はじめてのソロ
早朝でございます。
朝露残る森の中、はじめてのソロ採集だ。
ぐりちゃんも一緒なので正確なソロ活動ではないけどね。
今日はポーションに使用する白根草、霧露草を採集する予定だ。
どちらも初心者向けだが、扱いは丁寧にしないと価値が落ちる。
採るのは簡単。でも雑に扱うとすぐ価値が落ちる。気をつけないと。
風魔法で空気クッションを作って包んでみる。
うん、いいかも。
あと、今回の依頼にはないが、セラリーフがあったので、ついでに採集する。
これはいろんな調合に使えるので汎用性抜群と習ったからね。
「ぐりちゃん、採集完了。一息つかない? お茶にしよーよ」
「ピッ」
「どこらへんでお茶しようか」と言うと、ぐりちゃんが、「チチッ」と声をあげた。
何か見つけたみたいで、ぱっと先の木の枝に移り、こちらを見てくる。
「えー、何、お宝見つけた?」と言いつつ、進み、森をでるとぐりちゃんは草原に入っていく。
草原というより、草むら? けっこう背の高い草が生えていて、視界が悪い。
「ぐりちゃーん」と呼ぶと、「ピー」と呼ばれる。
ぐりちゃんの声の方に向かうと、グニッとした感触。
え、と見ると、なんと人が倒れている。
「やば、手ふんじゃった」と焦るが、反応がない。
うつ伏せ、草の中。寝てるんだか倒れてるんだかよくわからないので、「あの〜っ」と声をかけてみても、反応無し。あれ、大丈夫かな?
「あの〜?」と再び声をかけると、まぶたがぴくっと動いて、
一言「……うっせぇ……」と言われたので「あ、そりゃ、失礼しました」と踵を返して離れようとした。
「ピピ?」
「あー。大丈夫みたいよ。どこでお茶しよっか?」とぐりちゃんと話していると
「まてまてまて」と後ろから声がした。
振り返ると、倒れていた人が半身起こし、「…水くれ…」と訴える。
「あ、意外に元気」
行き倒れていたその人はリサという、ハーフエルフのヒーラーさんだった。
ご所望の水を渡しがてら、なんでこんなところに倒れていたのか聞いてみると、一気に水を飲み、
「…助かった…」
うっせぇ、と言った割には素直な人だな。
「薬草探しに来た…」
「腹減った…」
「帰り道わかんねぇから、めんどくさくなって寝た…」
「えー、そのまま寝ちゃったんだ」
もう、この人、ダメダメだ。
髪の毛ぐちゃぐちゃ。顔、服、どろどろ。ダミ声。
一体どれくらい寝てたのよ〜。
……ヒーラーってこんなんだっけ?
水を飲んだ後、お腹の音の激しさに笑いながらお昼に誘うと、勢いよく食いついてきた。
とりあえず、手を拭いてもらい、まずはお腹の足しにと持っていたキャラメルを渡し、もう少し開けたところに移動しようと、ぐりちゃんに先導を頼む。
途中で、リサさんは「あ〜」と声をあげ、近くの木を指さし、「あれ、食えるぞ」と教えてくれた。
「え?」と呼び指す方をみると、木に蔓がまきつき、その蔓の先に紫色の楕円形の実がなっている。
ラピアケという名で、熟すと皮が破け、そこを剥いて中の果肉を食べるそうだ。
早速蔓をひっぱり、熟した実をとって、3人でわけあって食べる。おいしい。
中身はとろっとした白い果肉で甘酸っぱくて後をひく。
せっかくだから多めに採って、あまったらお土産にすることにした。
「これ、自分で採って食べればよかったのに」と言うと、
「…めんどくせぇ…」と返ってきた。ブレないなぁ。
「精霊か。おもしろいの連れてるな」
リサさんが、ぐりちゃんをじっと見る。
ぐりちゃん、自分で見つけておいて、その冷たい目、やめてください。
ほら、教えてもらったラピアケの実、おいしかったでしょ。
ラピアケの実で一息ついたので、また移動。
大きな木の下に落ち着き、お弁当を広げる。
今日は、半分ピクニック気分だったからちょっと豪華なお弁当だ。黒胡椒風味の生地のベーコンとりんごのキッシュ。オイルサーディンと玉ねぎのピクルスのサンドウィッチ。デザートはオレンジ。
さっきのラピアケも食べちゃおう。なんならおやつのマドレーヌも出すよ。
ぐりちゃんにはひまわりと麻の実。3人で楽しくランチだ。
「あ、スープ、飲みます?」
「え?」
「インスタントだけど、ポタージュ。あったかいものがほしいなら、作るけど」
「ほしい」と即答されたので、カップにポタージュの素をいれ、お湯をつくり、注ぐ。
くるくるスプーンでかき回し、はい、と渡すと
かなり長い間、ふうふうしていた。猫舌か。かわいいな。
ようやっと飲める温度になったようで、こくんとひと口含み、
「…うま」と小声で呟いていた。
結局、食後にフルーツのほか、マドレーヌとお茶までしっかり食し、満足してもらえたようだ。
お腹が落ち着いて、こちらに気を使ってくれたのか、植物についていろいろと教えてもらった。
あると便利だから、と思って採集したセラリーフは別物だったと判明。
えー、どこで見分けるの? と聞いたら、葉脈の違いだそうだ。気が付かなかった!
使えることは使えるが、葉脈が細かいものの方が質がよいらしい。
さすが、行き倒れていてもヒーラー。
口が悪いし、怪しいけど意外と人が良く、いろいろと植物のことを親切に教えてくれる。
空気クッションのことも、「悪くねぇ。その魔法、使えるな」と褒めてくれた。
一緒にお昼を食べたせいか、お互いに気兼ねなくおしゃべりして、結局、お昼を食べた後もリサさんと一緒に行動することになり、ぐりちゃんと3人で楽しくピクニック気分のソロ活動が終わったのだった。
家に帰って荷物を広げたとき、ふと気づいた。
……あ。
リサさん、採集に来て行き倒れてたのに、自分のほしい植物とってないじゃん。
……すっかり忘れてた。
大丈夫かな、あの人。




