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唯って…
加奈と手をつないで街を歩く。
楽しかった。
加奈も笑顔だ。
多分、まわりから見たら、僕らは付き合っているように見えるだろう。
加奈がアクセサリーなんかを眺めて、キャッキャ言ってる。僕も、似合うとか言って、盛り上がっていた。
ベンチ。
手をつないで、二人で座っている。
ふと、加奈が真顔になった。
「なんで私、こんなことしてんだろ…」
慌てて加奈はつないでいた手を離した。
すると急に、僕の幸福感も消えた。なんで、あの大っ嫌いな加奈と…。
「裕二!」
女子の声がした。
唯だ。
「仲よさそう」
「唯。僕もわけがわからないんだ。どうして大っ嫌いな加奈と…」
「そう」
唯は平気な顔だ。
「加奈はどう?」
「…楽しかった。裕二といて」
え?
「じゃあ、二人で仲良くね!」
笑顔で唯が去っていった。
「唯…」
唯がいなくなると、心の中の不思議な感情が戻ってきた。加奈への不思議な感情…。
「ねえ、裕二…」
「なに?」
「キスしよっか?」
僕に迷いはなかった。
「うん」
僕らは何度もキスをした。