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妻は推理小説オタクとして首を突っ込まずにいられないので将軍の夫と共に事件を解決させる。スンスン。これはアーモンド臭なのでは?嗅いだことないけど!

作者: リーシャ
掲載日:2026/01/30

 しとしとと雨が降る、どこか寂しげな後宮の一室、豪華絢爛な装飾とは裏腹に空気は重く沈んでいた。


「うーん、やっぱりこのお香、なんだか引っかかるんだよね」


 李雪華リ・セツカは、きらびやかな刺繍が施された卓の上に置かれた香炉を、くるくると回しながら呟いた悩みが本音として出てくる。


 現代日本では、推理小説オタクだった雪華にとって、この淀んだ空気感は見過ごせない。


「雪華、何か気になるのか?」


 横に立つのは、雪華の夫であり、この国の若き将軍の劉瑞リュウ・ズイ、幼い頃から苦楽を共にしてきた彼は、雪華の突飛な言動にも慣れたものだ。もっとも、そのおかげで幾度となく事件の真相に辿り着いているのだから、頭が上がらない。


「うん。このお香の香り、どこかで嗅いだことがある気がする。甘くて、ちょっと苦くて……あっ!」


 雪華は指先を弾いた。


「これだ!現代のアーモンドにすごく似てる!確か……青酸系の毒って、こういう匂いがするって聞いたことがある!ミステリードラマとかに出てくるしっ」


 瑞は目を見開いた。


「青酸系の毒だと?それは、穏やかではないな」


「そうでしょ!それにね、この花瓶の水の減り方も不自然だし、被害者の手の爪の色も、少し変じゃない?もっとさ、現場検証をしっかりしないと。足跡の採取とか、物の配置の記録とか!現代の警察なら、絶対にするから」


 雪華は身振り手振りを交えながら、熱っぽく語るのを瑞は、その真剣な眼差しに引き込まれるように頷いた。彼女の言葉はいつも正しい。


「なるほど……現代にはそのような捜査方法があるのか。すぐに家臣に指示を出そう」


 瑞の迅速な指示により、後宮の者たちは改めて徹底的な現場検証を開始した雪華は、現代の刑事ドラマで見たような鑑識作業を思い出しながら、気になる点を次々と指摘していく。やってみたかったから、余計に気合いを入れていた。


「この床の染み、ただの水の跡じゃない気がする。もっと詳しく調べた方がいい」


「この棚の奥、何か引っかかったような跡がある。もしかしたら、何か隠されていたんじゃないかな?」


 最初は戸惑っていた家臣たちも、雪華の鋭い観察眼と的確な指示に、次第に感心し始める。それも当然のこと、瑞もまた雪華の言葉一つひとつに耳を傾け、的確な判断を下していく信頼があるからだ。

 やがて、棚の奥から小さな絹の袋が見つかったことで皆が息を呑むと中には、粉末状のものがわずかに残っている。


「これ!」


 雪華は声を上げた。


「この匂い、やっぱりアーモンドの匂いがする!それに、この袋の中身、少し焼け焦げているような……どうかな?」


 夫の瑞がその物体を入念に調べると、確かに微かな焼け跡があった。


「これは……火薬の痕跡か?」


「火薬?」


 雪華は目を丸くした。


「毒殺に見せかけて、実は爆殺だったっていうこと?」


 二人の推理は、事件の様相を大きく変え始めた。もしこれが爆殺だったとしたら、一体誰が、どのような目的で?なぜ毒に見せかける必要があったのだろうか?


「被害者の身辺を洗い直す必要があるな」


 瑞は柔らかい表情で言った。


「雪華、君の現代の知識は本当に助かる。これからも頼りにしている」


 雪華はちょっと照れながらも、しっかり頷いた。


「もちろん、瑞!夫婦だもん。最後まで真相を突き止めてみせるから!」


 被害者の身辺調査を進める中で、雪華と瑞は意外な人物が事件に関わっている可能性に気づき始めていたら浮かび上がる存在は、控えめで目立たない存在だった、とある女官だった。


「あの女官、いつも被害者のそばにいたらしいんだけど、事件当日は姿が見えなかったって証言がある」


 雪華は、集められた証言達を真剣に読み返しながら言った。


「それに、なんだか噂によると、被害者とあの女官の間には、小競り合いがあったみたい」


 瑞は顎に手を当てて考え込んだ。


「喧嘩か……些細なものかもしれんが、念のため調べてみる必要があるな。君は鋭いしな」


 二人は、その女官の事務所へと向かった部屋は質素で、特に目立つものはないものの雪華は現代の刑事ドラマで見た、犯人が焦って証拠を隠す心理を思い出すと念入りに部屋の中を見て回った。


「ちょっと、これ、新しくない?」


 雪華は、隅に置かれた鉢植えを指さした。


「土が全部入れ替えられたみたいだし……普通しないよね?」


 瑞が土を掘り返してみると、奥から小さな破片が見つかったそれは、先ほど棚の奥で見つけたものとよく似ている。


「これは……爆弾の破片か!」


 瑞は低い声で言った。


「やっぱり、爆殺だったんだなぁ」


 雪華は確信した。


「女官が犯人である可能性が高い。怒りの末衝動的に犯行に及んだか、あるいはもっと計画的だったのか……」


 二人は、女官の行方を兵に追跡させたファインプレーの数日後、都の外れのその場で女官は捕らえられると取り調べに対し、女官は犯行を否認し続けたが雪華の鋭い質問と、発見された証拠によって、徐々に白日の元に晒されていった。


「あなたは、被害者のお気に入りの香を交換して、すり替えていましたね?そのお香に、少しずつ火薬を混ぜていったんじゃないですか?そして、事件のあった日、最後のひと押しをした」


 雪華の言葉に、女官の顔がサッと青ざめ、沈黙の後、遂に口を開いた。


「そうです。わたしは、あの人に酷いことをされた。許せなかった」


 女官は、被害者からの長期的嫌がらせを告白、衝動的な犯行だったと主張したが計画的に火薬を準備していたことや犯行後、証拠を隠滅しようとしていたことは明らかだった。


 こうして、現代の知識と推理力、そして瑞の迅速な行動力によって後宮で起きた、風変わりな事件は解決へと導かれ皇帝にも喜ばれたのは、些細なこと。


「雪華、今回も君の洞察力には助けられた。感謝している」


 瑞は、全ての決着がついた後、優しく雪華に微笑んだ。


「ふふん、どういたしまして。でも、まだまだ油断大敵だよ?これからだって、色々な事件が起こるかもしれないんだから!」


 雪華はいたずらっぽく笑い返した二人の間には、暖かく心地よい信頼感が満ちていた。


「ああ。私は平和を考えるから君は別に思わなくていいからな。フリじゃないぞ?」


 妻の心の中はとっくにバレていた。

 風変わり夫婦は、それぞれの持ち味を活かし、これからも様々な難事件に立ち向かっていくことだろう。

あらすじの最後!と思った方も⭐︎の評価をしていただければ幸いです。

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