第6話 土星
コメットにロケットブースターを搭載する。巨大なロケットブースターに機体が小さく見えるほどだった。
「…何してんだ?」
俺は思わず聞いてしまった。
「見りゃわかるだろ魔改造だよ。新型より速いスピードを出すにはこれしかないんだ」
周りを見ると、このコメットは1種類に過ぎないらしい。他にも薄い装甲で作った盾を付けたタイプや、ありえない数の爆弾を積んだタイプ、複座タイプまで揃っていた。
これから俺らが向かうのは帝国最大かつ最強の要塞、土星要塞だ。土星は帝国の戦闘機や軍艦といった燃料を採取している上、ここは主力の生産工場がある。この要塞を突破し、工場を破壊すれば燃料はあっても数がなければ使い道はない。ここが勝敗を分ける鍵だ。
土星要塞は惑星リングの無数の天体に対空砲やら高射砲、前哨基地やらを建設し、さらには2重の惑星シールドが展開されている。艦砲射撃をしようものなら、シールドが耐え地球、月、水星から艦隊が飛んでくる。ならば、オールト雲の突撃を繰り返すまでだ。とはいえ、ピラニアでは蜂の巣にされてしまう。そこでセブンスターズから鹵獲したロックオンミサイルを搭載し、俺ら戦闘機隊が破壊する作戦だ。相手も数で勝負するなら、俺らも数に頼るしかない。
「本艦隊はこれより、ルールツ帝国最大の要塞、土星要塞の攻略に向かう。今までとは比較できないほどの大規模な激戦が予想される。総員の武運を祈る」
他艦隊からは次々コメットやトライアングルアタッカー、ガードディテクターが発進していた。
俺もヴィーナスに乗ってあの激戦区に行かなくてはならない。
TYF-80リチャードが発進し、それに続く。
「ヴィーナス発進用意!」
「幸運を祈るぞ。生きて帰って来い」
カタパルトがヴィーナスと俺を飛び出させた。俺らの後ろには大ミサイルを搭載した大量の戦闘機が続き、
土星の上下からフィクストスターとセブンスターズが襲って来た。
「敵機襲来!」
「ザコに構うな!要塞へ最大全速!」
Aリングに到達すると、リングの正体である氷や岩に設置されている高射砲と対空機関砲が弾幕を浴びせに来る。その弾丸は敵味方関係なく撃ち墜とした。
<なんて数や!>
<突っ切れ!>
味方の艦砲が小惑星トーチカを攻撃するが、その艦砲射撃も味方戦闘機に当たる。
俺の体に少しずつだが痛みを感じている。ヴィーナスも少しずつ被弾してきたのだ。流石にこの弾丸の物量は避けられないか…。
リチャードも避けてはいるが被弾している。このままシールドさえ破壊すればこちらのもだが…。
<エンケシールドは目の前だ!俺がやる!>
ナイト01が発射したロケット弾が全弾命中しシールド発生装置を破壊する。
「残るは1つ!カッシーニシールドだ!」
<ダメだ!これ以上は墜ちる…!>
きっと、ここで死ぬ。だが、ここまで来て、俺が今近くに居る中で仲間が殺されるのは御免だというのに!
<ポーン05被弾!クソッ!脚を負傷したぁ!>
「離脱しろ!」
<レバーが作動しない!>
その言葉を最期にポーン05は天体に突っ込み爆発。応答はなく、墜落した現場は跡形もなく姿を消したのだった。
「…クソ野朗…」
ヴィーナスが暴走しないよう、必死に怒りを抑えた。その抑止の後に襲って来たのは後悔と悲しみである。しかし、戦争にこんなものは余計なもの…わかってはいたというのに…。
<クイーン!射程距離に入ったはずだぞ!早く撃て!>
キングの声で我に戻りミサイルの照準を合わせる。涙で視界がぼやけてきていたが、必死にクロスヘアを目標に付け、発射。直線を描きミサイルは発生装置の端に命中。炸薬が爆発し土星要塞のシールドはついに無力化。そして艦砲射撃が始まった。
「やった…ぞ…」
振り返った時、あんなに沢山と溢れていた味方の戦闘機隊は壊滅に等しいほどまで消えていた。もう、振り返っても意味はない。
「…このまま土星に突入する!」
<気をつけろ。後ろから敵機接近中>
大気圏を突破し、空中に浮遊する生産工場を発見。機関銃で工場を撃ち場所を示すと、チェスピースの隊員たちがミサイルを発射。処理完了だ。
この調子で次々工場を破壊した。他のコメットやトライアングルアタッカーも破壊行動を実行している。
<敵機!雲から突っ込んで来る!>
セブンスターズが急降下。2機だけだが、この瞬間、油断してしまった。
「横!?」
<下にもだ!>
包囲されている!このセブンスターズ、少し古いF型でレーダーすら搭載していないのに、この連携プレー…敵ながら見事だ。
「だが昔の俺じゃねぇ!」
ヘッドロックをしエアブレーキとフラップを展開。速度を減速させ確実に命中させた。急降下してきた2機は撃墜。
土星の重力を利用し、その場で180°旋回。真下から来る1機を撃墜した後、さらにグルンと回りながら連射し向かって来た左右4機をあっという間に破壊した。
<クイーンまずい!>
「大丈夫…だ!」
ヴィーナスがこの失速を喰らいスピンを発すが、スピンリカバリーをしつつ回復。元の体勢を取り戻した。
<大丈夫かクイーン!>
「ああなんとか…スピンリカバリーの練習がここで役立つとは思ってもいなかったよ…」
この日、土星は陥落した。
溢れる犠牲者の上に、連合国の勝利がさらに輝き出したのだった。




