実験
梅桃さくらの闇の世界に、ようこそ。
ショートホラーの連作、第二回となります。
二回目にして、回数を数えるのが嫌になってきました・・・
「ねぇねぇ。また見てるの?」
アツコは笑いながら肩を叩く。
「えっ?なにを?」
ナミは怪訝そうにアツコを振り返る。
「何って、ショウジのことだよ。」
「ショウジ?」
アツコは呆れたようにため息をつく。
「ナミったら
無意識でもショウジを目で追っちゃうなんて、
重症だね。」
「は?」
「好きって顔に書いてあるよ。」
「ええっ!」
ナミは心底驚く。
ショウジは今年同じクラスになった男子で、
特に目立つタイプではないから、
ただのクラスメイトという認識しかなかった。
と、いままでは思っていた。
でも、
他の子に『また』見ている
と言われるくらい、
見てたなんて。
私、ショウジが好きなのかな?
ナミはショウジを振り返る。
友達と話しているショウジが
ナミの視線に気がつき、
顔を向けた。
途端、ナミの顔がカッと紅く染まった。
心臓がドキドキ鳴る。
あれ?あれ?
これってまさか?
「ちょろかったね。」
アツコが嫌な表情で笑う。
「ナミ、もうあんたにメロメロだよ。」
「ほ、本当に?」
ショウジがアツコを上目遣いで覗く。
「これでナミはあんたのもんだね。」
アツコの言葉がジワジワと胸に広がる。
やっと、やっとナミと付き合える。
今年同じクラスになった時、
一目で好きになった女の子、
ナミ。
アツコにナミが好きなら協力するよ、
と言われた時は驚いたけど、
アツコに頼んでよかった。
「ありがとう、アツコ。
これでナミと付き合えるよ。」
ショウジの言葉にアツコは眉をしかめる。
「はぁ?なに言ってるの?」
「えっ?」
アツコはショウジに、
優しい顔で近づく。
「これは実験だったでしょ?
何とも思っていない男の子を
他の人から好きなんじゃないかと言われたら
本当に好きになっちゃうかなって言う、
じっ・け・ん!」
「じ、じっけん?」
ショウジの額にどっと汗が噴き出る。
「そうよ~。
大体、ショウジが好きなのは、
ナミじゃなくてハルナじゃん!」
「ハルナ?」
ショウジは窓際で本を読んでいる
ハルナに目をやる。
その時、ハルナがふと本から顔を上げ、
視線を感じたのかショウジを見た。
ショウジの頬が紅くなった。
そんなショウジを横目でみて
アツコはつぶやく。
「ちょろい。」
他のサイトで掲載していた短編を、せっせと引っ越しています。
引っ越しが済んだら新作書きます。