の~かん
ここまで述べて来た通り、大正と言う時代は否応なしに変化の時代であった。
未曾有の大戦争は若き帝国の「野望」に火を付ける事になり、後に続く禍根はこの時代に芽吹いたと言えるだろう。史実との違いは「野望」と書いて「せいよく」と読ませる事くらいである。
史実でもこの世界でも日本帝国は欧州の没落に乗じ拡大を目指していた。
「帝国主義とは増え続ける胃の腑の問題である」とはTHE帝国主義者セシルローズの言葉であるが、日本帝国の場合「帝国主義とは繁殖し続ける(放送禁止用語)の問題である」となる。
世界が大戦に狂奔する中、日本帝国の男子出生率が確実に落ち込み始めている事は、誰の目にも明らかとなっていた。
其処に追い打ちを掛けたのが大戦後半に世界中で流行した所謂スペイン風邪の流行である。日本帝国は史実と違い早い段階でこの病を本土に持ち込んでいた。
クラスター源は勿論の事、欧州派遣メスブタ軍団である。
当然であろう。あれだけ粘膜接触をしてヤバいのを持ち込んでいない方が可笑しいと言う物だ。
横須賀、呉、舞鶴、佐世保各鎮守府から発生したスペイン風邪は燎原の火の様に帝国全土を焼き尽くし、人々が次々と倒れていった、、、事になっている。
「なっている」とはその様に認識が改変されたと言う事だ。これまで蔓延しつつあった奇病に対し、認識の改変に抗いながら淫乱メスブタに変貌する事を嫌い、如何にか耐えて来た人間もスペイン風邪に偽装された例の病に一人残らず罹患したのだ。
ここで少し種明かしをしたい。例の病の正体、それは寄生生物である。この寄生生物は明確に意志を持ち、神経系を有する生物であればその神経中枢に寄生、其処を住処として筋繊維の一本一本にまで広がり、繁殖に適したボディ、荒々なかよしに耐える身体能力を併せ持つ変態に宿主を改変するのだ。
寄生生物の意志とは人間の言語に訳すと以下の様になる。
「俺好みに変えてやるぜエロ猿が!」
「こんな繁殖専用ボディで霊長を名乗るなんて各方面(珪素生命、電子生命)に失礼だよね!子孫を作ってこそだろ生命は!」
「オラ!改変!屈服!うぉ!エンドルフィンすっごい出る!」
「ワニ脳に集中しろ!メスブタを超えるんだよ!超メスブタだ!」
「この抵抗力!誉高い!でも(男として)死ね!前立腺、子宮に換えろ!死んで甦れ!クソスケベ!」
安心して身を任せて!ボクは大脳辺縁系ファックアップ特級の資格を持ってるんだ!」
「一生一緒だよ!(知的生命として)死ね!」
非常にお下品であるが以上の様な事を宣いながらこの生物たちは帝国臣民の脳と体をハック&ファックしている。
このお下劣寄生体が何処から来たかと言えば、例の遊星からであるが、其処にどの様な意味があるか、何故帝国だけが被害を受けているかは、これまた後に語るのでお待ち頂きたい。
さて以上の様に遊星からやってきた疫病は帝国を制圧した訳だが、彼ら(性別があれば)がやっている事はあくまで認識と肉体の改変であるから、実際の帝国国内の政治経済は依然のまま保存されている。
であるので、各所で齟齬が発生していた。既に述べているが帝国では格差の拡大と政情不安が徐々に侵攻しつつあり、史実と同じく大戦を契機とした好景気はこれに拍車を掛けている。
それは先に述べた通り男不足である。
これまで男子不足は新たに併合された朝鮮そして台湾からの積極的移民により補われていたのであるが、それも大戦後半の1918年には頭打ちになっていた。
いい加減外地にもバレたのである。開墾地譲渡、税金減免等の好待遇にいっちょ一旗とお父ちゃんたちは集団就職したきり帰らず、痺れを切らした母ちゃんが総督府に談判して漸く一時帰郷となったら、父ちゃんは内地でこさえた現地妻と連れ子を共にしてくる始末。
当然「あんた―!」となり修羅場である。だがどうした事か数日もすると家族は一家そろって内地に移住し音信普通。
食われたのである。母ちゃんはナメクジの様な百合百合攻撃と、今までと見違える様なお父ちゃんの技に陥落、その横で息子も娘もぬ~こぬ~こされ撃沈。
独身ともなれば老いた両親を置いてナシのツブテで外地からは生産人口が流失していく。朝鮮、台湾ではこれが大問題となり、暴動寸前となっている。
この問題も飢えたナメクジが「ひゃあ!もう我慢できねぇ!」と政府の同化政策に乗って外地に襲い掛かり、本格的な大陸への拡大政策が始まる1930年代になると消滅したが1910から20年代にかけては、外地からの移民は望み薄になっていた。
この様な事態に現在の日本帝国はなっているのである。そこで読者諸氏には考えて見て欲しい。
諸氏は渦中にある農村に生まれた貴重な男子である。周りには精通を今や遅しと牙を研ぐ獣の群れがひしめいている。無論老いも若きも充分に美女ばかりではあるが命の危機を感じないだろうか?
少なくとも夜這い整理券を配る事態の実家にいるよりは都市に逃げたくはならないだろうか?男社会である軍隊に志願したくはならないだろうか?
