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アクセサリー
僕のところに、加奈がやってきた。
「デートしようよ」
「いいよ」
そのとき、僕は視線を感じた。
羊だ。じっとこちらを見つめている。
「羊は嫌なの?」
加奈が羊にたずねた。
「い、いいや…」
苦しそうに、羊が言った。
「じゃあ、デートしよう」
羊は昨日のアクセサリーを握って、下を向いて何かをこらえていた。
僕と加奈は、街を歩いていた。
「好き…」
加奈が寄り添ってきた。
「どうしたの?」
「なんとなく…」
僕は加奈の肩に手をまわした。
「こんにちは!」
僕らの雰囲気が声に壊された。
羊だった。
「どうしたの?」
加奈が言った。
「散歩してたら、偶然…」
「そう…」
加奈が僕を見た。
「羊と付き合ってあげたら?」
「いいよ」
「ホント!」
羊が嬉しそうに言った。
「うん。いいよ」
加奈が言った。
僕は羊と手をつないだ。
「じゃあねー」
加奈が、手を振りながら、僕らの前から去っていった。