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テスタメント  作者: 竜丸
10/82

第2章 涙を流す森 (5)

     10



「この、魔獣は―」

 僕の横から現れた魔獣は、何度か森の中で見た事がある魔獣だった。ただ、その時の雰囲気とはまるで違い、殺気が体から溢れ出している。





 フォレスト・ディスペア。森に住む魔獣の中で、最強クラスに位置する魔獣の1種類。形状は狼に似ているが、大きさや強さなどは比べ物にならない。名前の由来は、探検隊が未開の森に踏み入った奥地で、突如として現れたその姿を見て思わずその中の1人が口走った言葉、『深き森には絶望を与える者が潜む』がそのまま名前になったのだという。ただ、この時にはこの魔獣を詳しく調べていなかったからこう呼ばれただけであって、今では違う名前になっていても不思議ではない。滅多に人前に姿を見せず、性格は非常に大人しく、こちらから手を出さなければ絶対に人を襲う事はない。性格の特徴は他にもあり、家族との絆が強く、大人になって巣立ちをしても、1年に何度かは親の元に行くという。そして特徴はもう1つ……





 “何で、フォレスト・ディスペアが、こんなに殺気立ってる”

 僕は、依頼の中で何度かこの魔獣に出会うことが会ったので、大人しいのは知っていた。そしてその時に、終演にこの魔獣の特徴を教えてもらったから分かる。大きいといっても、この2匹はまだ子供だ。



 冷たい笑顔のウェルスから、漏れる楽しげな言葉達。

「傑作だったぜ。森の主といわれるほどの力を持った魔獣が、日に焼かれて死んでいくのはな」

「奴らの、親を殺したのか」

「あぁ」

「なら、あの袋の中は―」

「残念。アンタの考えはハズレだ」



「静華さんは何かに隠れて!!」

 大きな方の魔獣が、僕に向かい走ってくるのが分かった。咄嗟とっさに声を張り上げながら、静華さんから離れ魔獣の右側に回り込むように走りながら抜いた雷命らいめい。それと同時に、大きな右の爪が僕に狙いを定めながら振り下ろされる。ただ、その攻撃は力任せで、右足で踏ん張り左に跳んだ僕の動きについて来れずバランスを崩す。

「待って! 戦いたくは―」

 バランスを崩しながらも僕から目を逸らさず、無理に左に体を捻り倒れながら僕を噛み殺そうとしてきた。どう考えても僕に届くわけもなく、大きな方の横に立っていた木に勢いよく体をぶつけ、木が折れる音と共に砂埃が上がった。

 “あれ? 小さい方は?”

 先程までいた魔獣の小さい方がいない事に気づいて周りを見回すと、先程僕たちの足元に飛んできた袋を爪で裂いて中身を出していた。



「もう1匹、生まれたばかりの奴がいてな。それの頭さ、あの袋の中身はな」

「てめぇ!」

 イクリプスを低く構え、俺は奴を斬り殺す気でいるってぇのに、奴はフランベルジェを鞘に収めたまま、まだ笑顔で話をしてきやがる。

「そう焦るなよ。聞きたくないか? どうやって殺したのか」

「そんな事には興味ねぇんだよ! さっさと剣を抜きな!」

 イライラで飛び掛りてぇが、今度は左のジャマダハルまで腰の鞘に収めやがる。

「アンタの性格上、無防備な相手に斬りかかれないだろ?」

「……」

 噛み締める歯が、ギシギシと頭の中に鳴り響く。

「随分と怖い顔だな」



 “あれって、まさか―”

     グゥウォーーン!!!!!

 大きな方が唸り声を上げながら立ち上がると、舞い上がった砂埃が一瞬のうちに吹き飛び、僕に向ける強烈な怨みの目が2つ。その目を僕が見た瞬間、こちらに向かい地面を爪で削りながらまた走ってきた。ただ、今度の攻撃は少し違っていた。僕と大きな方との距離は、とても爪が届く距離ではないのに、もう爪を振り上げ始める事に僕が驚いていると、僕に向かって爪を空に振り下ろした。

 “単なる威嚇か? それと、!”

