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幸福感
登校すると、加奈が校門の前にいた。
「おはよう」
加奈が笑顔で言った。
「なんで僕なんかにあいさつするんだよ?」
「別に…」
そのまま加奈はどこかに行ってしまった。
放課後。
唯が用事があるというので、僕は、暇つぶしに一人でファストフードでジュースを飲んでいた。
「こんにちは」
加奈だった。
彼女は僕の向かいに座った。
「何のようだよ」
「別に…」
「座っていいって、言ってないぞ」
「そうね」
「じゃあ、座るなよ」
そのとき、僕に不思議なことが起こった。
無性に、誰かに触れていたくなったのだ。
「どうする?」
「…どうする、って?」
「店、出よう」
「う、うん」
僕は加奈に従った。
店の外で、加奈が僕に手を差し出した。
「手、つないで歩こ」
僕はのろのろと、加奈の手に触れた。
彼女に触れると、安心が大きく僕を包んだ。
「行こ」
加奈が歩く。僕は横に並んで、歩きはじめた。
僕は幸福感に包まれた。