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閑話 性癖破壊アマゾネス

 プロパガンダ。所謂所の政治宣伝の事であり、戦時に置いては


 「敵を憎め」「我に正義は有り」「あいつ等に負ければ酷い目にあうぞ」「もっと国債買えよ!」


 等をあらゆる媒体で喚き散らし、戦意の高揚と戦争遂行の意義を、視力が落ちるか耳タコになるまで国民に刷り込む行為でもある。勿論の事であるが敵に対しても


 「や~い!お前んとこの母ちゃんでべそ(一説にはテメェの母ちゃんと俺は寝たぞと言う意味らしい。そうなると子供がこれを言い合うとしたらかなり意味深になる。ショタおばか…ショタ受け原理主義者が怒り狂いそう)


 的な事を、挑発、厭戦感情・サボタージュ活動の誘発を企図して行われる。先の大戦では人類史上最大規模のプロパガンダ合戦が協商・連合間で行われ、敵の残虐性と非人道的な行為をあると無い事書き上げて戦意を煽り倒した。その実一番酷い目に会わせているのが兵士を塹壕に突撃させている当の国家である事が皮肉ではあるが…


 プロパガンダと言ってもその手法は様々である。ホワイトだったりブラックだったり、ネームをコーリングしたり、相手の宣伝にカウンターを行う必要もある。詳しく話すと長くなるので割愛するが、これらは先にも述べたように「我が方の正当性」「敵の残虐性」「戦争への協力」を強調し、遂行中の戦争を円滑ならしめる為に使われる物である。


 今次大戦に於いてもそれは変わらない。「残虐非道な敵に対し正義と友愛の心を持った我が国は、解放と少しの国家的利益の為に戦うから国民の皆さんは協力して下さい…しろ」と各国共に喚いている。


 そこに創意工夫はあってもプロパガンダとは本質的に単純な物なのだ。だがしかし、この世界ではその単純な筈のプロパガンダに必要以上に苦労し、日々担当各所が懊悩している国々が存在する。


 言わずもがな、どっかのどスケベ帝国の性である。今回は些か横道にそれ、アメリカ合衆国における対日プロパガンダの一部をご紹介しよう。






 「リテイク!」「リテイク!!」「リテイク!!!」「使えるかこんなもん!!!!」


 合衆国の対日プロパガンダを端的に表すならば以上の様に評す事ができるだろう。どの様に作っても各方面から文句が飛んで来るのだから仕方がないとは言え、担当部署もイラストレーターも不憫ではあった。




 それ程までに、日本帝国と、かの帝国を構成するアマゾネス(色々あってこの路線で行く事なった)の非道徳的な行動と彼女らの侵略を露骨に非難する事は難しかった。


 第一弾である


 「猿人襲来!女たちよ男を家に隠せ!取られるぞ!」


 は意味が通らないとの事でボツになった。だってそうだろう。戦地に赴く男を隠してどうするんだ?


 猿呼ばわりも不味い。確かにこれまで東アジアの人間を馬鹿に(若しくは本気で)する場合は猿が一般的であった。


 だがニッポニアオトコヒデリサルモドキが太平洋の向こうから生息域を拡大して来た事で事情は変わる。


 男と言う物は人種関係なくスケベェならOKな生き物なので


 「猿!猿!モンキー!黄色い出っ歯眼鏡のじゃーっぷっ!!!」


 と言っていた者程、実際の日本人を目にするとコロリと行くと統計が出ているからだ。


 日本人は何人にも似ていない。唯肌と髪が色々アレで、認めたくないのであるが、大方の男であればストライクされる容姿をしており、男色家(この時代ホモは罪で治療か刑罰の対象)すらもクラッと来てしまうニッチもカバーしている。


 黄色い猿と見聞きしていた者がこれに


 「かも~ん!イエスイエス!ふぁっくみ~!あいむゆあらば〜」


 とか言われると


 「猿でも良い!猿でも良いんだ!俺は猿と添い遂げる!」


 と叫んでジャーミン卿の一族となりコンゴの奥地に消える事は戦前から認識されていた。


 余談であるが、戦中戦後、合衆国に浸透した日本人工作員の摘発にFBIが不活発であったのは、FBI長官ジョン・エドガー・フーヴァーが「我がアドニス」と呼んでいた日本人女性を囲っていた事が原因であると彼の死後に判明している。日本人はどの様な悪球も場外に打ち出せるホームランメーカなのだ。


 さて、スタンダード(黄色、猿、出っ歯、眼鏡)はボツとなった。ではどうしたら良いのか?そこで出された第二弾もまたボツになる。これは正直に過ぎた事が原因である。


 「騙さるな!性病持ちだ!」


 色気を振りまく日本人(やや黄色がかった種々の美人)としな垂れかかられてデレデレしている男を指さす白人男性のポスター。


 彼の後ろからは消毒衣とガスマスクの軍人が駆け付けようとしており、日本人が履くスカートには「梅毒」「淋病」「クラミジア」と書いてある剛速球ストレートは男には概ね好評であったのだが、女性陣からは袋叩きに会う。


 曰く「子供に見せる気?」「女を売女扱いにするな!「何で敵を美人に描く!」「戦意高揚?これで?」


 女性陣?と読者諸氏は思われるだろう。女性の地位は黒人から数えて5番目位には低い時代(間には東洋、イタリア、アイルランド、先住民が入る)に何故に?と


 それは、これまで語って来た通り、日本帝国の変貌より合衆国の女性は様々な被害を受け、その度にエロを嫌悪する宗教勢力と共に激烈にどスケベ帝国と日本人に反発してきた。


 そして対日戦の間際、風紀引き締め運動(俗に言われるHなのは駄目!死刑!運動)は大きな政治的うねりにまでなり果せ、現大統領の勝利と対日強硬策を後押しする存在にまでなったからだ。