 僕が雷命を大きな方に構えながら見ていると、小さな何かが飛んでくるのが分かったので、雷命で体に当たる前に斬り落とす。

 “小石……”

 それに気づいた時には、僕に触れる距離まで小石の散弾が飛んできていた。その散弾全てを斬り落とすことが出来ないと判断して、右に1つ跳んだ時、自分でも気づいた後ろに隙が出来ている事を。そして、左回転で後ろを振り返り様に雷命の刃を逆刃にし、後ろをその時確認した。そこには小さい方が爪を振り上げている姿があった。その爪に回転の勢いそのまま、雷命で斬りつけると、小さい方の爪を弾き飛ばし、その爪に引っ張られるように小さい方はよろめいて後ろに扱けた。僕はその姿を確認しながらも、大きい方が走りこんできているのでそちらにすぐに体を戻す。

 “また!”

 その僕の目の前に、また先程と同じ小石の散弾が。しかも、今度のはどう考えても避けきれないと思ったので、 少しの隙間を空けながら両腕で目を隠し散弾に撃たれた。石自体はそれ程大きくないが、威力は石が小さい分体にめり込む。右膝に3つ同時に当たった時は、思わず膝を付きそうになったが、何とか堪えて散弾が止むまで待った。顔に5発、体には無数当たって止んだ散弾。ただ、これで攻撃が終わる事無く、同じ様に小石の散弾が僕に向かって飛んできた。それを今度は左に跳んでかわしたが、また僕の後ろに回りこんでいた小さな方。その攻撃をかわすために、腰から雷命の鞘を抜いて回転しながら前足を叩き落とした。その回転が収まる前に、雷命を地面に突き刺し雷命を杖代わりにして、右側に跳んだ僕の横スレスレを大きな爪が通過して地面を削った。僕を攻撃するときには力が入るのか、またバランスを崩して大きな方は倒れた。その姿を見ながら少し距離を置いた。

     はぁはぁはぁ

 “何とかして、防げたけど、次は、防ぎきれるんだろうか……。もしこのままなら、僕の体力は……”

 いつまで体力が続くのかが頭を過ぎりそうになったが、大きい方が立ち上がり小さな方と並んで膝に手を置いている僕を睨んできた。



 感心した顔を作った奴が話しかけてくる。

「なかなかやるもんだ、あのガキ。 けどいつまでも持たないと思うんだが、助けに行かなくていいのか、カイヤック」

 “糞ッたれ!” 「さっさと剣を抜きやがれ!」

 後ろを少し見ると、坊は既に体力をそこそこ奪われちまってるようだった。

「怖いねぇ〜。関係ないんじゃなかったか? まあでも―」

「うるせぇぞぉ!! 俺とやるんだろうが!! 綺麗に片付けてやるから剣を抜け!!」

 俺の言葉を無視して、ウェルスの野郎は背を向けて歩き出す。

「そうだな、会話も飽きた。ただ、ここでやるつもりはない。俺に付いてきてもらう。まぁ、後ろから攻撃したきゃしていいぜ」

「さっさとその場所に行きな! その場所が、てめぇの見る最後の場所だ!」

 俺の前を笑いを堪えながら奴は、‘竹薮’の中に入っていく。

 “ソウラ・イクリプス。長さ・切れ味・耐久力・重さ、そのどれもが最上級の剣。切れ味はいいが、重たさが半端じゃない。俺も持たしてもらったが、振るどころか持つ事すら出来なかった。柄には十字を切るように深い溝が掘り込まれ、大きな太陽の鍔が印象的で芸術性もある。いくら戦っても刃こぼれすらしないため、噂じゃ人外の者が作ったとか……。そのバカみたいに凄い剣を使うアンタを、今から殺せると思うとゾクゾクするぜ”

