第2話 天の川戦線
「例のエースか!」
「ヴィーナス!覚悟!」
ヴィーナスの30連装クラスターミサイルを展開し発射。空中で分散した小型ミサイルも回避。攻撃を避けるRRJー163 ロッドはレッドジェントルマンの愛機であり、赤く塗られた特別仕様である。
「避けた!?」
「ヴィーナスとて旧型!十年戦争の遺産は地に還るべきだ!」
ロッドは一気に距離を近づけヘッドオンをする。すぐに俺はトリガーを押し弾丸を発射。どちらもギリギリで回避する。
奴を分析しなくては。旋回は遅めだが、速度はかなり速い。攻撃を交わすのが得意と見た。
ロッドが旋回中、上面からミサイルが発射されロックされる。
「くそっ!なんてところに武装を配置してやがるんだ!」
旋回し接近する前にミサイルを機関銃で破壊。1発だけの隠し武装だ。かなり特殊な機体だな…。
こんなことをしている暇はない。早く片付けなくてはならない。上空ではトルキのフリゲートが沈み墜落していくのが見えた。戦況は五分五分だ。
「ヴィーナス…遺産とはいえ老兵。やるな」
ヴィーナスを撃破すれば昇進も勲章も間違いなしだ。ここで必ず仕留める。
ヴィーナスが先手を打つためロッドの背後につく。
速度を落としたり、あげたりを繰り返しなんとかヴィーナスを前に出そうとするが、ヴィーナスの圧倒的機動性でピッタリと背後につき機関銃を撃ってくる。ヴィーナスも発砲しているがロッドの回避力で当たらない。
まるで決着がつかない。
天候が雷雨になり、濡れる。
この雨が止むまでに決着をつけよう。俺は決めた。
雷が光り空が真っ白に輝いた時、スロットルを100%にし急上昇。一瞬、視界を失っていたレッドジェントルマンはヴィーナスを探す。
「奴はどこに!?」
ヴィーナスが上から急降下。弾丸を浴びせ、何発かが被弾しつつも黒煙をあげながらロッドは飛び去ろうとする。
「逃すか!」
照準を定めロケット弾を次々と発射。1回目は外れた。もう一度狙いを定め、最後の1発に賭け発射。同時に、ロッドがエンジン不良を起こしロケットが命中。ロッドとレッドジェントルマンは四分五裂した。
<大丈夫かヴィーナス>
無事、他の部隊と合流できた。どうやら上手くいったようだ。
「…なんとかな」
<制空権はこちらが確保した。基地に戻るぞ>
「了解」
雷雨は止み、この戦場の帝国軍は降伏。帝国本土への道が近づいてきた。
帝国を押し返す連合軍。しかし、これは前線の話だ。後方であるトルキ本土では帝国軍による空襲が相次いでいた。
「対空砲火!弾幕張れ!」
RRB-88 スペースシャークから爆弾が落とされ、無差別爆撃により街が破壊されていく。
スペースシャークに搭載された小型ワープ装置はジャマーさえなければ短距離だがワープが可能。戦場や防衛線を無視できるという強みがある。この一方的な攻撃を解決するには、帝国をさらに押し返す必要があるのだ。
帝国宇宙軍
天の川戦線 後方
第一太陽系艦隊
旗艦 シルバーバレットⅡ級巡洋戦艦ラーべ
「大提督。防衛線の構築が完了いたしました」
「うむ。よくやった」
ナガト大提督。階級は元帥。十年戦争より前から戦果をあげてきた名将であり、様々な政治にも関与してきた。
「味方艦隊から入電。ワレ、センセンリダツ」
「大提督。前線がやられました。作戦通り、マゼランまで行きますか?」
この防衛線を設置した後、マゼラン雲前線まで後退する予定だったが、予想よりトルキが前線を突破。もしこの太陽系艦隊が離れれば、ここも突破されかねない。防衛線で使用したガーディアン級護衛艦は重武装だが速度が遅く、もし突破しても追いかけることは不可能だ。
「…第二太陽系艦隊は予定通り、マゼラン雲戦線へ直行。我々第一太陽系艦隊は敵を迎え撃つ」
「「「了解」」」
第二太陽系艦隊の戦艦が次々マゼラン雲戦線へワープに移る。
「空母に伝えろ。偵察機は常に飛ばせと」
「了解致しました」
「そして、兵には今のうちに飯を食べさせろ。空腹では戦はできない」
ナガト大提督は知っていた。この飯こそが戦略の1つだと。
帝国のレーションは不味いが、今は我慢するしかない。この空腹度というのが戦争に深く関わるのだから。
「偵察部隊より入電!ワレ、テキブタイ、カクニン!」
「第一種戦闘配置!」
警報が鳴り一斉に乗組員が準備に取り掛かる。
砲身が敵を向き、弾薬が装填された。
シルバーバレットⅡ級の大型レーザー艦砲も充電され、雷を帯びる。
ナガト大提督がマイクを握った。
「全艦へ告ぐ。一段目の攻撃はミサイルを一斉発射。二段目はシルバーバレットⅡ級による遠距離射撃後、三段目に各艦の砲撃を開始。四段目に戦闘機部隊を発進させる。激戦が予想されるが、決して怯み、屈してはならない。帝国のために戦うのだ。皇帝陛下万歳」
「「「皇帝陛下万歳」」」
敵のターゲットマークが表示される。
「敵、射程距離内に入りました」
「ミサイル発射」
「ミサイル発射」
各艦からミサイルが発射され、まるで流れ星かのように光って向かって行った。
その数えきれないほどのミサイルはトルキの艦隊に命中した。だが、予想より被害は少ない。
「レーザー艦砲発射。撃ちー方始め」
全てのシルバーバレットⅡ級から閃光が一直線に放たれ、トルキの艦隊を貫き爆散させる。
「次!各自艦砲撃ちー方始め!」
弾幕が宇宙に輝く。トルキの艦隊からも砲弾が飛んできていた。トルキの射程距離内に入ったのだ。
「戦闘機隊発射!」
カタパルトでセブンスターズF型が発進。次々セブンスターズは隊列を組みトルキ艦隊へ向かっていく。カタパルトから発進するのはセブンスターズだけではなかった。
<調子は大丈夫ですか?>
「ああ。操縦も大丈夫だ」
シュトルムピッケルハウベの元パイロットである。今はシュトルムシュタールヘルムに搭乗している。
発進の合図を確認し、発進。グッとGがかかる。
「久しぶりの宇宙…やはりここはいいな。さて、シュトルムシュタールヘルムとやら。俺の新たな相棒になるがいい!」
スロットルをあげ先頭に出る。
新たな戦場の始まりだ。




