろうか?


「おいおい。緊張して声もでないって?まったく頼りないなぁ」

「いや、俺に生首の部下はいないはずなんだが」


しゃべる生首はニカッと笑い喋りかけてくる。


「そういや自己紹介を忘れてたぜ。俺はこの新しく設立されたされた能力者部隊の兵が一人、ノーマン・アロエリだよろしく」


うむ。

見なかったことにしよう。

俺は生首を跨いで先に進むことにした。


「ん?おーい、隊長。先に行かないでくれよ」


何か聞こえる気がするがすべては幻聴だ。

俺は突然の人事で緊張しているのだ。

まったく、俺もまだまだだな。


「まったく、自己紹介をされたらキチンと自己紹介を返す。当然のことじゃないか?」


俺はとうとう目もイカれてしまったらしい。

また俺の目の前に同じ生首が生えてきた。


「残念だが喋る生首という俺だけが見える心の病気と立ち向かう勇気は俺には無いんだ。後でちゃんと精神科のところに行くから」


とまた跨いで行こうとしたら


「おいおい、ちゃんと現実と立ち向かおうぜ。目の前にあるこの生首と」

「自分のことを生首と認めるなよ」


っていうか本当に俺の心の病気か?

こいつまた俺の前に生えてきやがった。


「俺は『テレポート』の能力を持った異能力者だよ。結構レアなんだぜ」

「異能力者ねぇ…」


異能力者

先天性、後天性とあるがおよそ人間の常識を超えたことが出来る能力を持った人間の総称。

珍しい存在でこの異能力者になったものは一生安泰だという。その理由が


「お前も軍に囲われたか」

「まぁな。でも給料は高いから食いっぱぐれないし」


軍が囲い込む。

異能力者の中には炎を自在に操るもの、天候を変えるもの、まさに千差万別。

それ故に皆に敬われ、同時に恐れられる。

とある異能力者は自分が住んでいた村の住人を全員人形に変え、『おままごと』をしていたらしい。

だがそのような能力があるからこそ、軍で使える人間兵器として重宝される。

そしてその能力者だけが所属する部隊があるとは噂では聞いていたが。


「もしかして俺が新しく隊長になる部隊って異能力者の集まり?」

「知らずに配属されたのか?そうだぜ。俺以外にも面白いやつらが揃ってる」


生首が答えそしてまたニカッと笑う。


「そうか、じゃ」


俺は後ろを振り返り、ダッシュで走った。


「現実見ようぜ、隊長さん」


そしてまた目の前に生首が生えてきた。

俺は現実を知り膝から崩れ落ちた。


「絶対これ面倒ごとの類じゃん。なんだよ異能力者オンリーの部隊って。俺は仕事をせずに仕事をしたという経歴と給料さえもらえればそれで良かったのに」

「隊長さん、そりゃあ誰でもそうだって」


クソ、嵌められた。

昇進とかなんとか言いやがって。


「っていうか隊長さん、そんなに嫌なら断れば良かったんじゃ?」

「あのなぁ、お前…」

「出来るわけない…ですよね。すみません。本当にすみません」


出来るわけないだろうと続こうとしたら別の奴に遮られた。


「異能力者の能力は軍にとっての機密中の機密事項。もしもその情報を知ってしまった人間がいた場合はその軍に身を置くか、それとも」


消されるか。

くっそ。

だからあの生首の存在を必死に無視してたっていうのに。

何度も何度も俺の目の前に生えてきたからなんらかの異能力者なのは察しはついてしまったんだが。

このハゲそれを見越して何度も俺の目の前でテレポートしやがったな。

すごい白々しい声でエエ ソイツハタイヘンデンガナとか言ってるから間違いない。


「本当にすみません。新しい隊長さん。すみません」

「と俺の今現在の状況がどのようにに絶望的か説明してくれた奴はどこのどなたさんで」

「ひぃい!すみません!空気読めなくてすみません!」


そこにいたのは必死に黒髪の女性?がいた。

というか黒髪ということしかはっきり認識できない。

胴体まで伸びた長い黒髪が顔もくっきり隠しているからである。

というよりも上半身が丸々髪で隠れている。

動く毛玉のような。


「やぁ、ソランちゃん。今日も可愛いね」


と生首が言う。

可愛い?

この毛玉が?

顔見えんぞ。


「ひぃい!すみません!社交辞令を言わせてしまってすみません!」

「事実なのに。隊長さん、この娘はソラン・ユエちゃん、この部隊のもう一人の隊員だ」

「自己紹介が遅れてすみません。ソラン・ユエです。元庶民ですみません」

「あ、ああ。ローデンだ。よろしく」


毛玉ことソランという女が自己紹介してきた。

そしてお辞儀をしながら突然自分の手を毛の仲にズボッと突っ込んだ。

どうやら顔を見せてくれようとしているらしい。


「ん、なかなか、顔が見せれなくて、すみません。あれ?確か顔はこの辺だった気がするんだけどって、痛い!髪の毛が目に入ってすみません!」

「何をやってるんだお前は」


どうやら目に髪の毛が入ったソランがジタバタしている。

そしてやっと髪の毛をかきわけることに成功したらしく


「遅くなってすみません!顔を見せないのは失礼かと思い、目だけでも見せれるようにしました。すみません」


と彼女が髪をかきわけた所に充血した目玉が奥から出てきた。

なんとつぶらな瞳なんだろうって違う!