 ウェルスはそう考えながら後ろをチラリと見ると、鬼のような形相をしたカイヤックが後ろについて来ていた。ウェルスに続いてカイヤックも‘竹薮’に踏み入った。



     11



 “何だこの竹は? ただの竹じゃねぇのか”

 入る前から少し感じていた違和感が、中に入った事でただの竹じゃねぇとすぐに分かった。周りに広がる竹を眺める俺に、剣を鞘から抜きながら話しかけてきた。

「さぁ始めるか、この場所―」 “そんなに殺したいか!”

 奴が剣を抜いた時点で、一気に奴との距離を縮め竹を切り払うように横薙ぎにイクリプスで斬りつけた。が、

 “何だ!?”

 奴しか見ていなかった俺には予想外の事が起こった。突然体の横辺りで動かなくなりやがったイクリプスを、確認するように奴から目を逸らす。

「目を逸らすなよ」

 奴の声が左に動きながら俺に近づいてくる。奴に隙を見せるのは一番まずい事だと考えながらも、奴を確認している暇なんてあるはずがねぇし、竹から伸びている細い何かに絡み付いて動かなくなったとイクリプスを見て分かった俺は、地面を蹴って後ろに跳んだ。

「流石にいい反応だな」

 体勢を低く構えている俺を見ながら、左肩の肉を軽く切り裂いた剣をまた鞘に収める。

 “チィ! ダメージは大した事ねぇが、俺が竹を斬れねぇはずがねぇ”

「随分不思議そうだな」

 確実に何かを知っている奴の満足げな顔。強いて言うなら、奴は話しすぎるのが欠点だ。

「さあ、植物のお勉強の時間だ。この‘木’はな、最近発見された新種で、名前をナチュラル・プリズンって言うんだとさ。肉食植物で、主な主食が魔獣。この木に触れれば―」

 そう言いながら地面を1蹴りし、埋まっていた骨を拾い上げ横の木を殴りつけた途端に、竹のようだった木がしなり、皮がめくれて骨に絡みついた。

「この通り、触手を絡み付け縛り上げてから生き物の中に流れる血をすするんだとさ。まあ、言わば自然の中の牢獄さ。さっきも言ったように、魔獣を食うこいつらを斬るなんて不可能だ。といっても、絡みついた剣を引き抜けるのは―」

 俺から目を地面に向け呆れている奴を見て、イクリプスを強く握り締めると今度は斬るんじゃなく、真っ直ぐ奴の体に突き立てるようにイクリプスを突き出した。少し距離があったが、まだ地面を見ながらブツブツと言っている奴が避けきれるとは到底思えねぇ。

「残念」

 下を向きながらでも分かるくらいの笑顔を作り、後ろに体を移動させながら横の木に絡み取られている骨を掴み、奴はイクリプスの前に引っ張りやがった。勢いを止めることが出来ずに、俺はその木を突いちまい、それと同時に今度は剣を飲み込まん勢いで触手が伸びてくる。俺は走っていた勢いを止めようと踏ん張りながらも、イクリプスを触手から引き離そうとするが、俺がそうしている間に奴は俺をジャマダハルで捉える間合いまで入り込んできやがった。

「糞! ったれ!!」

 確実に仕留めれる間合いに入り、攻撃をし始めている時に突然カイヤックの体が自分の攻撃範囲から遠ざかった事で、剣を引き抜いたのだと分かり、すぐさま踏む込もうとしていた足を後ろに戻し、地面に着いたところで後ろに跳んだ。カイヤックは無理やり触手を引きちぎった事で、後ろにバランスを崩しながらも剣を横に振りウェルスに攻撃を仕掛ける。

 “当たれ!”