 便利な政治的道具でしかなかった女性たちは、一種の権威とまでなっていた。反どスケベがフェミニズム運動やウーマンリブ、宗教的熱情と言う一見水と油の様な関係をマヨネーズにしたのだ。


 時代の流れと人々の弛まぬ努力により成し遂げられる筈であった女性の権利獲得は、日本帝国と言う共通の敵の前を前にして歪に成し遂げられ、その権威は日本人とエロへの嫌悪を燃料に燃え上がっていた。


 なので女性たち「家庭の代表」「権利の擁護者」「子供の守りて」を自称する者共は何処にでも入り込んでいた(読者諸氏にはピンと来るであろうが、そこには赤い思想からの後押しも多分にあった)


 彼女らは組織化され、連携し、国と家庭をエロから守る為に戦うされ、口さがない者、彼女達の専横を憎む者から「これでは政治委員だ!」「ナチかよ!」の声は戦時故に無視された。


 その彼女らから「「「駄目!!!」」を喰らうと何もできない。男手は戦場に行くが血気盛んな若い女性は内地に留まり続けるのから押される押される。



 「では日本人をブスに描けば…」


 「白人女性に似た顔を不細工に描くつもりか!後が怖いぞ!俺は怖い!」


 「矢張りゴリラ的な何かにした方が分かりやすいのでは?…」


 「だからそれをすると実際に出くわした時に問題がでる!少なくとも人間の女と認識できる奴で頼む!」


 「では兵器を前に出して日本人は小さく…」


  「エロ光線を放つ兵器をか?相手の弾は食らったらイくんだぞ?色々五月蠅いんだよ昨今は」


 「もういっそ、日本人は描かないで勇壮なのだけにしません?」


 「あいつ等をやっつける軍隊を女性は求めてるの!卑怯者のジャップを非難しないでどうすのよ!」


 「ス…スプラッター…ホラーを撮っている所に依頼を…」


 「子供が見るでしょ!いい加減にして!」


 「どうしろって言うんだ!俺は降りるぞ!やってられるか!」


 制作側は遂に切れた。これは駄目アレは禁止では何も書けない。プロパガンダは端に相手悪く描けば良いだけでは駄目だ。そこにユーモアや皮肉が籠り、面白さが無ければ大衆は素直に感化されてくれない。


 「じゃあこれでどうだ!これなら文句はないだろ!」


 本採用になったのは、一連の流れ(あくまで各所で行われたやり取りを戯画化したものだが)で切れた一人のアニメーターが即興で書き上げた物、それこそが前述したアマゾネスジャパンである。


 糸目は譲れないとして、そこそこの美人に描かれた一人の女性。だが姿は異形であった。強調される腹筋、背筋、上腕二頭筋、パンツ(褌)から伸びる足は隆々として太かった。オッパイはデカく、その残虐性を強調する為、口にはゾロリとした牙が生えている。


 「ま、まあこれなら」「女?」「これを家のウサギと共演させるの?食われそうなんだけど」


 検閲も何とか通る。皆一向に決まらないキャラクターに困っており、男共はいい加減女の我儘に付き合っていられない気持ちだったのだ。


 かくてアマゾネスジャパンは典型的な日本人キャラとしてバリエーション豊かに各種プロパガンダに登場した。


 アニメ映画では世界一有名なネズミやアヒルにコテンパンにされ、猫とネズミの追いかけっこに巻き込まれ、世界一では無いが有名なアヒルと有名なウサギに揶揄われて笑いを取る役どころで出演。


 コミックの世界ではMrアメリカンウェイには世界征服そっちのけで惚れて振られ、蝙蝠男には集団で襲い掛かり某精神病院を満杯にし、怪奇物ではアパラチ山脈の奥深くでキャンパーを襲う逆レイパーとなり繁殖したのが警官隊と大決戦の後鎮圧された。


 ラジオでは凶暴、粗暴、乱暴なアマゾネスとして紹介され、如何にアメリカ国民が道徳的に優れているかを訴え、必要経費としての国債購入を宣伝する事に一役買った。


 勿論、街に張り出されるポスターにも、彼女らは大いに使用された事はいうまでも無い。


 「これとロマンスは出来ない」


 「食人種、ハワイに迫る!来るなら来い!」


 「騙されるな!怪物だ!」


 合衆国全土にそんなスローガンを掲げたポスターがあふれ、アマゾネス軍団を蹴散らす陸軍、ハワイ迫る丸木舟(日章旗付き)を迎撃する海軍、日本人工作員への警戒を示した物が合衆国の全土に配布され掲示された。



 その裏で、全米に吹き荒れる風紀引き締めの嵐の中、エロを禁止された少年たちが筋肉に魅了されフェチに目覚めている事はまだ知られては居ない事実であった。


 


 おまけ


 「これは正確では無い。私はもっとある、訂正するべき…胸が有れば良いの?そんなに脂肪の塊が大事?それは差別と言う物、矢張り英米はダメ、彼らは希少価値と言う物を知るべき」


 「言ってる事が矛盾してるぞ二等兵…それにな、ハッキリ言うがお前は貧通り越して無だからな、無乳宰相。禿頭と乳を等価交換したんだから諦めろよ」


 「アレは禿では無く剃っていただけ。私は昔からフサフサだった」


 「だから下の毛は剛毛なのか。毎日手入れしろよ。痛いんだよアレ」


 「莞爾…今日は随分と元気ね?お仕置きがそんなに欲しいの?」


 米国が行った対日プロパガンダの中で一番ダメージを負ったのは、メディア露出の多さ故、山盛りアマゾネス軍団の中にあって、一部部分が正確に描写されてしまった日本帝国宰相であった事は知られて居ない。

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