世にも奇妙なドスケベの世界
此処までご覧頂き、読者諸氏の多数の方々が首を傾げているであろう事は筆者にも理解出来る。
アレだけ勝った勝ったと大本営し、メスブタ雪崩れ込み戦法の有利を語って置いて、ご都合に過ぎるとお思いだろう。
野郎の尻ばっか攻めてんんゃねえ!ホモ野郎!のお叱りの声も甘んじて受け入れよう。なのだが言い訳はさせて欲しい。
いつですね筆者は今次大戦に日本が勝つと言いましたか?書いて無いでしょ?そう言う事ですよ!負けるの!日本帝国は負けま〜す!仕方ない事で〜す。
理由はある。
この話の冒頭、「星」はこの世界の過去と未来を観測したと語った事を覚えておいでであろうか?
そこで考えて欲しい。如何な超常の科学とトンチキの、塊と言えど、一つの世界の無限の可能性を全て観測する事は可能性かと言う事だ。
蝶の羽が遠い大陸で舞っただけで世界の可能性は変化すると言う、所謂バタフライ何ちゃらと言う奴がある。
そんな事が実際にあるならば人類の発生する世界の方が少ないのでは無いだろうか?
地球の軌道が少しズレたら?6500万年前隕石落下のタイミングが遅かったら?イクチオステガ君の気が変わって海に戻る事にしていたら人類は居ないだろう。
だが「星」は確かにこの世界の「星」が余計な事をしなかった未来を観測出来たのだ。其れは何故か?
世界にはかくあるべしと言う何らかの力、「歴史の修正力」が存在するのだ。それも人類が、必ず発生すると言う強いのが。
だから日本帝国は負けてしまう。恐らく生半可な介入では駄目なのだ。歴史の修正力を覆すにはそれ相応のエネルギーが必要なのだろう。
ケンブレビエハ火山が噴火して大津波発生、米国東海岸が全滅する。
チョビ髭が恐竜の血を飲んで魔術パワーでソ連倒し、魔道帝国爆誕。
ソ連がタイムマシンを開発して米国の核開発を妨害、余波でニッポンポーンとか叫びながら全世界に宣戦を布告する謎帝国が海の向こうからやって来る。
経済と食糧供給壊滅に恐怖する、お目目ガンギマリの未来日本が来襲。
太陽の黒点拡大と隕石落下とタンボラ山噴火が一斉に起こってスノーボールアース化等が必要であろう事は確かだ。
最後のは人類が滅んでしまうかもしれないが、これくらいのトンチキが無ければ歴史は修正される。いや最後でさえ、草津辺りに構築された新東京とイエローストーンに作られたニューワシントン間で石油と石炭を巡って元気に戦争するかも知れない。
それ程に歴史の流れを修正する力は強力なのだ。生半可な介入では途中の流れは変えられたとしても結局は元にあるべき場所に歴史は修正されるだろう。
これを可能とする力を持つ存在は、イニシャルしか分かっていない時間犯罪者通称D・Sや彼を信望する時間犯罪組織等ごく少数に限られているし、昨今の世間の風潮でその活動も下火である。
以上の様に歴史の修正力に抗い未来を変える事は大変に難しい行為なのだ。読者諸氏にはそこの所を理解して頂きたい。
さて、それを踏まえた上で「星」とその代理人であるかの方。地球を恥丘に変える積りの神と臥薪嘗胆、一転攻勢を画策する現人神は如何なる事を考えておいでであり、その手法は何か、これまで引き延ばしに引き延ばしてきたメスブタ消失現象の謎と共にその一部を紹介していこうではないか。
1942年8月20日。ハワイ? オアフ島?
淫靡至極。その空間を表すのにはその言葉しかなかった。照り付ける太陽、白い砂浜、なんか薄ピンク色でトロリとした海、何とも言えない甘い香りに満たされた常夏の浜辺で男女の営みの声が交じっていた。
そこは検閲ヌーディストビーチ。本来ヌーディストビーチはスケベェな事を考えちゃったら駄目な場所であるが、そんな事はお構いなしにこいつ等は仲良し行為に励んでいた。
全部検閲
なのであぶれた女どもは男を取り合い醜い争いをそこかしこで繰り広げている。あらゆる種類の女たち、赤白黄色、黒くてこげ茶な女たちは男を取り合いバトルしていた。
勿論全裸である。
野生であった。其処には剥き出しの野生と生命が溢れていた。
と其処に何隻かの漁船が汽笛を上げながら入港して来る。そしてビーチの横に作られた粗末な桟橋に止まった漁船から次々に項垂れた男たちが荷揚げされていく。
男たちの姿には共通性があった。飛行服、セーラー服、士官服、分かる者が見れば米国陸海軍の物と一目でわかる制服を身に付けた男たちだ。
その男たちにそれまで争っていた女たち、日本帝国第17軍に所属していたメスブタと空母加賀、赤城、飛龍、蒼龍、祥鳳 そして鹵獲の屈辱を受けた上、無謀な作戦に投入され現在はワイキキビーチに屍を晒しているプリンスオブウェールズ、レパルス、ウォースパイトの乗員が殺到して行く。
その全てが今回のハワイ攻略作戦の参加者であり、ホンの数日前にあった大海戦と上陸作戦の大失敗によって水か草タイプに変わった筈の連中だ。
