第3話 空母スティーブンソン
「うぉぉぉぉっ!」
<どうだ?ジオの試乗は>
「こりゃやべぇ。思ったとおりに全て動くぞ!」
<調整に苦労した甲斐があったぜ>
S.R.S。神経と機体を接続し、より高機動と判断力を高めるシステム。十年戦争中に生まれた狂気のパーツだ。当時の空戦や宇宙戦では乱戦が流行であり、どこから敵機が来るのか分からなかった。そして早い反撃を求めた結果、今のS.R.Sに繋がるそうだ。
ファステストマンズが開発したSRS2号機はこのジオに積まれている。返還は要求されていない限り、彼らにも経営の策略があるのだろう。
ジオが空母スティーブンソンに着陸した。アレスティングワイヤーがジオを急停車させる。
空母スティーブンソンは十年戦争時代の空母だ。未だ宇宙最大の空母として名を挙げてきたが、この戦争に今まで参加はしてこなかった。
空母の中には数十万もの戦闘機を重要可能で、圧倒的な装甲と対空火力も持ち合わせるその性能はまさに動く要塞。こいつを早く出せば良かったものの、上層部は十年戦争の栄光として温存したかったのだ。
自室に戻り、ペーストフードを食いつつテレビを見ていたが、面白い番組などやっているはずもなく全てがニュースかプロパガンダ放送だ。
「クソッ…この飯もまずい」
ペーストフードは名前の通り食べ物をペースト状にしたものだ。旧人類が宇宙に旅立った時、一般化していなかった宇宙食は数が少なく非常食の数も少なくなると、一部の宇宙船では殺し合いが始まり人を食べる事もあったそうだ。それを問題視した人々は、居住可能なら惑星に一度着陸し、食べれそうなものを収穫。ただし宇宙に持っていけるかわからなかったからペースト状にしたというのが始まりだ。
このペーストフードが不味いのは元の食い物が悪い。戦争の激化で農場も失い、質も下がってきている。
ここまで詳しく知っているのは"旧人類黙示録"と呼ばれる古代の本があったからだった。どの国の学校でも知られているこの本は、今のところ世界最古の本であり、旧人類と昔の新人類の話が書かれている。今のペーストフードがなぜ作られたのかといった話の他に、なぜ旧人類は地球を旅立ったのか、どうやって地球以外の惑星まで辿り着けたのかということも。記録上、コスモス歴最初の戦争まで載っている。作者は不明であるものの、文字は今と非常に酷似しているため読めないことはない。現在は帝国首都ベルキにある人類歴史博物館に展示されている。
窓から見える帝国本土はいつ見ても綺麗だった。旧人類の故郷、"地球"なのだから。
俺ら帝国人は数少ない旧人類の子孫に当たる民族だと言われている。地球は住めなくなるほど放射能に汚染されていたが、自然とスペースセトラーによっていつの日か元の姿を取り戻した。
スペースセトラーとは未開拓地の惑星を開拓する者たちのことだ。旧人類が他の惑星に住み始め、新人類を生んだコスモス歴0年から今に至るまで代を継いで活動している。たくさんの宇宙人と戦い、文明を築く種を蒔いたスペースセトラーはどんな兵士よりも強い。誰もが憧れる存在なのだ。
「おいあんた!ダンスはするかい?」
「ダンス?」
「もう敵がすぐそばまで来ている。だから、最後の楽しみとして今からダンスパーティーをするんだとさ。食堂で」
「…そりゃ、行かなきゃ損だな!」
「そう来なきゃだ!」
俺は食堂に向かうと、鉄屑やダンボールで作られた簡易なステージが作られており、マイク、ドラム、サックス、トランペット、ベースが置かれていた。既に大勢の人々が集まっており、気分と雰囲気は高揚していた。
集まっている者の中にはパイロットやクルーだけでなく将校や親衛隊、司令官までもが居たのだ。
消灯すると、マイクを持つ1人の兵士にライトが当てられた。
「マイネ・ダーメン・ウント・ヘレン!ダンスパーティーへようこそ!まさかパイロットやクルー以外の将官や司令官の皆様まで集まっていただけるとは実に素晴らしきことであります。本日、最初で最後のダンスパーティーの司会を務めさせていただくこの私、歌手まで担当いたします!是非とも、私の歌声と共に踊って踊って狂っていただければ幸いです!皆様、準備はよろしいですか?」
「「「ヤー!!!」」」
「ミュージック、スタート!」
ステージの照明が一斉に点灯。ダンスフロアのサイド側の照明も薄く光っていた。
同時にサックスに合わせ曲が進行。歌も始まり、人々は手を合わせて踊る者もいれば、1人で踊り辺りの者もそれに合わせる者もいる。
序のゆっくりとした曲調が終わりを告げ破に入ると明るくテンポの速い曲へと変わりダンスはさらに激しさを増す。俺もその中の虜になっていた。
照明を点滅させドラムがさらに場を盛り上げた。
踊る者の中には男女問わず裸になったり肩車をしたり、酒を浴びる者もいる。
この状況を聞いた艦長は、「好きにさせろ」とだけ言って流したのだという。
ダンスパーティーが終わり、俺も疲れ就寝。バタンキューというやつだ。数秒で俺は寝てしまった。
一度瞬きをした感覚だが、既に7時間が経過していた。
昨日の娯楽と感覚を忘れて支度を整え、しばらくゆっくりとしていた時、ついに警報が鳴り出撃待機命令が出た。
「…初陣か」
スティーブンソンが他の艦隊と共にワープに突入。海王星まで到着すると、宙域に設置されている基地からセブンスターズ、ロッド、フィクストスターやコユキ級、シルバーバレット級、シルバーバレットⅡ級、ガーディアン級が出撃していくのが見えた。皆、上に向かって進んでいる。
「…連合め…カイパーベルトの上から来やがったな!」
一方、連合国軍の空母ニューヘッドからはチェスピース含む連合戦闘機隊が発進。ついに太陽系戦線に到着したのである。
「情報通りの敵空母発見!デカいぞ…!」
<ピラニアを護衛するんだ!>
「「「了解!」」」
連合国軍の目的はワープ阻害阻害を搭載したガーディアン級で構成された防衛線の破壊、そして潜入部隊によって発見された空母スティーブンソンの破壊である。
すぐさま宇宙戦が発生し、ビームや弾丸が飛び交っていく。宇宙には次々と命の光が輝いた。