「普通に怖えよ!」

「すみません!」

「髪の毛切ればいいだろうが!」

「セクハラですよ隊長。すみません」


となぜかそこだけ凄い冷静で真顔?で言われた。


「どこが!?」

「隊長さん、俺そういうの良くないと思うぜ」

「俺が悪いのか!?これは俺が悪いのか!?」


どう見てもあの髪が邪魔で色々大変そうなのに。

そういうことすらセクハラになるのか。


「とまぁ、隊長さん、これでこの隊のメンバー全員揃ったぜ。改めてよろしくな」


ん?


「全員?」

「そう」

「ユー、ミー&ケダマ?」

「イエス」

「他に隊員は?」

「いません。すみません」


と二人が答える。

え?嘘でしょ?

俺と合わせて三人?


「ところで隊長さんかソランちゃんでもいいんだけど俺をこの土の中から出してくれねぇか?これ能力使うと必ず地面に体が転移して自力じゃ地面から出れねぇんだ」


こんな訳分かんない部隊の、しかも三人しかいない隊長を俺はやらなきゃいけないのか。

マジですか。

泣いてもいいですか。


「人生に絶望してるとこすみません。隊長さん、今朝届いていたこの隊の初任務の指令所です。すみません」

「初任務!?俺今隊に来たばっかなんだけど!?」


っていうかちょっとぐらいうなだれる時間くれよ!


「なんか偉そうなおっさんが『この隊の隊長になるやつは仕事をサボることにつけては天才だから休む暇なく仕事を与えることにした』とかなんとか言って置いてったぜ。ところでそろそろマジで誰か掘り起こしてくれなぇか?」


どこのどいつだ!

そんな本当のことを言った奴は!?


「ちなみにそのときまだ責任者の隊長さんがいなかったので私が承認の判子とサインをしておきました。すみません」

「なぜ承認したー!!」

「ひぃい!よかれと思って...すみません。パワハラですか?すみません」


うぐっ、さっきから地味に抗議しづらいことばっか言ってくるぞこいつ。

っていうか謝ってるようで謝ってなくないか?


「ま、まぁとりあえず指令所の中身を確認するか」


指令所の中身を読んでみる。

内容は実に短く分かりやすいものであった。


『南の敵の砦、潰してきて今日中に』


あ、アバウト過ぎじゃね…?


「じゃ、隊長さん。早速行こうぜ。とりあえず掘り起こしてくれないか?」

「南の砦の場所は私が知っています。すみません。残業代とボーナスをよろしくお願いします。すみません」

「え、マジで?マジで今日行くの?」

「では隊長すみません、『運びます』。ノーマンさんはテレポートでついてきてください。すみません」


と俺が状況について行くのにいっぱいいっぱいになってる所にソランが俺をお姫様抱っこしてきた。


「はぁ!?」

「きゃっ!隊長どさくさに紛れて胸を触ろうとしちゃダメですよ。すみません。セクハラで訴えますよ。すみません」

「違ぇ!なんでいきなり俺を抱きかかえてるんだ!」


っていうかすげー力だぞこいつ。

俺を軽々と持ち上げやがった。

異能力者の力か?


「では行きます」


と言った後に彼女は駆け出した。

もの凄いスピードで。


「なんじゃこりゃあ!」

「私の能力は『空中浮遊』です。すみません。私自身と私が触れたものを軽くして浮遊させます。すみません。これはその応用です。すみません」


空中浮遊、凄い能力だ。

あれ?でも


「なんだか浮いてる感じ無くない?」

「地面スレスレを走っています。すみません」

「なんで?」

「私自身が5cmしか浮けないからです。すみません」

「低っ!なんでそんな低いんだ?」


もっと空飛べたり出来れば凄いことが出来そうなのに。


「私の髪の毛が重すぎるせいだって言われました。すみません」

「だからその髪の毛切れよ!ってかどんだけ重いんだそれ!」

「セクハラですよ、隊長。すみません」

「隊長さん、女性にそういうこと言ったらダメだって。ところでさ、向こうついたら俺をいい加減掘り起こしてくれないか」


凄い勢いで生首がテレポートして追いかけてきた。

ヒュンヒュンって言いながら近づいて来るのがなんだか凄いというよりも気持ち悪い。

「それじゃ隊長さん」

「すみません隊長さん」


二人が言う。


「何かあった時に責任をとってください」

「お前ら何するきだ!!俺は絶対こんな隊辞めてやるからな!!!」


後に『やるせな隊』と呼ばれる異能力者部隊とその部隊をまとめ上げた伝説の男の話はこうやって始まったのであった。


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