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テスタメント  作者: 竜丸
43/82

第7章 用意されていた別れ道 (3)

     4


 三人は、ギムンに連れられ静華達が居た森に来ていた。

「居ませんね」

《場所はここで間違いないのよね。足跡残ってるし》

 暗く、それほどの距離を見ることが出来ずに、雷祇は薄く差し込む月明かりだけを頼りに足跡を目で追っていた。終演とカイヤックは地面や木に触れ、何かを確かめている。

「で、どれくらいの数がおったんじゃ?」

《え、っと、確か、十は居た筈》

 頷きながら、終演は土を握り立ち上がる。

「十、か……。“それならば、奴等ではないな”それにしては、戦った痕跡がないの。そっちはどうじゃった?」

 何時しか自然と終演の周りに皆が集まりだし、その最後になったのが、首を振りながらゆっくりと歩いてきていたカイヤックだった。

「いいや、ねぇな。あるのは、途中で消えてる足跡ぐれぇだ」

 溜息と共に、黒い葉に覆いつくされた空の切れ間から月を見上げる。細く、指先でなぞると消えてしまうような月を。

「よし。二手に分かれて探すかの。雷祇は、そのギムンとやらと一緒に探せ。カイヤック、お前さんはワシと来い」

 少し疑問が残る組み分けだったが、この時は特にその事を誰も言わずに、雷祇はギムンと、終演はカイヤックと分かれて探し始めた。

「なあ、爺さんよ。これぁ、どういう組み合わせだ?」

 分かれて探し始めていた道の上で、二人並んで歩きながら、この組み合わせの疑問を月を見上げて訊ねた。

「お前さんなら分かってると思うんじゃが」

「……昨日から、また付けて来てる奴の事か? それとも奴等か?」

 少し笑いながら、「奴、の方じゃ」と終演は答えた。そのいつもと違う、あまり見慣れない表情に、カイヤックは驚いた。

「そうじゃ、すまんがの、静華嬢はお前さん一人で探してもらえるか」

「ま、それで俺と組んだんだろ」

「それ以外、お前さんと組む理由なぞないじゃろ」

 苦笑いを浮かべ、「そうかよ」とカイヤックは他所を向く。

「それじゃあ、行くぞい」

「気ぃ付けて」

「いらん心配じゃな」

「じゃあ、雷祇や嬢ちゃんにバレねぇようにな」

 それにも先程と同じように「いらん心配じゃ」と、道の上から森の中へと姿を消した。そして、道の上には大きな巨体が一つ、月明かりの中に残された。

「そうかよ。だったら、そんな顔すんじゃねぇよ」


「あぁ、何故あなたはそんなに美しいのですか?」

「え、えっと、あ、あなたじゃ――」

「ちっがーう!」

 村から随分と離れた湖の畔に、静華とバナン、そして、先程の男達が一緒に居た。

「もっとこう、なんて言うのか、色気なんだよ、色気が足りないんだ」

 静華にそういうのは、頭と呼ばれていた男。覆面を取ったその顔は、賊とは程遠い体育教師にでもなれそうな熱血顔。その二人の様子を気に食わないといった面持ちで、少し離れてバナンが睨みつけていた。

「すいやせん」

《俺様に謝るにゃ。それよりも、静華に無茶させたら承知しにゃいぞ》

 その横には、男達の中で一番小柄な、振る舞いなどからしてこの男達の頭脳だろう参謀男が謝っていた。一方他の男達は、テントの中で眠ったり食べたり飲んだり、好き勝手にしている。

《で、詳しく聞かせろ。お前達はどういう集まりにゃんだ》

 静華が頭を下げ、頭がもう一度と言っているのを睨みながら、小柄な参謀にそう尋ねる。

「……あっし等は、そうっすねぇ……。戦争で、人生狂った愚か者、ってとこですかね。元兵士、いろんな国の、いろんな土地で、命張って戦って、命奪って殺して、必死で必死に生き抜いて、普通の生活に戻れなくなっちまった、愚か者です」

