シナリオ6 ブタ! ブタ! ブタ!
「行ったか、、、、」
近衛が場を辞してたっぷり1分、沈黙の降りていた御前会議の場で初めに口を開いたのは、かの方であった。先の謝罪にもある様に、その言葉には万感の思いがやどっている。
だがそんな思いを共有できる程、他の連中は繊細ではない。
「「行った?」」
「「もう良い?」」
「「せ~の!」」
「「「ば~か!帰ってくんな!」」
「お笑い種だったぜ、お前の行動はよ~!地獄に堕ちなう~め~ん!
「陛下に対してなれなれしいのよ!上奏は5分までって決めてるでしょ!ルールは如何したのよ!ルールは!ぶっちすんな買女(ばいた。男を買いあさる女の意)!」
「陸軍はテメェの玩具じゃないんだよ!陛下の玩具なの!」
「一・二年しか暴れられないんですの?マジで?じゃねぇよ!首相ならそれ位把握してろ!テメェの間抜け面で、山本君が笑っちゃいそうになってただろ!」
かの方のご臨席を仰いでいる場であるにも関わらず、自分達の首相に罵声と下品なハンドサインをビシィッと送る人間未満なメスブタの群れ
「毛ちゃん奪還部隊の用意は良い?共匪コレクションを暴くのよ!」
「首相公邸地下だ!ドイツ顧問団も其処にいる!フォルケハウゼンを探し出せ!」
「私邸もだ!特高で足りんなら、憲兵を動員しろ!囲っている右翼崩れは重武装な筈だ!先制射撃を許可する!」
「首相には海軍から深山を提供するわ!乗り込んだら一斉摘発開始!給油地には無線封鎖を徹底せさるから心配無用よ!独り占めは駄目!死刑!」
「愛人は没収です!没収!国権の乱用は許される事ではない!権力の雌犬を打破せよ!」
そして間髪入れず、近衛のスキャンダルを暴く為に指示を飛ばすブタ共。図った事とは言え、日米開戦を回避する為、決死の覚悟を固めて旅立つ者に全力で中指を立てていくスタイルである。
もうちょっとこう、手心や、自分達の行いに対する悔恨とか慙愧の念とかあっても良いのではないだろうか?
これが日本帝国の縮図、これが背負うべき業、醜い、余りに醜く程度の低い、頭にフェロモン袋が詰まっている癖に能力だけはある臣下達。
かの方は一人、遠くを見られたり、在りし日の恩師(現在学習院院長、二児の男子の母)の言葉を思い返されたり、一緒に思い出の中から飛び出して来た、亡き()先帝(近ごろとみに緩くなってこられ、ちょっと殴りたいかなぁと言う思いがあらせられる)を脳内の奥に追いやったり、一時現実から逃避される他は無かった。
「宜しいですか陛下?」
その現実逃避も、何時の間にやら、今までの喧騒が嘘の様に、皆威儀を正し、近衛に見せられなかった各種資料を整えた会議の場、そこで一人席から立つ、次期首相内定の東条の声によって遮られた。
そして、その声に現実に帰還されたかの方が見たのは、褒めて褒めての期待の視線であった。
皆無言である。だがその視線は如実に語っていた。
「「私たち頑張ります陛下()()()()()()()」
それは確かに信頼と敬愛、それと瞳の奥に蠢く性欲の濁りの視線であった(何だか頑張りますの後ろの呼称が陛下以外色々ある気がする。陛下陛下であり、先生でも医師でもないし、元帥であっても提督でも指揮官でも無く、ガーター騎士団員ではあるが騎士でも無い筈だが?)
(止める事も、始める事も出来ず、瓦礫と死体を積み上げた先にある終わりの決断しか出来なかった、あるべき己よりはましなのだろう)
キラキラの中にあるドロリとした視線、それを受けるかの人は思考し
「あっそう。では始めて」
敢えて何時もの口癖を発し、近衛首相の焦燥の裏で続けられていた戦争計画、その詰の協議の開始を許可された。
(そうだな。今の俺は力ない傍観者ではない。悪徳の当事者で、とっくの昔にアジアに災禍を撒き散らしている国家の主であり、世界に災禍を齎す魔王なのだ)
許可が発せられて僅か30秒、占領統治と戦利品(男)分配で、秒速で威儀を投げ飛ばし、掴み合いと殴り合いを始める陸海官のブタ共を絞めるべく、暗黒のパゥアーを右手に込められ、かの人はまた思った。
であるから今この状況は既定事項であった。
1941年12月8日 ニイタカヤマにメスブタは突撃を始め、米太平洋艦隊母港ハワイ、パールハーバーに、日本帝国海軍所属の猛禽の群れが襲い掛かるのは決まった事なのだ。
1941年12月8日 ハワイ
耳を劈く爆音に空を見上げ、その音源の主が放った、250キロ爆弾の第一撃を受けたのは、7時55分、フォード島ウィーラー陸軍飛行場の兵たちであった。
(朝早くから演習?)(そんな話聞いてないぞ?)(うるせぇ)
正常化バイアスと言う物であろう。兵士たちは、空を飛ぶ機械の鳥が敵機であるとは夢にも思わなかった。
その鳥、99式艦上爆撃機が急降下を始め、何か黒いものを落としてくるまで。
「あの馬鹿たちの機体番号を確認しろ。安全ルール違反だ、報告せにゃならん。これだから飛行機乗りと言う奴は」
そう言った海軍航空基地作戦士官のローガン・ラムジー中佐は、その何か黒い物、これまで中国大陸で行われた、悍ましい数々の戦訓によって生まれた250キロの精製濃縮されたオルゴナイト製兵器の洗礼を受けた合衆国海軍の最初の人間たちの一人であった。
