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裕二
私…、羊は思った。
私は本当に裕二のことが好きなの?それとも、みんなが言う不思議な力のせい?
でも、きっかけなんてどうでもいい。裕二が好き。それは事実。はじめて好きになった男の子…。
僕は加奈とデートしていた。
「キスしたいな」
加奈が言った。
「いいよ」
僕は軽く答えた。
歩きはじめた僕らを、女子生徒が阻んだ。
羊だ。
「私、裕二のことが好き!」
「えっ?」
僕と加奈が同時につぶやいた。
「今日はダメ。裕二は今日、私とデートするんだから」
「そういうこと。ゴメンね」
僕らは行こうとした。
「私、絶対諦めないから!」
言葉の凄みに一瞬僕らは歩みを止めたが、すぐにまた歩きはじめた。
ケータイの写真を見ていた。
裕二の写真。
唯と加奈は、わけのわからない力に振りまわされてるだけ。でも、私は違う。…最初はそうだったとしても、今は違う。裕二のことがホントに好き。
羊は飽きもせず、裕二の写真を眺めていた。