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底辺ダンジョン配信者を追いかけたら、ぼく女神さまになっちゃいました。  作者: まぴ56
第一章:女神ちゃんになっちゃいました

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第20話:女神ちゃん、ギャルに遊ばれる

 そして、何かを言われる前に、僕はそそくさとそこから逃げていった。

 教室へ戻るころには、みんな各々の話題で持ちきりになっていて、僕のところへは来なかった。落ち着く半面、ちょっぴり寂しさもある。僕もなかなか面倒くさい人間だと自覚させられる。


 そんな中、遠くの席から声をかけられる。聞き馴染みのある声――鏑木さんだ。


「お~い、ずっきー!」


 そっちを見ると、鏑木さんが席に座って手を振ってる。周りには、いつも鏑木さんとつるんでいる二人。

 一人は白い肌に金髪ウルフカットの白ギャル。もう一人は褐色で、長いピンク髪を下ろして、猫耳みたいに頭頂部で二つ三角にまとめた黒ギャル。


 本当に偏見で申し訳ないのだが、どっちも怖い。三人そろうと、ポケモンの御三家みたいだ。


 唯一にこにこと笑顔を向けて手を振るのは、鏑木さんだけ。白ギャルさんはだるそうに手元のスマホを見下ろし、黒ギャルさんはじーっとこっちを見てる。


(これ……呼ばれてる……のかな?)


「ちょっと~! なに無視してんのさ、ずっきー!!」


(呼ばれてました!!)


 ギャル耐性のなさから、おどおどしながら近づく。できる限り刺激しないよう、腰を曲げて、手は胡麻をするみたいに合わせて。


「へ、へい……な、なな、なんでございましょう……」


「あは~、うける~。三下みた~い」


 笑っているのか分からない。でも黒ギャルさんは、ニヤッとした目つきのまま、おっとりした声で迎えてくれた。

 一瞬だけ白ギャルさんを見るが、目線はスマホのまま。怒ってはいない、と思いたい。


「そんなおどおどしないで大丈夫だよ! みんないい子だから!!」


 自分のことでもないのに、鏑木さんは腰に手を当ててドヤ顔だ。


「あは~、なんで有栖ありすが得意げな~ん?」


「わたしの自慢のベストフレンドですから!! ふふん!!」


「え~ なにそれうれしぃ~」


「愛してるぜ、日香里(ひかり)


