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異常性癖ガダルカナル

 以上の様に壁の裏にはメスブタの卵が一杯なのである。何時の日か米国は食器棚の裏を見てゾワっとする日もあるだろうが、今の所彼らはその事に気づかず、メスブタの突進を本土の目の前で止められた事に胸を撫で下ろしていた。


 無敵かと思えた南雲機動部隊は水底に消え、ついぞ半年と少し前、ハワイを痴女で満たし幾多の男たちに心的外傷を与えた空母艦載機群に大打撃を加えられのだからその安堵も一入と言えよう。


 確かに此方の被害も甚大ではあった。敵空母の最後の抵抗を受け「裏切りのスカイママ!ボーイズ2791名食って食って食いまくり!誰もママから逃れらない!」となった空母レキシントンは廃艦、乗員は深い傷を心と性癖に刻まれ、艦自体は無事であったがサラトガ、ヨークタウン、エンタープライズの艦載機群はほぼ全滅に近い状態になっている。


 上陸を敢行してきた日本軍の攻撃を一身に受ける事となったハワイの陸上部隊は更に悲惨で、空に於いては、決痴態(誤字ではない)として素人同然の兵士を攻撃にだした陸軍航空隊は、南国の空に尊厳を破壊された若人たち悲鳴を響かせ、機械に搾られる友軍を守らんと、盾として奮戦した海軍基地航空部隊も大部分が検閲を散らし、検閲と言う帰れぬ扉の向こうに旅立って行った。


 陸上もまた悲劇であった。日本軍は今回の上陸作戦を決戦と位置付けていたのであろう。鹵獲された英戦艦で機雷原を強行突破する前代未聞の行為でワイキキビーチに乗り込んできたのだ。ルーシー、カメハメハ要塞からの要塞砲の砲撃を受けビーチングから横倒しになった戦艦からは後から後からメスブタが湧き出し、そいつ等に続いて上陸してきた大発からは戦車を含む本格的な侵攻部隊が上陸してきたのである。


 それは狂気の光景であった。


 オアフ島要塞群の誇る16インチ砲が降り注ぐ中、メスブタは天高く吹き飛ばされ、海水と浜辺の砂とに攪拌され消えて行く(文字の通り)それでも彼女らは止まらない。戦意(犯る気)衰えないメスブタの一団がビーチ全体に構築された塹壕に突貫を始める。


 米軍とて開戦からこの数か月、チャイナで入手データと共に日本軍の攻撃パターンは研究していた。しかし研究と実戦では矢張り違う物である。瞬く間に戦場を覆うピンクの粒子、濛々たる甘い毒、「装面!」の声が間に合わず幾人かの男たちは「うっ…出ちゃった」の顔をしたのち「止まらねぇ!止まらねぇよ!誰ぁ!!うっ!うぅ~!!」と声を上げ悶絶していく。


 しめた!とばかりに塹壕に踊り込む何匹かのブタ。支那戦線から向こう、オルゴナイト粒子を毒ガス兼煙幕として使い速攻を掛けるのが皇軍の常套手段なのだ。


 これに米軍は火力を持って答えた。第一次大戦で異常発展した砲兵ドクトリンを受け継ぐ砲兵の最終防護射撃がビーチ全体に叩き込まれ、それすら逃れたメスブタには欧州戦線に送る分を減らしてまで配置されたブローニング重機と60mm 、81mm迫撃砲の嵐の如き鉄火がNOの方の枕を押し付ける。


 それでも、それほどまでしても一連の戦闘は悲劇であり痴撃であった。ホノルル市街に侵攻したメスブタの場所を弁えぬ仲良し行為、第二次真珠湾攻撃として名高い、燃える海軍司令部(誤射による物)を背景として行われた海兵の決死の抵抗。


 そこには戦線はなく、街中に出たメスブタは目につく者全てに跨り、男たちは涙を呑んで搾り取られる味方に注意してそれを撃ち、逃げ遅れた住民は次々にアへって行く。その激戦は一時ルーシー要塞を陥落寸前まで追い込み、16インチ砲を擁するウィルソン砲台が奪取されると言う事態にまで達していた。


 だが合衆国の男たちはそれに耐えきったのだ。我が物顔で航空支援を行っていた敵機は帰る家を失い、敵輸送部隊は蜘蛛の子を散らす様に逃げて行った(追撃は難しかったのが惜しいが、勇んで近寄り過ぎた駆逐艦シムスがアクメビーム(米軍公式名)で返り撃ちにあった為、控える他は無かった)


 確かに最後まで抵抗し、シレっと住民に混ざり、あらゆる場所に隠れ、いつの間にか一部兵士と仲良くして見逃がされる日本兵の掃討には手間が掛かった(多分まだ多数潜伏している。先日市内でウェイトレスとして働いていたのが検挙された)が勝利したのだ。




 米国はこの勝利をあらゆる媒体で大いに喧伝した。新聞、ラジオ、映画(映画監督ジョン・フォードの撮影した映像はかなり検閲が入った。乱交している所に銃弾を撃ち込む兵士たちは刺激的過ぎたのだ)を通して、日本帝国の米本土侵攻の野望を打ち砕いたと宣伝した。


  この勝利によって太平洋の戦いは新たな局面へと移行していく事になる。日本帝国は虎の子の正規空母を四隻と軽空母一隻、軍団規模の兵員を喪失し、対する米国も一千機以上の航空機を廃棄かオーバーホールする事になり、その乗員に至っては四割が二度と空を飛べない体(飛行機を見るだけで逃げ出すか突撃する様になった)にされてしまったのだ。陸兵に至ってはハワイ防衛に従軍した半数が長期の療養(腑抜けになったのを今一度訓練キャンプに放り込んで鍛え直す、家庭に戻して落ち着かせる、単純に精神病院で療養、グループセラピーetc)を」必要としたとしても、戦争は終わっていないのだ。


