シーズン1 最終話 再び宇宙に
トルキの基地に到着し、海賊の娘を引き渡した。
「その…ありがとう。それに、ごめんなさい…」
「構わない。むしろ俺についてきてくれてありがとうな。後は頼んだ」
「了解です」
さて、ヴィーナスの修理だがなんとか間に合いそうだ。
一方、帝国の基地にもシュトルムピッケルハウベの脱出機が到着していた。
「ご無事でしたか!」
「なんとかな。俺の愛機は?」
「…シュトルムピッケルハウベは既に連邦に接収された可能性があります。戦場では見つかりませんでした」
「…そうか」
「ですが、新たな機体をご用意しております」
倉庫の中に入り、エスカレーターを昇るとあったのはシュトルムピッケルハウベに擬似した機体。
「RRJ-X05 シュトルムシュタールヘルム。シュトルムピッケルハウベの後継機です」
「Xナンバーか」
Xナンバー。機体番号にXが付いている機体のことだ。Xナンバーは試験機及びエース専用機のみつけられるもので、連合はXという文字を恐れている。
「スペックは?」
「シュトルムピッケルハウベと比べて機動性、安全性も高くなっています。機動性はピッケルハウベの2倍。装甲は特殊素材を使い軽く、より耐えられるよう作られています」
コクピットに入ると、シュトルムピッケルハウベとはあまり変わらなかった。安心するこのシートと機器配列。
「シュトルムピッケルハウベと同じように作りました。これなら操縦しやすいでしょう?」
「ああ。初陣が楽しみだ」
こうして俺はシュトルムシュタールヘルムという新たな相棒と共にすることになった。
1920年も中盤を迎えた。
マゼラン雲戦線は膠着が続き、突撃をするも壊滅、そして撤退を繰り返していた。
天の川・アンドロメダ戦線も同じかと思われていた今日、それが大きく動く。
<こちらハンマー艦隊。作戦準備完了>
<了解。本部より通達。これより、227号作戦を開始する。諸君らハンマー艦隊は、祖国の英雄であり、歴史に名を刻む者である。諸君らの行動と勇気は永遠と語り継がれるであろう!祖国に栄光あれ!>
追加ブースターを搭載した駆逐艦が待機し、その後ろにはシールド級がいつでも発砲できるように構えていた。
「作戦開始!ブースター点火!」
一斉にブースターを点火。真っ直ぐ戦線に突っ込んでいく。第二次天の川・アンドロメダ会戦の始まりである。
駆逐艦には最低限の人数と青年兵が乗っていた。皆、目に光りはなかった。
「艦長!敵艦隊前方から接近中!突っ込んできます!」
「対艦戦闘用意!」
<主砲準備完了>
「撃ちー方始め!」
帝国のシルバーバレット級とガーディアン級、フリゲートが発砲し撃沈していくが、妙に爆発が大きかった。
「誘爆にしては爆発力が高すぎる…まさか…」
一艦がガーディアン艦に正面衝突。衝角には爆薬が見えた。
「まさか!」
そのまま大爆発。もう一艦のガーディアンも巻き込まれ誘爆した。
<各艦回避行動!>
「面舵いっぱい!ヨーソロー!」
「ダメです!間に合いません!」
そのまま次々爆発。次々帝国の艦隊に突っ込み特攻していった。
「魚雷発射よーい!」
<魚雷発射準備完了!>
「ってーッ!」
生き残っている艦隊が魚雷を発射。魚雷の波を作り、叩き潰すがその速度に誘爆はできなかった。
「く、来るぞ!」
さらに爆発していき、帝国の防衛戦は壊滅していった。
これが連邦が試行錯誤した結果生まれた作戦、227号作戦である。駆逐艦に大量の爆弾を搭載し敵艦に突撃。そのまま自爆し戦線を壊滅するのである。そして特攻部隊の撤退は許されない。
「特攻部隊のフリゲートが接近中。逃亡を図っています」
「主砲発射。撃ちー方始め」
後方で待機していたシールド級の艦隊がフリゲートを破壊。爆発した。
227号作戦の恐ろしいところは特攻の事だけではない。後方に督戦隊と呼ばれる味方殺し専用の部隊を置き、特攻から逃げようとする味方を撃滅することでもある。一歩も引いてはならない。連邦に戦略的撤退という文字はないと帝国に見せたのだ。
第二次天の川・アンドロメダ会戦 終了
227号作戦よりアンドロメダ連邦の勝利
天の川戦線に続く…
「ヴィーナスのパイロット。お前はここに配属だ」
見せられたのは精鋭の戦闘機部隊に配属への書類だ。そうなると、他のエースパイロットも何人かいるはずだ。これなら…戦争に勝てる!
配属され基地に向かうと、空母が2隻、新型のロンギヌス級とフリゲート、駆逐艦が停泊していた。
アレスティングワイヤーがヴィーナスを止める。
「ようこそヴィーナスのパイロット」
「お会いできて光栄です部隊長」
この部隊長はヴィーナスの前の機体であるマーキュリーの元パイロットだという。十年戦争を最初から最後まで生き延びた男でもある。
「しかしヴィーナスとやらはマーキュリーと違うようだな」
「マーキュリーはどんな機体だったんです?」
マーキュリーはヴィーナスが登場してからスクラップになっている。鹵獲されないためにもデータは抹消され、残ったのは名前、パイロット、そして戦果のみ。全てを知るのはこの男のみである。
「操縦方法は途中からSRSと呼ばれるシステムだったな。最初は普通の操縦桿だった」
「…なぜ途中から?」
「見てくれ」
部隊長が袖を捲ると、両腕が義手だった。
「操縦桿を上手く握れなくなった私はマーキュリーを降りるしかなかった。傷痍軍人はあの戦場からすれば厄介者扱いだ。そこでファステストマンズが開発してくれたんだ。SRSを」
ファステストマンズ。彼らは巨大な兵器廠で、俺ら連合全般の戦闘機の開発を行っている。名前からする通り、スピード、機動性正義だが、気に食わない。早ければいいってもんじゃないんだ。そんな奴らがSRSを開発した。精神と引き換えに戦闘機を動かす。両翼を被弾しても手が痛いぐらいだったが、本体にでも当たればかなりのダメージを受けるのだろう。
「まぁそんなこんなで今は部隊長だ。我々の部隊名はチェスピース飛行中隊だ。君を入れ全16名で動いている」
チェスピース…あまりそういうのに興味はないが、随分のチェス愛が強いようだ。部隊長の額にはクイーンのタトゥーが彫られている。
「みんな聞いてくれ」
「今日からチェスピースに配属されましたヴィーナスのパイロットです!よろしくお願いします!」
「「おー!」」
一気に作戦室が盛り上がった。
「早速ですまないが新しい戦線に向かう。既に連邦による戦闘が続いている。戦況は我々が不利らしい。おそらく厄介な物があるぞ」
「それ大丈夫なのか?」
「どんな時でも命令を下されたら動く。それがチェスピースだろ?さぁ仕事を始めるぞ!」
「「おう!」」
…俺、この部隊についていけんのか…?
シーズン2 チェックメイト・カンパニーへ続く
とりあえず『COSMOS WAR』シーズン1はこれにて終わりとなります。シーズン2はおそらく少し先になると思います。
初の宇宙SFだったので上手く書けるか不安でしたが、まさかランクインまで行ってしまうとは思いもよらなかったです…。ここまで読んでくれた読者の皆様、ありがとうございました!シーズン2も頑張ります!