《……で、にゃんでこんにゃことしてるんだ?》

 自分の語る言葉で気持ちが沈んだ参謀の顔が、一気にぱっと明るく笑顔になった。

「それはっすね。頭は、あっし等全員に生きる希望を下さった。だからこそ、あっし等は少しでも頭の力になりたいんです」

《生きる希望?》

 少し体がむず痒いのか、頭を掻く。

「人助け、です。とは言っても、あっし等は、やっぱ普通の事は出来やせん。人攫いや人身売買屋、盗人や詐欺師、その他諸々、そんな奴等と対峙してるんす。決して、一般人には褒めたり称えたりされる事はありやせんが、子供とかを救えた時には、あっし等でも生きてていいのかもと思えて、また助けたいって思って、生きていこうと、生きる道を、希望をくれたんです」

 どういう気持ちだったのか、バナンは何も答えずに参謀の顔を見ていた。その間に、静華と頭の話は進む。

「そうだ、何が駄目だって、服を着すぎなんだ。上半身は、いつも下着でないと。脱いでもらえるか、といっても、体が貧ぞぶ!」

《貴様、にゃに考えてやがる》

 地面に体を打ちつけた頭は、肉球マークが付いた頬を摩りながら、静華を守るように佇むバナンを見上げた。

「え、いや、あ、チャグ君、バナンさん、を、抑えてもらえるかな」

 痛さのためか、それとも違う理由かは知らないが、震えながら参謀、チャグに頼み込む頭。

「はぁ〜、頭。無茶しちゃいけやせんぜ。静華さんには手伝ってもらってるんですぜ。それを、無理に何かさせようとしちゃ、いけやせん。静華さんは、特に何もしなくていいですぜ」

 チャグの言葉に、静華は「でも」と躊躇いを見せるが、チャグが「いいんです」と念を押して静華の躊躇いを奥に仕舞わせた。

「バナンの旦那、そう怒らなくても頭は静華さんには手を出しやせんから、大目に見てやっては貰えやせんか、この通りです」

 バナンの前で、頭を下げるチャグ。その姿に、頭は涙を流しながら近づくと、チャグの肩を抱き寄せた。

「チャグもこう言ってるんです。どうか許してやってはもらえませんか、チャグを」

 とても誠実な男のように、バナンの目を見ながら。

《……お前、にゃに言ってるんだ?》

「え、何って、それは――」

 しっかりとバナンを見つめていたはずの頭の瞳が、元気な魚のように眼球の中を泳ぎ始めた。それでなくともおかしな事を言っているのに、その姿でさらに確信を持ってバナンが頭の頬を掴んで自分の方を向かせた。

《お前、言ってる事は的外れだし、そのにゃみだ、指で突いてにゃがしてるだろ》

「え! え、ち、違いますよ、何で自分がそんな――」

《違うのか?》

「すいません、その通りです」

 バナンの脳の中まで覗き込むような鋭い視線に、あっさりと認めてしまう頭だった。

 その後、湖に写る月が悲鳴とともに揺れていたのが収まった頃、バナンがチャグに尋ねていた。

「ほんと、たまにこういう事言うんですよ、頭。明らかに自分が怒られているというのに、何故かしれっと他人の所為にするというのが」

《まあ、そんにゃ奴の下に就いた自分を責めるんだにゃ》

「はい、そうしやす」

《……そうか、まあ、好きにしろ。そうだ、さっきから気ににゃってたんだが、一体あの馬鹿はにゃにがやりたいんだ》

 静華とバナンは、チャグ達に付いて来たにも拘らず、その理由は聞かずに来ていた。それは、静華が取り敢えずはお願いを受けてしまったからだった。

「そうでした、まだ話していやせんでしたね。あっし等は、さっき言ったような事を世界を回りながらやってたんですが、半年ほど前、この村の領主の娘、クインに頭が惚れちまいやして、どうにかして告白しようとしてるんです」

