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ひ~としょっく

 言われ無き(性)暴力、それは1941年7月28日に行われた南部仏印への進駐を持って始まった。


 既に北部仏印へ進駐すると言う暴挙を行っていた帝国は、インドシナ全土をその支配下に置こうと行動を開始したのだ。


 この突然の行動は、日本帝国の膨張を何とか抑え込もうと苦闘していた各国にとって、寝耳に水の出来事であったと言える。


 進駐を行う必要などない筈なのだ。北部仏印への進駐理由である、インドシナ経由の援蒋ルートは、中国沿岸を帝国が抑えた時点で目的を達しており、態々南部まで兵力を派遣する必要は軍事的意味を持ちえない。


 東南アジア全体に攻め込む積りでもない限りは。


 これは、あからさまな挑発行為であり、東南アジアに利権を持つ全ての植民地宗主国にとり、日本帝国が侵略の矛先を向けて来たと考えざるを得ない事態であった。


 この行為にアメリカ合衆国は激怒する事となる。


 痴女どもは際限なく増えるつもりなのだ。コリアを犯し、マンチュリアを襲い、チャイナを組み敷くばかりではなく、遂にアジア全体の対して穢れた性欲を隠せなくなったのだと。


 この世界でもまた日本帝国は米国の逆鱗に触れ、戻る事の出来ない道を選択したのである。


 では、当の日本帝国は何を考えてこの様な行為を行ったのであろうか?と言うと、実の所かなり複雑な事になっていた。


 何が複雑がと言えば、軍と政府、いや政府内でも意見がバラバラになったいたからだ。


 軍官民で意見が纏まっていないと言う何時もの奴である。


 表面上は向かう所敵なしの第二次近衛政権の考え、と言うより、近衛本人の思考では、この行動は蒋介石に次、いつかはヤりたい、今度首脳会議でもあれば押し倒して見ようかしらん?と考えているチョビ髭を真似した政治的賭けだ。


 彼女は別に米国との戦争を望んではいないのである。帝国には余裕がある、だからこそ仏印を完全に勢力下に置く事で、撤退を条件に帝国に対する男子輸出を更に拡大させようと、今回の南部仏印への進駐にGOサインを出したのである。


 彼女から見て米英は弱腰だ。


 英国はドイツに大陸から叩き出されて本土に閉塞、長くは持たないであろう。米国も米国で中国に支援はしても、国内の強い反戦感情から極東に派兵する事など不可能で有る事は明らかである。


 これがもし、過去の帝国の様に資源に余裕が無いのであれば、経済的に締め上げてもこれ様、もしかしたら、石油の不足により自分達は暴発したかもしれない。


 だが


 今の帝国は如何であろうか?


 鉄鋼、アルミ、ゴム、食糧資源、何より石油を自給可能である。


  此方は腰を据えて、博打を挑む事ができるのだ。海の向こうの戦争で四苦八苦する相手は必ず折れる。何、例え勝てなくてもそれで良い、仏印から撤兵するだけだ。


 支那大陸が完全に収まってからじっくり料理しても遅くはない。


 「米英に喧嘩を仕掛ける余裕などございませんわ!この賭けで米英の連携を絶つ!英国が積極的輸出に踏み切れば、米国との仲は拗れる!そこに挟まる我が帝国!再び燃え上がる二人!独逸にボコにされた英国は我が国にメロメロ!そこで仲介者として出張る私!英独の仲を取り持つ私!英独は不幸せなキスをして戦争終了!我が国は欧州に足掛かりを得る!これは勝ちましたわね!お風呂入って来ます。誰か!周ちゃんを用意して下さいまし、毛ちゃんは干からびて、使い物になりませんわよ!」