爆音
悲鳴
格納庫の方から立ち上るどピンクの噴煙
「確認する必要はない!日本軍だ!気でも違ったかクソ女共!」
中佐はそう叫び、無線室に向かって走った。痴女の率いる玩具の軍隊であろうと、爆弾を投下して来るならば、それは脅威で、敵襲である。一刻も早く、それを知らせなければならない。
無線室に駆け込んだ中佐は、その血相に戸惑う当番兵を捕まえると叫ぶ様に命じた。
「日本軍の航空機の攻撃だ!平文で良い!さっさと打て!」
「えっ?どんなですか?」
中佐の剣幕と唐突な命令に驚く当番兵が聞き返す。
「馬鹿も、、すまん。airraid on pearlharbor x this is not drill(真珠湾攻撃さる、これは演習ではない)だ。早くしてくれ」
「はい!でっですが攻撃?日本軍が?さっきから騒がしいですが?」
「君も混乱しているだろうがアレは事故なんかじゃない攻撃だ。すまなかったな私も慌てすぎた。だが急いでくれ。真珠湾攻撃さ、、、、なんだ、これは!」
慌てる余り打電する内容も言わずに急げ、と言った中佐は聞き返す当番兵の慌てぶりを見て、冷静さを取り戻し、打電内容を口に出し、まだ混乱している当番兵に再度命令しようとした。
だが命令は途中までしか発せられなず、この世界では、史上もっとも有名なものの一つである電報は打電される事はなかった。
中佐の足元に絡みつく真っピンクの煙、気づけば無線室の開け放たれた扉から濛々と煙が入って来るではないか。
「「火事だ!」」
何処かでそんな声も聞こえる。日本軍の爆弾がこの施設に着弾し延焼を起こしたのであろうか?
いや違う。
「ほわぁああ!!!」
火事だの声に思わず入口の方見てしまった見た中佐は当番兵へ振り返る。そこで彼が見たのは驚くべき光景であった。
当番兵が打電しようとしていた電信機が、細く細かい何かを吐き出し彼の体に巻き付いている。植物の蔓とも違う人工的な何かは彼の手から腕を伝い、体にそして下腹部にに伸びて行く。
助けを求め、手を伸ばした彼を救うべく中佐は当番兵に駆け寄ろうとしするが間に合わない、哀れな兵は次々と伸びて来る人工の蔓に巻き取られ、繭の如き姿へと変わっていく
「おほっ♡おほっほぉ♡」
そして聞こえるおほボイスと漂うイカの匂い。
その光景を見せられた、ローガン・ラムジー中佐は先ほどとは全く違う、異次元の混乱に包まれる。
理解できない。
頭が真っ白になる。
俺はに何を見せられているのだ。
何分、いや何十秒か中佐の頭と体は凍り付き、その間も無線室には凌辱され、あり得ざる機械の快楽に翻弄される男の声が響く。
中佐が正気を取り戻したのは、先ほどまで響いていたエンジンの爆音と航空爆弾の爆発音ではなく、小銃、合衆国で正式採用されている、スプリングフィールドM1903の発砲音であった。
聞き間違える筈もない。
確かにそして今もその音は続き、また拳銃による物であろう音と争う音さえ聞こえる。
(空挺?日本軍が降下してきた?)
なんと言う事だろう!敵は爆撃に続きこの基地を占拠しにきたのだ。
可哀そうではあるが今は緊急事態、取り合えず当番兵は死んでいなさそうであるので、中佐は武器庫に向かうべく踵を返した走り出す。
無線室から飛び出し、武器庫へ走る中佐はまたもや驚くしかない場景を目にする事になる。
ピンクの煙の中、四つ足の獣が、次々と逃げ惑い、また、か弱い抵抗をする兵士たちを喰らっている。
性的に。
「「オウッ!YES!YES!シーハーシーハ!」」
「「カモン!カモン!」」
「「オーマイガー!ソーグッド!!!」」
スッゲェキモイ動きでシャカシャカとピンクの煙の下を動き回る獣共は、次々と兵士たちに飛び掛かり食らい付いて行く。
今度こそ中佐はデケェ声を上げた。
上げる事を我慢できなかった。
「My god!what the fuck!」
士官にあるまじき言葉なれどそう言うしかない、我慢の限界、精神の限界であった。
アッと思い口を手で塞いだが、後の祭り、その声を聴き付けた獣がシャー!!ニャー!ギニャー!と雌叫びを上げ迫りくる。最早武器処ではない。
中佐は無我夢中で外に飛び出した。
そしてそれがローガン・ラムジー中佐の戦争の終わりであった。
まだ始まってもいない気がするが終わりであった。
女、女、女、無数の女が虚ろな目で基地を彷徨っている。
日本軍ではない。女たちは、ほんの少し前まで、合衆国陸海軍の兵士であった証の、軍服や作業着を身に纏っている。
纏っているとは言い難いかもしれない。
彼女らの纏う服は内側から弾ける様に破れていた。それはまるでいや確かに突如オッパイとお尻がドカーンして弾けたのである。中にはストーンしてペターンした為、服を引きづっている者もいるが、周囲を見て不満気にしている。
その彼女たちが飛び出してきた中佐を見た。
ユラリ
腕が前に差し出される。
「「「お・と・こ?男?おとこーーーーーーーーーーーーーー!!!」」
その喉から咆哮が迸る。
「寄るな!なんだお前たち!来るな!何をする気だ!止めろ!いやーーーーーーーーーーー!」
現在8時15分 まだ痴劇は始まったばかりである。