 俺が後ろに扱けながらだったのと、奴がそれに気づいて体を屈めだしていた事で、俺が斬れたのは髪の毛数本と微かに額だけだった。

 “マジで危なかった。奴を殺るには俺の攻撃範囲ギリギリで殺るべきか。それとももう1つの方法でいくか……。答えは後者か。ここでこれ以上暴れられるのもなんだからな”

 俺は後ろに手を付いて、扱けずに止まった。すぐに俺が立ち上がると同時に、奴が突然木の群れを抜け出そうと横に走り出しやがったので、俺もそれを追走する。その時気になって、坊と嬢ちゃんのいる方をチラリと見た。

 “ヤベぇな、坊の姿が見えねぇ”

 その時俺が見たのは、木の後ろに隠れきれてない嬢ちゃんの姿と、爪に血の付いたチビッこい魔獣に、崖に顔を押し付けるような格好のデケェ魔獣の後姿だった。そこで働いたのは、あの坊が追い詰められているという思考だった。



 僕に向かい走ってくるのは、小さい方だった。ただ、小さい方は大きい方が放つ小石の散弾に当たらないような道を選んでいる。僕もそれに気づいて、すぐに小さい方を挟む形で大きい方と向かい合いたかったが、そんな僕に気づいたのか、大きい方が両方の爪で僕に小石の散弾を撃ってきた。小さい方スレスレと僕の真正面に。どう考えても、小さい方から離れないと避ける事が出来ない攻撃に、僕は相手の思惑通りに小さい方とは逆の方に跳んだ。ただ、両方の爪での攻撃だったので隙が出来ると思った僕だったが、それは甘い考えだった。小さい方がすでに僕の横にまで来ていたからだ。

 “くっ!”

 僕の後ろに回り込み爪で攻撃をしてくる。僕もそれに合わせるように回転をして、攻撃してきた爪を鞘で叩き、小さい方から離れた。そう、僕が離れたつもりだったのに、離れたのは小さい方だった。それに気づいて後ろを振り返ると、目の前にまた小石の散弾が飛んできており、今度は体全身に直撃を受けてしまった。腕にも、雷命や鞘を持っている手にも、痛めている足や、体、閉じているまぶたや、口。その散弾が止む時には、体中が痛くてどれほど受けたのか分からなかったが、すぐに無理やり瞼をこじ開け、前を確認すると大きい方が僕に向かい走ってきている。指を動かそうとしても痛む体に、無理やり命令をする。

 “もうどこが痛いかなんて分からないんだから、動いて―”

 その時感じた背中の影に反応して回転を始めたが、遅かったらしく小さい方の爪の攻撃を背中にまともに受けた。激痛で悲鳴を上げそうになりながらも、回転を止めることなく後ろを振り返ると、もうすでに小さい方は僕から離れていた。それは、すぐに大きい方が迫っているのだと分かり、体を回転させ始めた。が、僕が少し回転した正面に、大きな、僕の顔よりも大きな何かがあった。一瞬何か分からなかったが、僕に向かってくると分かったので、それが当たるであろう場所に咄嗟に雷命の鞘を持っていった。その鞘にまず直撃して、鞘が僕の体に当たった時には、体が浮き上がり飛ばされていた。その飛ばされるスピードが早く、体を受身の態勢に整える事が出来ないまま、僕は崖に打ち付けられた。先程小さい方の攻撃をまともに受けたのに、今度は強烈に背中を岩にぶつけて体中に電気が走った。そのあまりの痛さで声すら出ないまま、崖から体が剥がれて地面に両膝を付いた。その僕に、間髪入れず大きい方が噛みかかってきた。それに気づいて、無意識のうちに雷命を鞘に収め、僕は腕を突き出していた。突き出していた鞘よりも大きな口に、僕はこの時命の終わりを感じ、力なく後ろに倒れた。その時、壁に持たれようと後ろに倒していた体が、思ったよりも後ろに倒れたので振り返ると、そこはさっき大きな魔獣が突っ込んでいて窪みが出来ていた。

