第1話 開戦
コスモス歴1918年…
「我らルールツ帝国は連盟を脱退する!」
宇宙国家連盟。それは宇宙に存在する惑星を支配する国々を、平和的に解決する組織である。
人類が地球を捨て宇宙に旅立った日から1918年の年月が流れたこの日、軍事大国ルールツ帝国は連盟を脱退した。
コスモス歴1919年。トルキ自由諸国もこれに影響し脱退。ルールツ帝国へ宣戦布告した。巨大なカーテンが舞い降りた瞬間である。
後に、宇宙国家連盟は解散。平和は失われた。
「敬礼!」
副隊長が命ずる。
「諸君。開戦日だ。歴史に残る魔の日になる。帝国は天の川銀河を始めに宇宙を次々と支配した。これから我々が向かうのは帝国領の惑星だ。この初陣に負ければトルキは崩壊するだろう。家族、友達、戦友、彼女彼氏、全員が支配される。死ぬことを恐れるな!戦争が終わるその日まで涙は流すな!わかったか!」
「「「サー!イエッサー!!!」」」
僕たちは死にに行く。大切な人のためにだ。帝国の強さはよく知らないが、強力だということはわかる。トルキの数百倍の軍事力なんだ。俺はきっと死ぬだろう。
「乗れ!」
戦艦に次々トルキ兵達が乗り、空母には戦闘機が乗せられている。
これから始まるのは、大戦だ。
惑星までワープした時には帝国の戦闘機やら戦艦が待ち構えていた。
<各隊降下準備!>
警報とアナウンスで待機室から降下ポットへ向かう。
「撃ち落とされるなよ!」
降下ポットが惑星に向かって投下されて行った。僕たちもその中に入り、地獄へ猛スピードで突入する。
轟音と共に惑星に着地すると、銃撃戦が始まっていた。
「ゴー!ゴー!止まるな!」
銃弾が無数に飛んでいる。
「敵装甲車!」
ダンダンダンと機関砲を発泡してくる。当たった兵士は体に風穴が空いた。
「ロケットで吹き飛ばしてやれ!」
「目標敵装甲車RRPW-5!500m!指名!」
対戦車ロケットランチャーが命中し燃料に引火して爆散する。
「今のうちにだ!クレーターまで走れ!走れ!」
奥でも棺桶が数両発砲している。
「敵補給基地まで後少しだ。ベストな場所に俺ら着地したな」
「だが装甲車が多すぎる。アーサーまで直接行く進路が頼りだが、第二包囲連隊のチャーリーの間から行こう。包囲しているなら装甲車は火力が高い方に配備されてるはずだ」
「よし。行くぞ!」
砲弾や銃弾が飛ぶ中、走って走って走りまくる。少し離れると、攻撃は止んで来た。
「隊長。見てください」
双眼鏡を隊長が渡す。
「前哨基地にトーチカがあります。あんなの情報にありまんでしたよ」
「例の移動トーチカ型戦車だろう。帝国が開発した新型戦車だ。クレーンが付いていて、その場で砲塔をトーチカ代わりにできるという。便利なもんを開発しやがった。仕方ない。一等兵!」
俺が呼ばれる。
「サー!」
「重要任務だ。要点だけ言うぞ。あの戦車トーチカにコイツ(グレネード)を入れて吹き飛ばすんだ。援護は俺らがする。以上」
「で、でもどこから入れるんです…?」
「知らん。だが所詮はトーチカだ。空気孔が必ずあるはずだ。予想だが、薬莢排出口が常に空いているように見える。空気孔代わりになっているんだろう。試してに入れてこい。ほら行くんだ!」
背中を押され走る。仲間の隊員達も後に続き、銃弾が飛んでくるようになるとクレーターまで走って隠れ、徐々に近づいて行った。
前哨基地近くに来ると、歩兵も多く、大砲が放たれている。トーチカも同様だ。
隊長の通り、薬莢排出口が空いている。
「敵装甲車!10時方向!AP弾装填!」
中からルールツ兵の声が聞こえる。
タイマーを5秒にセットしスイッチを押す。投げ込んで急いでその場に頭を抱えて伏せた。
爆発すると白く光ったものが落ちて来る。誘爆した証拠だ。
トーチカが破壊されると、ルールツ兵達が慌て始めた。冷静さが一瞬劣ったこの瞬間、奇襲をかける。隊長に続いて白兵戦を行う。
陥落させると、高射砲の対空攻撃を中止させ、惑星バリアを停止させた。
「輸送艇が迎えに来る!急いで乗るんだ!」
今度は回収の輸送艇まで突っ走る。ここに艦砲射撃が来る。
輸送艇に乗ると直ぐ扉が閉まり宇宙へ戻る。味方艦のサンライト級が艦砲射撃を始め、補給基地を次々砲撃しているのが見えていた。
この世界は、綺麗な宇宙を見ることがないのかもしれない。恒星の光が常に見えるのではなく、爆発や弾丸、ビームが見えるのだ。
第二話 運命
「頭を出すな!」
塹壕が揺れる。帝国軍の砲撃だ。
あの後、俺達は激戦区へ配備された。ここはこの星座の惑星全体を統制する帝国司令部がある。もしこの惑星が陥落すれば、帝国軍はこの星座から撤退を余儀なくされる。
砲撃が止んだ夜のことだ。
この惑星は夜はマイナス10℃。昼は0℃と比較的凝固点に近い温度を保っている。この惑星にも生命体がいたが、この戦闘で絶滅した。
宇宙でも戦闘が続いている。
ジェット機の轟音が僕達の頭上を通って、相手の塹壕に爆弾を落として行った。
「相変わらず強いなヴィーナスのパイロットは」
「ヴィーナス?」
「俺らトルキがこの大戦前からずっと運用してるエース専用機なんだとさ。コメットとかの量産機とは全く違う高性能だ。乗るパイロット達は、いつもいきなり決まって、選抜される本人達も知らない。整備員曰く、機体自体がパイロットを選ぶとか」
この時まで、俺は深くは考えていなかった。あんな機体があるんだと思うくらいで、今を生きるのに必死だった。だが、後に俺はあのヴィーナスと共に生き、人生までも売ることになる。戦争という商人に。