《にゃ、にゃんてくだらにゃい理由》

「まあ、くだらないにはくだらないんですが、頭は、どうも女が苦手みたいで、クインに話し掛ける事すら出来やせんでした。普通の人間は違う理由で話し掛けられやせんが」

 どこか遠くの故郷でも思い出すかのように空を見上げ、チャグは一瞬悠久に思いを馳せた。が、すぐにバナンを見直して話の続きを始める。

「でも、頭はそのクインにどうしても思いを伝えたいと思い、この村に留まり、この村の女片っ端から練習台にしたんです。今の静華さんのように。が、まったく効果なく失敗に終わっちまって。けどもう、明日で想いを最後にしようと決めたんです、頭が。それで、一応練習しとこうと、女を捜していたところに、昨日からバナンの旦那達が宿に泊まってると知って、今に至るわけです」

 血だらけの顔に布を巻いている頭に、「大丈夫ですか?」と声を掛ける静華。その姿をちらりと見たバナン。

《それで、そのクインとか言うおんにゃはどういうおんにゃにゃんだ、静華と比べて》

 少しだけ言い難そうにチャグが間を空けたその隙間に、テントの中に入っていた男達が顔を出して割り込んだ。

「千倍は静華さんの方が可愛いです」

「いや、一万」

「では僕は、億で」

 最後にそう言った、テンペストのハリケーンよりもさらにインテリそうな銀行勤めのような男に、テントの二人は意味無く「おぉ」と驚いていた。ただ、驚いていたのはバナンも同じだった。

《豪い言われようだにゃ。けど、そこまで言われると、一体どんにゃおんにゃにゃのか見てみたい気もする》

「絵、ありますよ」

 そう言って、インテリ風な男は胸元からそのクインが描かれている絵を、バナンが見えるように広げた。

《……え、えっと。ここに描かれてるのはそもそもまず、人間か?》

 そこに描かれていたのは、正真正銘のゴリラだった。

「えぇ、人間ですよ。大分誇張はしてありますが。とは言っても、毛があるとない位の違いですよ」

 その絵を、どれどれとテントの二人も覗き込む。

「お、おぉ、お前が描いたのか?」

「えぇ、まあ」

「流石に、ここまでじゃないぞ。これじゃあ、本当のゴリラだ」

 チャグは呆れて物も言えない状態だったが、バナンはまだ引っかかる。

《本当に人間にゃのか?》

「人間ですよ」

《じゃあ、男じゃにゃい――》

「女ですよ」

《いやでも男――》

「女です」

《……おと――》

「女です」

 話を最後までさせないインテリ風な男に、意地で張り合う。

《おと――》

「女です」

《お――》

「んなです」

《ぉ――》

「ぉんなです」

《――》

「女です」

 イライラが顔に表れ、インテリ風な男を睨みつけるが、バナンを無視するようにチャグに話し掛ける。

「なあ、チャグ。バナンさんに、クインを見てもらったら方が早いと思うんだが」

 この提案はとても良い物に思えたが、チャグの顔はこの夜空とは違い随分と曇る。

「いや、それは不味いんじゃ――」

《にゃんでだ! 名案だ、本当におんにゃどうか確かめてやる》

 それでも渋るチャグは、クインのある特徴を話し出した。

「あの、それが。バナンの旦那には連れさんが居たじゃないですか、あの大きな方」

 名前すら口から出すのが嫌なバナンは、当然《あの糞人間の事か?》と尋ねる。

「糞人間? いや、まあ、一番大きな方です。実はですね、クインはその方と、多分同じ背の高さ、下手するとクインの方が高いかもしれやせんで、見ればますます人間と疑うような気がして」

 テントの中の一人の男が「女と疑うじゃないか?」と呟くが、もう一人が「同じようなもんだろ」と言うと、あっさりと納得した。その二人を無視しつつ、インテリ風な男が、またもや衝撃的事実を話し始めた。

