ブス=コンタクト
「むう……ここはどこじゃ?」
お婆さんは暗がりの中で目を覚ましました。
「ワシはタルに詰められてクソジジイに海に蹴りだされたはず……」
お婆さんは記憶の糸を手繰ります。
しかし、いくら思い出そうとしてもそこから先は思い出せませんでした。まるで霞がかったように。
お婆さんは身の回りを確認します。とりあえず服はあります。特攻服ですが。
武装の金属バットと硬質化きび団子も奪われていません。
とりあえずの無事を確認するとお婆さんはよっこらせと起き上がりました。徐々に暗がりに目が慣れていきます。
見渡せば、そこは倉庫のようです。
タルが大量に置いてあり、その中にはこれでもかと爆薬が入れられていました。その他には『ブスで何が悪い?』と書かれた布をグリップに巻いた金属バットが大量にあります。
「何か変なところじゃの。どこかの宗教団体の拠点かの?」
お婆さんは武器を吟味していきます。
ですが、お婆さんの目に適うものはありません。どれもこれも手入れの行き届いていないものばかりです。これを使っているのは戦いのプロではないことを如実に物語っていました。
かすかに光が漏れている扉の向こうから何やら物音がします。
どすどすという何人かの足音が聞こえてきました。
その足音たちはバガンと行儀よく扉を蹴り開けると
「起きな、ババア! アンタは今からブケファロスの一員だよ! とりあえず財務省に乗り込んでブス対策予算を作った役人をブチのめしに行くよ!」
女たちの一人がお婆さんに向かって宣言します。
お婆さんは
「何じゃ……ブスか」
と爆弾発言。
もちろんブスたちはキレまくってますが
「待ちな、アンタたち。おい、クソババア、アンタこの世界をどう思う?」
長身痩躯のブスが彼女たちを抑えて、お婆さんに問いかけました。このブスも怒須恋と同じくボスクラスのブスなのでしょう。
「この世界か。あまねく美女たるワシのものじゃ。イケメンを洗脳してあんなことやこんなことをしての、逆ハーレムの女帝になるのがワシの夢じゃ」
「良い夢じゃないか。どうだい、その夢をアタシらと叶えてみないかい?」
「出来るのか、そこら辺のブスごときに?」
「アタシらはただのブスじゃないよ。良い男をゲットして、ブス=モテないというどこかの誰かが決めた恒等式を叩き潰すために立ち上がった正義の味方なのさ。世界は美女や美少女が中心となって回っているんじゃない! アタシらこそが世界の中心! ってのを証明するのさ」
長身痩躯のブスは熱弁を振るいます。
「そもそも! 男どもは女を外見でしか見ない! おかしいと思わないかい? そんなダメ男どもに教育的指導をするのさ!」
お婆さんはニヤリとして
「面白そうじゃの。乗ったぞ、その話」
と長身痩躯のブスの差し出した手を握りました。
こんにちは、星見です。
暑いですね。暑すぎます。日本人を虐待しないでもらいたいものですよ、夏さん。そのうち、日本が温帯ではなく熱帯になるのもそう遠くない気がしてなりません。
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……