 近衛は勝利を確信し、希望の未来に夢を見ながら周ちゃんとプレイに興じていた。


 「ゴム無しでしたい?もう!分かりましたわぁ、店長には内緒ですわよ?」


 「助け、、、同志、、、助け、、、」


 「ほらぁ、頑張れ♡頑張れ♡」





 「との事です」


 「夢を見過ぎだ。英国が独と仲良く手を繋ぐ?ない、全くそれは無い。チャーチルが引退でもしない限りはそれは無いな」


 連合艦隊司令長官に再就任した女は、首席参謀である女の報告に答え、その整った柳眉を険しくした。一国家の指導者がそんな夢を見てどうすると言ってやりたい。


 「だが、それで良いのかもな。夢を見てくれていた方が我々もやり易い」


 一度は心中で怒りを覚えた物の、これより自分達が国家国民にしでかす事、その犠牲となる近衛に憐れみを感じて、連合艦隊司令長官山本五十六(名前変更なし)はそう言葉を続け、周囲を見回した。


 1941年残暑、ここ、連合艦隊旗艦陸奥の長官室に集まっているのは、山本始め、悪巧みの協力者であり、盛大な花火を打ち上げようとする姦婦共である。


 そして、そのデカパイ率は凄かった。


 この場の主である山本五十六、腰まで届く黒髪と筋肉質な体を持つ彼女は、B88の一般的には巨乳の部類であり、先ほど一連の報告を終えた独特の匂いのする女、連合艦隊首席参謀、黒島亀子も日の当たってない体に不釣り合いな程の物をぶら下げていたが、その他の人物たちに至っては凶器的な乳の持ち主たちである。


 何か部屋が暑い。とある新兵器の登場による恩恵を受けた筈の長官室であるが、狭く感じられる程である。スマートが売りの海軍であるが、ここにはその言葉は何処にも見当たらない。


 「そうですな。既に原案は出来ております。ここで要らん掣肘をされても困ると言う物です」


 山本に視線に答える様に発言した者がいる。大西瀧代、第十一航空艦隊参謀長である。彼女もまたデカい、言葉を発する度にユサッユサッとしてしていた。


 そしてまた発言には気負いと言う物がなかった。


 読者諸氏に置いては連合艦隊、山本五十六、1941年と来ればこの集まりが何であるか、ナニを計画しに集まっているかは説明せずともお分かりであろうが、この気負いが無いと言う所に、疑問が浮かぶであろう事は浅学なる筆者にも予想できる。


 であるから先に答えを言ってしまおう。


 「しかし、本当に私で良いのですか?私より適任がいるかと」


 「良いんだよ、南雲さん。気楽に行こう、気楽に。パァ~ッとやろうパァ~ッと、どうせ勝てないのだ。ひと暴れして道ずれを増やしてくれれば良い」


 「わ~お、ぶっちゃけますね長官」


 「アレを聞かされれば誰だってそうなる」


 大西の発言に続いて発言した女、南雲忠一(心に改名)への、これまで保って威厳と少々キツ目の顔の作りを崩した山本の返答がその答えだ。


 彼女たちもまた、あった筈の未来を幾分か知らされているのだ。そしてプラスアルファとして、山本の発言ではないが、この先の大イベントを気楽にやれる何かを知らされている。


 「ぷっ、駄目ですよ長官!真面目にしてたのに!南雲さんも引きずられちゃ駄目ですってば」


 「だがねぇ無理だよ宇垣君!黒島君の恰好見てくれたまえよ!コレ笑わせにきてるじゃん!何で皆平気な顔してるの?褌一丁で真面目くさって報告してるんだよ?」


 「もう、山口さん!黙ってないで何か言って下さいよ!会議になりませんよコレ」


 「うん、アレだな。長官、酒入れましょう酒。馬鹿な事をやるんだ、こっちも馬鹿にならないと」


 「小沢さん、そこの棚に長官がとら屋の羊羹隠してるから出して」


 「こらぁ!それは私のとっておきだぞ!」


 「黒島!風呂入って来い風呂!さっきからお香とカレーの混ざったスゲェ臭いしてるんだよお前!なに?着替えがない?だから褌だったの?」


 であるから気楽で和気あいあいとしている。


 投げ槍とも言えるが。


 だがこれで読者諸氏にも分かったのではないだろうか?


