聖女探しを命じられたんですが……
「ユナよ、お主に聖女探しを命じる」
ある日、上司である神官長に呼び出され突然言い渡された。
「聖女探し、ですか?」
「そうだ、神託で近年中に魔王が復活する、と出たのだ。 魔王を封印出来るのは聖女のみだ。 国内にいるらしい聖女を探し出し教会で保護するのだ」
「わかりましたー」
という訳で少ない資金を渡され私は教会を旅立った、んだけど……。
「これって体のいい追い出しだよね?」
なんとなくだけどそう思った。
神官長は孤児出身の私を毛嫌いしてるし他のシスターの中では立場が一番低い私は何かとこき使われる。
私も特に反論とかする事も無く黙々と働いていた、勿論言いたい事はあるけど聞く耳持たない人達と話す程無駄な時間は無い。
私は聖女候補のリストを見ながら溜息を吐いた。
「ほとんど貴族のお嬢様じゃないの、いくら教会からの使いでもまともに話を聞いてくれる訳無いじゃない」
はぁ〜、と溜息を吐いて私はリストをビリビリに破いた。
「こんなのあっても無駄だしのんびりと旅でもしますか」
私は口笛を吹きながら道を歩く。
聖女探しは大丈夫なのか、って?
そこはノープロブレム。
何故ならお探しの聖女は私なのだから。
物心ついた頃から女神様の声が頭に響いて『貴女、今日から聖女ね』て言われた。
え、そんな簡単で良いのっ!?って思ったけど任命されちゃったんだからしょうがない。
それに聖女になったからって特に日々の暮らしに変わりはない。
偶に女神様の相手をするぐらいで、治癒能力とかは持っているけど使う事もない。
そもそも『私が聖女です!』って言っても信じてくれる人はまずいないだろう。
これが貴族だったらまぁ国から手厚い保護を受けたりするんだろうけど孤児出身の私の場合は道具として扱われるだろう。
この国は身分制度が徹底されてるからね。
だから、名乗り出る事はしない。
(でも、魔王が現れる事は確かだから早めに手を打っておいた方がいいよね)
私はとある村へとやって来て一人の子供を保護した。
何故か村で虐められているボロボロの少年なんだけど、この子が将来の魔王だ。
正確に言えば『魔王の器』で、現在地の底で力を蓄えている魔王の魂がこの子に乗り移る。
魔王は人間や世の中を憎む心に乗り移りやすい。
だから、早めに保護するのが大事だ。
「お姉さん、誰?」
「君とおんなじ居場所が無い自由人だよ、この村にいても辛いでしょ? 私と一緒に広い世界を見に行こう!」
「……うん!」
私は無事に少年を連れ出す事に成功、あ、少年を虐めていた村の面々には軽く廃れる様に呪いをかけといた。
あと、念の為に魔王が封印されている祠にあと数百年は出られない様に呪いをかけといた。
これで教会の人達も恥をかくだろうし少しは痛い目にあうだろう。
私は少年と一緒にのんびり放浪を楽しむ事にしよう。