 “この場所に、嵌れば……”

 倒れそうになった体を片手で支え、後ろに体を持って行き、僕の体を窪みに嵌めた事で大きな方が僕を飲み込めないと分かり、鞘を持つ手に力が入った。それと同時に、大きな口が僕の目に前に広がったが、鞘で突っ掛かり何とか噛み殺されずに済んだ。



 睨みあう2人。大きな木に付きそうなくらい近い位置に場所を取っているウェルスと、少し離れた位置のカイヤック。

「さぁ、向こうもクライマックスのようだ。俺もいつまでも遊んでられないからな、ここで決着つけよう、カイヤック」

「てめぇに言われるまでもねぇ」

 その言葉の終わり際、ウェルスはフランベルジェを抜きながらカイヤックの間合いに2歩踏み込んだ。その距離はカイヤックには十分の攻撃範囲。攻撃にイクリプスの重量を加えるため、肩に乗せていた状態から一気に振り下ろす。その攻撃に反応して、3歩目はカイヤックに向かって踏み込むのではなく後ろに下がる事を選んだウェルス。そして、イクリプスはウェルスの服を掠めて地面を叩き斬る。その時に出来たイクリプスの巻き込もうとする風に、ウェルスは踏ん張り耐えて、また一歩踏み込もうとしたが先にカイヤックが踏み込んでおり、ウェルスに向かってイクリプスを強引に引き上げる。その速さがどう考えても自分よりも早いと感じたウェルスは、後ろに下がるがそのまま引き上げたイクリプスをまた踏み込んでカイヤックは振り下ろす。巻き上がる剣の暴風に吸い込まれそうになりながらも、また後ろに下がるウェルスの体は大きな木の後ろに隠れるくらいまで下がっている事に気づき、カイヤックは1度剣を体の方に引いて、刃を地面と水平にしながら突きの構えを作った。その姿を見ながら、ウェルスは回転しながら大きな木の影に隠れ始める。その横を掠めるようにイクリプスの大きな刃が目の高さで通過し始めた。それを横目で確認しつつ回転しながら、木の反対側に出ようと回り込むようにして左手にジャマダハルを構えた。

 “さぁ、串刺しにしてやるよ! まだイクリプスは俺の横だ!”

 そう考えながら。ただ、ウェルスの動きを隠すのに大きな木に隠れたのは利益だったが、カイヤックの動きが見えなくなる不利益が生じる事を忘れていた。いや、カイヤックは何も考えていないのだろうと思い込んでいた。



 見えなくなったウェルスを確認しながら、カイヤックはイクリプスの柄を指で摘むようにして太陽の鍔に右手を掛けた。左の指だけでイクリプスを支えながら、その太陽の鍔を今までにないくらいの力で後ろに引くと、太陽の鍔がイクリプスの柄に出来ている溝に沿って後ろに抜け始めた。その抜け始めた部分は、イクリプスの中に秘められていた太陽の剣。その剣の柄が出てきたことを確認すると、すぐに鍔から持ち替えて一気に引き抜いた。そして、左手では今までのように剣を突き出しながら、右手でウェルスが顔を出すであろう場所に狙いを定めて太陽の剣を突き始める。

 “これで終わりだ!”



 そう、ウェルスが回転し終え、木の反対側に出た時に見たのは、カイヤックの無防備な姿ではなく、太陽の剣の剣先。そんな事が理解できるはずはくがないウェルスの頭の中は、混乱に陥った。

 “確かに横にあるはずだ! なのに―”



 何とか踏ん張り、噛み殺されないように両腕で雷命を支えながら考えていた事。

 “くっ! この状態は、長く持たないか。雷命が折れればそれで終わり。僕の人生、結構短かったなぁ”

 そう思いながら、腕から力が抜け始めた雷祇。





 それぞれの思惑が交差する中、森に響き渡ったのは雷鳴にも似た数発の銃声だった。

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