第5話 激戦の末に
「装備装着!」
縦に3つの直線バイザーがつけられたヘルメットに酸素ボンベのパイプを取り付け、ジェットパックを背負う。ロケットランチャーのRR-3 インファントリーファウストを持った。彼らこそ生身で宇宙の戦場に立ち向かう高機動突撃隊である。ポーン01が見た光の正体はこれであった。
ハッチが開き、激しい宇宙戦を目の前に構えると、隊長が合図を出した。
「突撃!突撃!」
ジェットパックを起動し宇宙へ飛び出した。後方ではリチャードが対空兵器を破壊している。
「恐るな!お前らならできる!そのロケットを艦橋に撃てば沈む!伝説を残せ!」
トルキ・連邦第1総合攻撃艦隊残存勢力
イゴルカ級ミサイル駆逐艦48番艦ピロシキ
同 艦橋
<左舷被弾!動力源損傷!火災発生!>
「消火活動急げ!」
「急造で大量量産されたくせに頑丈だなこの艦は」
オペレーターが小さな光を捉えた。
「正体不明の光源接近!」
「光源?」
「か、艦長!目の前に!」
艦橋の目の前に現れたのは高機動突撃兵である。ジェットパックでホバーしながらロケットランチャーを構える高機動突撃兵は、左手で敬礼した後に発射。艦橋は吹き飛びピロシキは動かなくなってしまった。
高機動突撃隊が次々と残存勢力の艦を破壊していく。しかし、中には対空兵器に撃ち抜かれたり、艦や戦闘機の宇宙塵に巻き込まれる者もいた。
<発射!>
シールドを突破したピラニアらが一斉にロケット弾を発射。何発ものロケットは装甲に防がれたが、さらに何発ものロケットは甲板へ命中し内部を爆破。スティーブンソンは内部から爆破され轟沈した。
だが、残存勢力の戦闘機隊も窮地に追い込まれていた。それはヴィーナスも同様である。
「しまった…弾が…」
モニターには弾丸マークに85と表示されていた。弾切れ寸前である。他の隊員や戦闘機隊も弾切れや燃料切れ寸前を起こしており、トルキの燃費の悪さが目立つこともあった。一方、帝国側は基地が近く補給地点はいくらでもあったのだ。
希望はなかった。この時までは。
<後方見ろ!>
一通の無線からの言葉。その言葉は希望の眼差しだった。
<こちらマゼラン大連合宇宙軍第7特別編成艦隊到着!救難信号を受信した。これより増援を行う!>
マゼラン大連合軍だけでなく増援に来たのはトルキ・アンドロメダ第3総合艦隊もだ。連合国の大量の戦闘機部隊が攻撃を開始。まるで俺らに任せておけと言わんばかりだった。
<第1、2総合攻撃艦隊の部隊は空母オーロラとシンデレラに着艦してくれ>
<ヴィーナス!後ろに1機来てるぞ!>
振り返ると、俺に向かってきていたのはヴィーナスと酷似した帝国軍機だった。
<聞こえているなヴィーナスのパイロット!>
オープン回線…?あの機体から出ているのか!
「何者だ!」
<覚えてないか!かつて俺を二度も撃墜したというのに!>
「……シュトルムピッケルハウベのパイロットか!」
<久しぶりだなこの野朗…宣言しよう!終戦前にお前を殺す!>
「その言葉、そっくりそのまま返してやる!」
弾は少ない。燃料も十分とは言えない状態だ。圧倒的に不利だが、今はやるしかない。この機体、放っておけば必ず俺らを殺してくる。それに決着がまだついていない!
こう思っていたが、実際、ジオのパイロットは恐れていた。
あのヴィーナスと再開したのは約半年振り。それまで彼は軍事顧問や教官として働いていたため、腕が落ちていると感じていた。さらに、S.R.Sという奇妙な装置に完全には慣れていなかった。ジオ自体も新たなパイロットに馴染んでいない。この状況で初陣がヴィーナスとの勝負、彼自身も不利。機体にはプレッシャーを感じていた。
「ジオ…兄弟殺しをさせてすまないな」
そうである。ジオにとって数年振りに逢えた実の兄を殺すことになっていた。ヴィーナスも感じ取っていた。この兄弟殺しを。
「どうしたヴィーナス…なぜ怖がってる…?」
ヘッドロックでジオが先に発射。ヴィーナスは回避行動に移りジオを避けた。既にヴィーナスのパイロットは体中が痛かった。先程の激戦でヴィーナスも何発も被弾していたのだ。幸い致命傷は無い。
「必ず当てなくては…賭けてはダメだ…」
高速のドッグファイトが続いた。それを見ていた敵味方は釘付けになっていた。本当に生物が操縦しているのかと。
だがこの無茶なドッグファイトがヴィーナスを狂わせたのだ!
「まずい燃料が…うぉっ!?」
ボゴォッとエンジンから煙が上がった。オーバーヒートを起こしたのてある。既に被弾していたためか調子が狂ったのだ。ついには宙域で停止してしまった。
「何が起きたんだ…!」
「貰ったぞヴィーナス!墜ちろ!」
ジオが一気に旋回しヴィーナスを狙った。だが、ジオはそれを拒否した。
パイロットが引き金を引こうとしたその時、ロックがかかる。
「弾詰まりか…!?」
そのままジオは通過。
緊急対処で弾詰まり解除スイッチを押しドラゴンファイアを行い薬莢を排出するがロックは直らない。無理矢理やろうとすれば更なる故障に繋がってしまうため、ここは一時撤退を選んだ。
「クソ…運の悪い。また逢おうヴィーナス!」
ヴィーナスにとって、これは命拾いだった。
<大丈夫かヴィーナスのパイロット>
ネットを搭載したピラニアが宙域で停止してしまったヴィーナスを回収。空母へ運んでいく。
他の部隊は無線の命令に従い着艦。ヴィーナスも到着したことでついにこの俺らの激戦は一時幕を閉じたのだった。