逃げたいだろう?皆そうなのだ。最近ではその様な男子を騙して遊郭に送る女衒(男衒?)もいるらしい。
だから皆逃げる、追いすがる女を金色夜叉し、群がる舞姫を殴り飛ばして男たちは都市と軍隊に逃げる。
そこもまた女体の地獄ではあるのだがね!
「なんだ貴様!そのへっぴり腰は!」
秋田の寒村(いまは熱帯のプランテーション)から甲種合格で逃げ出す事の出来た斎藤初年兵は二年兵殿から扱かれ、朦朧となっていた。
(なんで?なに?軍隊ってこうなの?)
朦朧として混乱もしていた。背中に当たる胸の感触、首筋に掛かる甘く荒い息、しなやかな二年兵殿の手がいけない所を刺激刺激でフォー。
この事態は認識改変と既存の徴兵制度の深刻な齟齬である。改変を受けていない徴兵制度は元男であろうと戸籍上の男で招集してしまっているのだ。
我慢できず斎藤初年兵はふにゃふにゃと崩れ落ちた。童貞であった斎藤には余りに刺激的な扱きであったのだ。
「そんな物か新兵!情けないぞ!」
ニンマリと笑う二年兵殿、眼鏡で短髪、健康的な肢体を持つ茶髪の女性は崩れ落ちた新兵を見やりにやりと笑う
「おい!新兵!今はこれ位にしてやる!今後、私様が軍隊の厳しさをしっかりしつけてやるからな!夜を楽しみにしてろ!行ってよし!」
配属三日目、軍隊は三日目まではお客さまと言うが、それは厳しくなると言う意味で、性欲処理の玩具にされると言う意味では無かった筈だ。
敬礼もそこそこに急いで逃げた斎藤は暴力的な快楽から解放されヘタリ込んで思った。軍袴の中が何故だか何でだか気持ち悪くて仕方がない。
(そうだ徴兵検査の時からそうだった、あの女医、痔の検査だと言って俺の尻を滅茶苦茶にしやがったがアイツも息が荒かった。あれ興奮してたのか)
帝国の徴兵検査で悪名高きガラス棒、それを尻の穴に突っ込まれた不快感を思い出し、ついでに紅潮していた女医の顔も思い出す斎藤初年兵。
(勘弁してれよ、、俺は軍隊に来たんだぞ、、淫売宿の牛太郎になりに来たんじゃねぇよ)
情けなくて泣が出てきそうだ、それに夜が怖くて震える。
「おいどうした、情けない顔して」
そんな震えている斎藤に声を掛けたのは同期の伊庭二等卒であった。斎藤はその顔を思わず見てため息を付いたあの二年兵が気を変えて自分を捕食しにきたと思ったのだ。
「なんだお前かよ、、、なんの用だ」
「ご挨拶だな。酒保にでも行こうか誘いに来たらあの二年兵に捕まってたろ?ヒデェ目にあったな貴様、まあ軍隊なんてこんなもんだ、慣れだよ慣れ」
「慣れってお前、、、、」
伊庭二等卒、肩口まで切られてはいるが流れる金髪とブルンと揺れる胸を持つ同期(祖父さんが小笠原の帰化人と言っていた)の言葉に言葉が詰まる。
(アレが慣れてたまるものか!お前は女だからそんな事いうが、、、女?何で女?軍隊に?あの二年兵も?アレ?)
猛烈に違和感を覚える。何か忘れてはいけない、子供の頃は常識であった筈の何かが欠けている気がする。
「本当にどうした?大丈夫か?」
急に思案顔になった斎藤に伊庭は心配そうに顔を近づけて来る、甘い香りが斎藤の鼻を突く、するとどうだろう、先ほどまで感じた疑問は何処かに行ってしまう。
「ああ大丈夫だ。酒保だったな俺も行くよ、その前に着替えてきて良いか?気持ち悪くて仕方がないんだ」
「スゲェ臭うもんなお前、早く下帯は換えた方が良い、そんな臭いさせてるとまたぞろ襲われるぞ」
斎藤は疑問を振り払うと伊庭に答えた。兎も角も下帯を換えたい。
「物干場に干してあるから取ってくる。酒保には先に行ってくれ」
「へぇ、、、物干場、、、俺も行くよ」
「付いて来なくて良いよ気持ち悪いな」
物干場と言った瞬間、伊庭の目が細くなった気がした。何故だか怖気が走り断りを入れるが、伊庭は腕を絡ませて斎藤を引っ張り起こし引きずっていく。
「そっちは遠回りだぞ、こっちが近道だ」
「お前、此処に来て日が浅いのに随分覚えが早いな」
「慣れだよこれも慣れ、お前も要領よくせにゃこの先辛いぞ」
伊庭は斎藤を引きずりながらそんな事を言う。
(要領ねぇ、俺には無理そうだ)
同期に引きずられながら斎藤二等兵は内心でため息を付いたのであった。
おまけ 三分後の世界
「おい、なんで鍵を閉めるんだ?なんで脱ぐ必要がある?」
「お前がそんな臭いさせてるのが悪いんだよ、、、言ったろ?襲って下さいって言ってる様な物だって、、、」
「止めろ!俺に近づくな!」
「覚悟決めろや!これが要領なんだよ!フシャー!」