「それだけじゃないだろ。クインは、この村の筋肉祭り十連覇のチャンピオンだろ」

「いやまあ、そうだが、今は関係ないと」

 あまりの衝撃に、バナンは思わず呟く。

《男――》

「女です」


     5


 湖とは反対方向にある高台の上に、覆面をした一人の男が居た。

「終演とはいえ、この程度か」

 その言葉を吐き捨て、空に向かって手を伸ばす。そして、夜風でも掴むように指を動かすと、その覆面男の一帯だけ台風でも発生したかのような砂埃と、木々のざわめきが一斉に起こった。

「散れ」

 それはそのざわめきの原因、覆面男の呼び寄せた風を散らす呪文かのように、砂埃やざわめきをピタリと止めてみせる。そして、男の周りに留まっていた風は、高台から降りて森の中を駆け抜ける狼となって、対象の‘もの’の狩りを始めた。

「どれだけ速かろうが、逃げ切れんよ」

 見下ろす森の中を、風が縦横無尽に駆け抜ける。その様子は、木々の揺れ方ではっきりと見て取れ、獲物をどんどんと追い詰める。

「わが風よ、喰らい尽くせ」

 風の動く範囲が見る見る狭まり、覆面の上からでも男の今の表情が窺える。嬉々たる声と、釣り上がる頬で。そして、風の動きが止まると共に起こるのは、この夜の静けさの中では埋もれてしまう小さな爆発だった。

「予想通り、爆発が起こったか」

 覆面男が高台から飛び降り呟く言葉は「確かめるか」。勿論それは終演の事だろうが、覆面男が予想もしなかった事が起こった。そう、それは、

「魔道丸か」

 誰も居なかったはずの自分の後ろから、聞こえるはずのない老人の声。目尻が切れてしまいそうなほど見開いた目で、その声の主を確かめようと空中で体を捩る。ただ、その先に見えたのは、自分の顔よりも大きな、死の世界へと導くために用意された魔獣の口。

「ワシを誰じゃと思うとる、終演じゃぞ」

 ケルベロスの咆哮と共に、夜空にはひっそりと真っ赤な死花が咲く。本当の花火のように、一瞬にして咲き、死ぬ時のように儚く。

     ドサッ

 その音は、終演が地面に降りた音と、首の無くなった肉の塊が落ちた音。

「こんな雑魚ばかり遣しよって。香煩こうはんめ、何を考えておる」

 肉食の獣達が今にも集まってきそうな血の臭いが辺りに立ち込める中、終演は嘗ては覆面をしていた顔の無くなったと男にケルベロスを向ける。

『お久しぶりで、終演様』

 まるでその行為に反応でもしたかのような、終演が引き金を引くその瞬間に首無し覆面男から声が響く。

「……」

 その声に、引き金を引く手が止まったが、それも一瞬の事。次の瞬間には引き金を引いて、肉の塊を粉砕していた。

「面倒臭い奴じゃ」

 その言葉は、粉砕したはずの肉片から声が聞こえるためだった。先程と同じ声が。

『どの道、終演様なら引き金を引くでしょう。ですから、猶予は一発分。次お撃ちになられると、私からの情報は聞けませんよ。三十秒間を空けてから話し出すので、その間にお考えを』