「男~!」「アタシのよ~!!」「この数か月日照ってたんだ!俺によこせ!」「邪魔よ!四航戦の分際で!」「全滅した癖に粋がるな!焼き鳥!」「お腹(子宮)空きました!」「どきなさいオジャマムシ共!その方たちは赤城の旦那様になるのです!」「総員!分隊長!に続け~!!」
幽霊の類ではない。幽霊はあの様に髪を引っ張っりあって争ったり、化粧が落ちた性で曼荼羅になった顔で殴り合ってはいない。
では何か?それこそが日本帝国のそして「星」とかの方の秘密であり、必負の歴史を修正不可能になるまで面白おかしくする方法なのだ。
「滅茶苦茶ですな…」
「そう見えるかね?」
メスブタたちがパコったりボコったりしているビーチから少し離れた場所。ヤシの木で作られた東屋に陣取った二人の人物が争うメスブタを遠目にしながら会話をしていた。
一人は髭を蓄えた小柄で品の良い人物、今では少なくなった日本人の男性で、もう一人は幾分か疲れた顔をした白人の男性であった。言って置くのだが全裸ではない。
日本人男性の方はアロハシャツを慣れた感じで着こなしており、白人男性の方は最後の抵抗として、もう何度クリーニングに出したか分からない米海軍士官制服を着ている。
彼らはヤシの葉で覆われた屋根が作り出す影の下、デッキチェアに腰かけ、かき氷片手を片手にしていた。因みにシロップとして、日本人の方は妻から何度も止めろと言われているのに一向に止めないブランデーを掛け、白人…米海軍軍人の方はブルーハワイである。
「はい。誰も死なない戦場、我が方の必死さをあざ笑うこの結果。今の小官の立場。全てがカオスですよ本当に」
「それで良いのだよ、戦争等と言う物は。朕が経験した二つの戦争は酷い物でしかなかった。臣民から搾り取り、その屍を山と築いて争う。確かに勝った。だが死んだ者は帰ってこず、二度と癒えない傷を負った者に報いてもやれなかった。だからこれで良いと思うよ。彼女たちは、その…なんだな…少し…やり過ぎだと思はない事もないが」
「人の生き死にに付いては異論はありません。戦争等やらないに越した事は無いでしょう。ですが私の軍人としての部分、何より男としての部分が納得できないのです。我々の努力…殺しに胸を張る事は出来ないかもしれませんが…は何だったのだろうかと思うのです。彼女たちの行動は、合衆国の苦難の歴史、もっと言えば人類の歴史を踏みにじっているのではないかとね。もっともそれは感情的な事ではありますが」
「そう思うのも無理は無いと思う。朕とてあの晩、重臣から朕の国と世界がどスケベに変わると言われた時は、まさしく天が落ちて来た気分だった。だがまあ、この世界を見た前、存外に悪く無いと思わんかね?世界がこう変わるのであれば、それはそれで素晴らしいのかも知れないよ」
「貴国の支配の元で、ですか?」
「それは役得と言う物だ。合衆国にも世界にも諦めて貰うしかない。いずれにしろ今次大戦を起点として、世界は変わるのだよ。この素晴らしき世界にね」
「それは一方的に搾取されない側の言葉かと思うのですが?小官が此処に送り込まれた原因は、貴国の提督たちに搾られた結果の心不全と診断されたのですよ」
「戦死と判断されて良かったではないか。楽園での二度目の生を謳歌したまえ提督」
「酷い言い分ですな。流石は王侯と言った所で?民主主義国家に生まれました小官には理解しかねます」
「誉め言葉と受け取って置こう。そうなのだよ王に生まれると言う事は生まれながら他者を踏みつけると言う事なのだ。無論、そこには責任も伴う」
「その割には随分と気楽にされておられますな。小官には閣下のご生活は責任から程遠いのではないかと察せられるのですが?」
「言うね提督。此方に来て長いからだよ。それまではそれ相応に謹厳実直を旨として生きて来た積りなのだ。それに責任の部分は孫に押し付…任せてある。今は隠居の身と言う奴だ。君も朕を見習って気楽にした前よ。この世界「星」が作りだした世界の裏側には現世の憂いは無い」
「Dimension Sex(どスケベ次元)…でしたか、何ともそのままなネーミングですな」
「「星」曰くポケット次元だか3・5次元空間だそうだが、学者ではない朕には詳しくは分かり兼ねるな。だがこの世界が現世に取って変わるのは既定事項だそうだ、孫の方が言うにはな。それには貴国との戦争がまだしばらくは必要なようだがね」
「我が国の苦難はまだ続くのですね」
「安心したまえ、どうあっても貴国は勝つよ。現世ではな」
「勝った所で全ては貴国、いえ、「星」とやらの手の上ですか?」
「そこは孫の活躍に期待だな。しかし不幸な子だ、帝国の運命どころか、世界の命運を肩に背負ってしまったのだから」
そこまで話すと二人の男、明治大帝と呼ばれた男性と前米太平洋艦隊司令長官ハズバンド・キンメル、今や布哇捕虜収容所所長まで零落した男は、しばし無言で溶けかけたかき氷を口に運ぶのであった。
ここは大日本帝国布哇県。「星」の端末の一人である明治大帝、現全太平洋方面総督の地位にあるお方の力の元、メスブタたちが支配する常夏の影の国である。