 アメリカ合衆国が反撃の狼煙を上げる上げる場所として選んだ場所、太平洋に浮かぶ島「ガダルカナル島」史実に置いては「餓島」と名付けられてしまった緑の地獄だ。




 1942年10月18日 ガダルカナル島ヘンダーソン飛行場


 「なーんて心配してだが、なんて事はない島だな。寧ろ居心地が良いわ、食い物も多いし、女は可愛い、これで戦争さえなきゃ最高だね。このマンゴーとか本当にウメェよな軍曹殿も一つどうです?」


 「だから拾い食いはするなと言われただろうが!腹壊すぞ!女もだ!現地民と余り関わるな!日本軍に協力してるかもしれんのだぞ!」


 「気楽で良いねぇ。此処に来る迄、死にかけた…いやファックされ掛けたか?ってのに。お前も見たろ海軍の連中の船、俺、まだ夢に見るよアレ」


 「嫌な事思い出させんなよ…男が喘いでいる所なんか見せられたんだぞ…俺は早く忘れたいんだ…」


 「食いながら話すな!汁が飛ぶだろうが!」


 温い夜風さえ満足に通らない急造のバンカー、その中で取り留めのない会話を交わす三人の米国人男性。彼らはガダルカナル島奪還の為に派遣された海兵隊員であった。


 彼らの会話にある通り、ここガダルカナル島は事前に説明された事とは全く様相の違う南洋の楽園であった。確かに暑い、立っていようと寝て居ようと汗は流れてくる所だ。


 だが海兵隊司令部が心配した様にマラリア含む猖獗の地である筈の島に蚊は一匹もおらず、種々の果物がそこ此処に生ってはうず高かく地面に実りを腐らせていた。


 その些か臭うのさえ気にならなければ確かにここは楽園の島であった。それゆえ、史実に置いては餓死者さえ出した初期の侵攻作戦に参加した彼ら海兵隊員もこうして気楽に会話を楽しむ余裕がある。


 確かにここに来る迄は些か処ではない波乱はあった。彼らの上陸を分かって居たかのようにソロモン海に於いて奇襲をしかけて来た日本海軍の重巡部隊によって護衛の艦隊は散々な目に会わされ


 固唾を飲んで、夜の海に光る怪光と、それに映し出された味方艦隊の船上機械姦ショーを見る事しかできなかった輸送船団の海兵隊員たちは生きた心地がしなかった物だ。


 だが上陸するとどうであろうか?


 ツラギ島に居た日本軍はさっさと隣接するフロリダ島奥地に逃げてしまい後は一切音沙汰が無く。島内を捜索してももぬけの殻。ガダルカナル島テナル川東岸に上陸した時も抵抗はなく、日本軍飛行場もあっさりと…と言うか一切の戦闘が無く占領出来てしまったのだ。


 ここに居た筈の日本軍はまるでジャングルに飲み込まれた様に消えてしまっていた。代わりにいたのが大量の現地民である(なんでも男手は日本軍が人夫として徴用していき、女子供だけだそうだ)。


 彼女らは拙い英語で上陸部隊を解放軍として歓迎してくれ、なにくれと世話(大半は約に立たないが)を焼いてくれさえする。


 大きな声では言えないが、上陸した部隊員の中には彼女らと肉体的な関係を結んでいる者さえいるらしく。報告を受けた師団長のヴァンデグリフト少将は「弛んどる!バカンスに来たのではないぞ!」と怒り心頭らしい。


 だからと言って豊富な食糧、海風に当たっていればまあまあ過ごし易い気候、美しい女たちと男がダルンダルンになる要素が多い現状では、彼ら海兵隊員と言えど気が緩んでしまうのも無理はないだろう。


 「ちっ!もう無くなった。軍曹!そこいらに行ってなんか捥いできて良いですか?なにもやる事ないと口寂しくて」


 「お前な…いい加減にしないと報告するぞ。今朝も現地民相手にタバコを酒と交換して営倉入りになった馬鹿がいるのを見ただろう」


 「良いじゃないですか、ジャップは当に逃げましたよ。俺たちはお役御免!次の船が来たら陸軍の連中と交代するんですから、ね!良いでしょ?なあトミーお前の分も取って来てやるからな?おい?トミー?」

 そのぶっ弛んでいる海兵隊員の代表であるトナー一等兵 が同僚であるトーマス一等兵 を振り返った時、先ほどまで一緒にダラダラと会話していた彼は消えていた。


 「おい!どこいった?ション便か?お前も人の事言えないな、ねぇ軍曹?」


 (人にクドクドと言っといてなに勝手に)


 そう思い、彼は上長であるビアス軍曹を振り返るが其処にあったのは、薄暗い密林の闇だけがあった。


  トナー一等兵 は毛が逆立つにを実感し、次いで血の気が引くと言う言葉を理解した。咄嗟にバンカー内に設置された有線の通信機の受話器を取ろうとして…


  「シ~。良い子だから静かにね♡」


 闇中にあっても分かる白く細い手が彼の口元にそっと翳され、優し気な声が耳朶に響いた。声の主、日本陸軍一木支隊のメスブタは壊れ物を扱う様に、口を塞いでいる反対の腕でトナー一等兵の頸動脈を締め上げる。


 僅かな痙攣の後、彼はもたれ掛かる様にメスブタの腕の中に倒れた。静かに、空く迄静かにガダルカナル島での戦いが始まったのだった。

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