 冷めた目で肉片を見つめ、撃鉄を引き起こす。ただ、今度は引き金を引く事が出来ず、三十秒という終演にとっては短く、長い時間が過ぎる。

『どうも、では改めてご挨拶を』

 肉の塊の中から、光と共にある一人の男が姿を現した。それはまるで蜃気楼のように、実態があるようで無い風に見える。

「立体映像、か」

『お久しぶりです、終演様』

 映像の男、香煩は片膝を突き、敬意を示すポーズをとる。

『まず始めに、これは録画映像なので、会話は出来ません。悪しからず。さて、世間話でもしたいんですが、例えば、こんな技術に会うのは久しぶりでしょうとか、本当に他愛も無い世間話を。ですが、終演様は無駄を嫌うお方なので、出来るだけ単刀直入に話しましょう。多分不思議にお思いでしょう、何故こんな雑魚ばかりが命を狙ってくるのかと。それはですね、殺してしまうには惜しかったからです。終演様なら確実に、癒しのテスタメントを見つけてくれるだろうと思っていましたので。だったら、それまでは生かしておこうと。それから暫くして、やはり終演様は見つけ出してくれ、しかも契約まで済ませて下さいました。ですから、簡単な話、もう終演様は必要ないのです。ですから、これからは全力で殺す事にします。その土産と言っては何ですが、残りの、あ、氷菜こおりなから聞いたでしょう、どれだけのテスタメントが生き残ったのか。風牙ふうが水希みずきは生き残りです。氷菜は新しい中では、いや今迄で一番の成功と言っていい子。この三人は分かりますね? ですから残りの二人、土門どもん炎火えんかを紹介がてら、あなたの元へと向かわせます』

 “そうか、もう使う時が来るのか”

 ケルベロスを本当に生きているかのように撫でると、終演は香煩に銃口を向ける。しかし、終演はすぐに引き金を引く事が出来なかった。それは笑顔だったから。この世で天国でも見つけたような満面な笑みだったから。

『と、言いたいとこなんですが、実は二人、今他の場所に向かってます。残念です。その場所、教えときましょうか。簡単ですよ、ある人物を殺しに行ったんです。それは終演様、あなたの孫です』

 満面の笑みの意味、その理由を終演は気づく。

『不思議に思いませんでしたか、氷菜と水希は黒の塔に行ったんですよ。その途中で、彼女等が気づかないとでも、魔法使いの存在に。気づかない訳がないですよね。あぁ、こんな無駄話している暇は無いですね、もう二人は向かってますから。けれどどうします、癒しのテスタメントは? 一緒に連れて行きますか? あ、でも、確か名前は、雷祇君でしたよね。彼をもし連れて行かないのなら、彼を取り返すでもいいですが。それとも、二人を抱えて孫を助けに向かいますか? 出来ませんよね、態々殺されに向かわせるような事は。けれど、終演様が居なくて、守りきれますかね、二人を? いっその事、孫を見殺しにしますか? その方が、世界の、自分の為ですよね。じっくりと考えてくださいと言いたいところですが、時間は余りありませんよ。二つの意味でね』

「何?!」


 “にゃんだ、森が揺れてる”

「バナン君、これは、爆発音?」

 男達に出された晩ご飯を食べていた静華とバナンだけには、何かが爆発する音が聞こえていた。

「どうしやした?」

 そんな音一切聞こえていないチャグは、晩ご飯を食べる手が止まった事にいち早く気づいて声を掛けた。

《いや、にゃんでもにゃい》

 それに答えようとした静華の言葉を消すように、バナンは大き目な声でそう言った。少し腑に落ちないような顔をしたものの、チャグは「分かりやした」と笑顔を見せた。

「バナン君、さっきのは――」

「だ、誰だ!」

 静華の言葉はまた邪魔された。けれど今度は、森で見張りをしていた男から突然上がった大きな声が原因だった。

「と、止まれ!」

 その声がどんどんと静華達が居る方に近づいてくる。

「バナンの旦那は静華さんをお守りください」

 その言葉を残すと、チャグは頭の下に走りより、他の男達も緊急時に決められている陣形を取る。

「はぁ、はぁ、と、止ま――」

「いやよ、嬢ちゃん捜してんだが、知らねぇか?」

 それは、その緊張感高まる雰囲気には相応しくない惚けた感じの声だった。

「居なくなっちまって、お、嬢ちゃんに糞猫。何で飯食ってんだ?」

 黒い森の隙間から現れたのは、暗がりでは熊と間違えてしまいそうな大男。まあ、当然そんな男早々居るはずもなく、案の定カイヤックだった。

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