 海軍でこの様である。


 日本帝国の政治と軍事を司る者たちは、真反対の事を考えているのだ。


 史実も似たようなもんと言えばそれまでだが、これまでこの話をご覧頂いている読者諸氏には、違いがお分かりになるだろう。


 軍はやる気である。


 史実の様に、誰か止めてくれないかなぁ~、負けますって言い出し難いなぁ~、責任取りたく無いな~、と言った空気は軍には無いのである。


 陸海共にやる気。


 特に恨みは無いし、殴る必要も無い相手を殴り付けるつもり満々。


 それで大敗亡国ダブルピースを決めても、それはそれでと考えている。


 何故か?この国の主権者がそれを求めているからだ。


 日本帝国は誰のものだ?帝国陸海軍の最高司令官は誰だ?


 その方が責任を取るとお言いである。


 その方が戦争をお求めなのだ。


 


 

 1941年 12月1日


 開戦やむなし、近衛は御前会議での結論に愕然としていた。


 確かにハル長官の要求は日本帝国として到底受け入れられる物でない。


 であるが一足飛びに開戦とは余りに余りである。


 居並ぶ文武の臣下たちが沈痛な面持ちであるにも関わらず反対の声を上げないことも驚きしかない。


 近衛は馬鹿ではない頭脳を占める何割かが桃色で春の景色なだけであり、他の部分は理想主義的な政治家である。


 そして腰抜けでもない。女の身を有して幾星霜、明るい性格と奔放なこれまでの人生は彼女をして、一角の政治家に変えていた。



 だから声を上げた。


 「お待ちください陛下!臣一命を賭しまして米国に赴き米大統領閣下に談判いたします!ですからなにとぞ、なにとぞご短慮はお控えくださいまし」


 そう立ち上がって声を上げた近の声には決意は満ちていた。そして彼女は続ける


 「米国と事を構えると言う事は、私の理解する所では最終的に枢軸を除く世界全てと事を構える事になる事必定ではありませんか?それは最後の手段でございます。私、首相として陛下を輔弼する臣民の代表としてそれはあってはならない事と存じあげます。陸海両相、お集まりの軍人の方々にはご不快とは存じますが、この近衛に今一度、交渉の機会をお与え下さい」


 声に応じる様に居並ぶ出席者を見る目にも必死の思いがあった。その近衛の言葉に陛下は応じられる。


 「近衛の言もっともであると朕も思う所である。皆どうであろうか、朕は首相の意をくみたい。勿論、これまで事あるに備えて来た陸海軍を蔑ろにする訳ではない。近衛の思い米国に届かなければ開戦は本日の結論通り行う。近衛、お前に負担をかけるがこれが我が国の精一杯だ。理解して貰いたい」


 「臣、陛下のお言葉に恐懼に堪えません。必ずや米国にこの度の通告の緩和と再交渉を飲ませて御覧にいれます。そうとなれば一時でも惜しくあります、陛下のご臨席を賜っての会議ではあり、首相の重責にある者が中座する事、異例とは存じますが、これにて退席致す事お許し下さい」


 「許す。期待しておるぞ」


 陛下のお言葉に近衛が畏まって答え、その場を退出した。その姿に何時ものアッパラパーぶりは無く、別邸に中華益荒男コレクションを監禁している姦婦の姿は認められなかった。


 この時、近衛は確かに国難に立ち向かう真の政治家であったと言えよう。


 哀れにもであるが。


 彼女は最後まで気づけななかったのだ。


 海相が肩を震わせている意味、下を向く事しか出来ない外相がニヤケて居る事、陛下を除く全員が笑ってはならないと尻をつねっていることも。


 「もしあの世界の俺で有れば、百万の感謝をしても足らん程にお前の思いは嬉しくあったろうに、近衛、すまない」


 そして陛下が小さくお言いになった謝罪の言葉も、近衛には届く事は無かった



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