 僕を置いて話が回っている。僕いらない子。消えたい。


「……あんたらさ、呼んだんなら二人で話してないで、鈴木君も話に混ぜてあげなさいよ」


 目線はスマホのままなのに、白ギャルさんは僕を忘れていなかった。嬉しい。好き。


「忘れてないよ!」


「えーっと……それじゃあ、どうして僕……呼ばれたんでしょう?」


「え? ……あ~……っとね」


「なんとなくだよ~。意味いる~?」


 急いで意味を考えていた鏑木さんを横目に、黒ギャルさんが真実をさらっと言う。


「いや~、だって。有栖ありすがず~っとずっきーの話すんだもん。気になるじゃ~ん」


 ニヤッと笑って、つんつんと両手の指を差してくる。


「おい、人様に指を刺すな日香里ひかり……」


「え~、いいじゃ~ん。ねえ、ずっき~?」


 黒ギャルさん、もとい日香里(ひかり)さんは机に突っ伏して、上目遣いでそう言ってくる。


「はい、いいです!」


 可愛さに逆らえない。なにこのギャルさん、めっちゃかわいい。

 それに、鏑木さんが言ってた通り、二人ともいい人そう……というより、いい人なんだと思う。僕が知らないだけで。


「そうだ! 呼んだ理由、思いついた!!」


 バッとその場で挙手する鏑木さん。視線が彼女に集まる。


「は~い……その心は~?」


「ずっきーの髪、いじりたい!!」


「……へ?」


 刹那、その場のギャル三人の目がハンターの眼になった気がした。獲物を見つけたみたいに。


「いいの? いじって?」


 しかも一番最初に反応したのは白ギャルさん、もとい志暖しのんさんだった。今にも髪に触りたそうに、スマホを机に落として、手をわきわきさせている。


「ちょっと! 志暖しのんずるい! わたしが思いついたんだよ!!」


 対抗したのは鏑木さん。彼女も両手をわきわきさせて僕に近づいてくる。


「ごめんね~、ずっき~。あの二人。特に志暖しのん、髪とかおしゃれ大好きさんでさ~」


 確かに、今にも飛びついてきそう。何か、涎まで垂れてきてる気が……。


「ずっき~、かわいいから~。おねが~い、お人形さんになってくれないかな~?」


 日香里さんは両手をポンと打ってお願いしてくる。あまりにも可愛い動作で、男が逆らえるわけがない。


「……どうぞ。わたくしめは人形です」


 そこからは、授業が終わるたび、僕の髪型はさまざまな形に変えられていった。

 ツインテール、サイドテール、ポニーテール、おだんご、おさげ。

 いろいろな位置で、いろいろな形で、何度も何度も。気が付いたころには、帰りのHRも終わっていた。


「よし! それじゃあ祈里君! この後うちこよっか!」


「え!? いや、志暖しのんさん……その、顔、ちかい……」


 どうやら白ギャルさん――もとい志暖しのんさんにすごく気に入られてしまったらしく、あいさつが終わった瞬間、走って来た彼女に両手を握られ捕まえられてしまった。


「うち、お菓子とかたくさんあるよ! あと祈里君、オタクっぽいし! ゲームとか漫画もたくさん!!」


「ほ~ら志暖しのん! 祈里君困ってるよ~」


 ぽふっ、という擬音が似合いそうな日香里ひかりさんのチョップが、志暖しのんさんの頭に落とされる。


「てか、どう考えても不審者のセリフじゃん、それ……」


 半目であきれ顔の鏑木さんも参戦してくる。


「いや、だって……こんなかわいい子……いじくれる機会なんて一生ないだろうし……」


 いまだに志暖しのんさんは僕の手を放してくれない。むしろ、さらにぎゅっと強く握られてしまった。


「あの……志暖しのんさん?」


「なに!?」


 元気よく、食い気味に志暖しのんさんは返事する。


「その今日はこの後、用事があって……」


 シュン、と志暖しのんさんの眉が下がる。捨てられる寸前の子犬みたいだ。


「いやでも!? 明日……とか、明後日であれば……」


「いいの?」


 次はぱあっと顔が明るくなる。まさしく百面相だ。


「はい。その……僕も……志暖しのんさんが楽しそうにしてるの見てるの、好き……なので」


 正直、楽しかった。志暖しのんさんも日香里ひかりさんも、もちろん鏑木さんも、とても楽しそうで。見てるこっちも、いつの間にか楽しくなってた。


 ――しかし、僕の発言は別の意図として捉えられたようだ。


 目の前の志暖しのんさんの顔が、みるみるうちに赤くなる。そして、バッと手を離された。目線も逸らされる。


 さらに斜め右前方から、ジトッとなぜか睨まれている。そこにいたのは、鏑木さんだった。


「お~、祈里君。結構大胆さんなんだね~。おもろ~」


 日香里ひかりさんは変わらずにこにこ。……と思ったら、こっそり手元のスマホで赤面する志暖しのんさんを撮っていた。


「あの!? ごめんなさい! 変な意味じゃなくて! 皆が楽しそうにしてて、僕も楽しかった、そう言いたく……て……」


 鏑木さんの目線が……痛い。よし、逃げよう!


「あ、えと……ごめんなさい! このあと用事で! また明日!!」


 僕は逃げた。情けなく。後ろから怒鳴る鏑木さんの声を無視して。

 せっかく紹介してくれた鏑木さんのお友達に、変なこと言っちゃってごめんって。うん。そう謝ろう。誤れば許してくれるよね。

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