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常識改変がお好きでしょ?

 伊藤博文暗殺される!


 明治建国から日清日露の激戦に至るまで、数々の不都合はありながらも日本帝国を引っ張て来た男の突然の死は、国内外に衝撃を与えた。


 日頃、伊藤の事をあーだこーだ好き勝手に批判していた国民も、国葬に反対する意見は殆ど(一部のひねくれきった新聞社や伊藤施政の被害者は除く)無かった事からも日本国民の衝撃は並大抵の事ではなかった。


 史実に置いては、伊藤の死から間を置かず、大韓帝国は日本に併合されているが、この世界に置いてもそれは変わらなかった。


 これを考えるに、行き過ぎた民族主義はその思想の正当性がどうあれ、不幸しか生まないのであろう。それは此処から数年後に一発の銃弾で百万規模で人類の駆逐に成功したタイトルホルダーが出現した事からも明らかと言える。



 閑話休題それはさておき。この世界は既に不真面目アブノーマルと「なかよし」の侵攻を受けているのは御存じであろう。


 詰まり史実との剥離はとっくに始まっている!


 北海道に隕石が落下し、伊藤が女体化している時点で今更と言った感はあるが一応断っておこう。


 そして剥離の急先鋒であり、暗殺の危機を日本の世界の不幸にも生き残ってしまった男、、、今は女は宮中に連行されていた。






 「それで何か言い訳はあるか伊藤」


 やんごとなき方、東洋の小国を清とロシアと言う二大帝国相手に、勝利するまでに持って行った大帝は簀巻きになっている女に下問された。内心、若い女を簀巻きにして大の男が数人で詰問する事などあってはならない事だとは思ってはいるが口には出さない。


 「御座います!臣、姿は変わっても御上への誠心何一つ欠けては御座いません!これまでの、、、その乱行などと総監府の人間が証言した事は、偏に我が身を蝕みました病魔の性であります!その証拠に伊藤は国家に仇なす事など総監業務で行ってはおりません!お調べ頂いても結構!寧ろ臣としましてこれは陰謀の類と存じております!如何かお慈悲を!おい!山形君!話が違うぞ!君も何とか言ってくれ!儂はもう死人だ!政治的には君にはもう勝てんのだよ!はっ!もしや儂の若鮎の様な体をこの場で弄ぶつもりか!それならば致し方ない!さあ来い!ドンと来い!儂は何時でも準備万た、、、イテェ!」


 頭は痛くなってはいた。恐らく、、、まず間違いなく伊藤である(周囲の証言は取ってある)女の言動と知能は男であった頃の伊藤の持っていた、政治家として老獪さや知能を失っている様にしか見えないからだ。


 「いい加減にしろ!狒々爺!恥ずかしくないのか御上の御前で!御上!こいつの戯言にお耳を貸される事はございません!埋める所なら幾らでもありますから埋めましょう!人手が使えないなら私たちでやります!桂君!西園寺公!スコップを持って来て頂きたい!あと包む物!」


 それに近くでヒートアップしている者がいると冷静になれるものだ。特に伊藤の死亡と言う訃報を届けにきた直後、「伊藤は生きております、、、女体化してますが、、、」と言うニュースを何とも言えない表情で自分に囁いた男がカッカしていると。


 カッカしている閣下と呼ばれる立場の男、山縣有朋はスパーン!と勢いよく伊藤(女)の頭を叩き続けながら更に続ける。


 「お前が、どうしても申し上げねばならない事が有ると言うから、これだけの人間を集めたんだぞ!色気づくな!幾ら見てくれが良くとも中身が伊藤だと思うと気色が悪いんだよ!」


 「そんな悲しい事をいうなよ山縣く~ん。同門じゃないか~松陰先生に師事した身だろ~、君もねぇ、高杉さんに惚れたなら儂の気持ちも分かる筈だ、一度くらいは床を共にしたかっ、、、イテェ!」


 「この淫売!松陰先生と高杉さんを変な目で見るなぁ!桂ぁ!スコップまだかぁ!」


 今度はゴチンと鉄拳を振り下ろす山縣有朋、敬愛する師と先輩を性の対象にされ、ニコポンはデコポンと化していた。


 ええかげんにしい!わしもいい加減辛抱せんで!」


 「陛下もこうお言いですし、落ち着いて下さい山縣さん。これ伊藤君も御ふざけが過ぎるぞ」


 「正月でもないのに漫才はそれ位にして頂きたいですな、伊藤公、、、女史?」


 そんな、歳の性もあり血圧が危険な域まで上がっている山縣を抑えたのは京都弁の怒声(明治大帝はプライベートでは終生京都弁だったとされる)、元老西園寺公望と第二次桂内閣を率いる桂太郎である。




 宮城、奥と単純に呼ばれる天皇の生活空間の一室にいたのは、実質的にも実力的にも日本帝国を動かしている人間たちであった。


 彼らも現在帝国を襲いつつある奇怪な事象については了解していが、それが元老の一人を襲い、あまつさえその人物がその事を自分達にまで隠し通していた事には驚きを隠せなかった。


 この会合は、伊藤の死の偽装と諸々の隠蔽に奔走した山形の手により実現したのであるが、それもこれも


 「こうなったには訳がある。帝国の明日の為、包み隠さず話す必要があるのだ。遺言だと思って人肌脱いでくれないか?それともここ儂が脱ぐ?」


 との伊藤の言葉により集まったのだ。山縣がカッカしているのは、伊藤のこれまでの行状を隠蔽して回るのに奔走させられたからである。他の人間が冷静なのは、伊藤の現在の姿と山縣から聞いた乱行ぶりに、開いた口が塞がらないとからでもあった。


 なんと目の前の簀巻き女は、自分達が伊藤暗殺未遂の報に気を揉んでいる頃も、ハルピンで撃たれた三日後には全快し、伊藤に全弾命中したお陰で生き残った秘書官の森を、移送の列車と船内で散々搾り取り、御上の命により博多に駆け付けた救護団に手を出した上、「遺言を伝えたい」と呼び出した山縣を襲おうとしたと言うのだ。


 「あの馬鹿は私が病室に飛び込んだと同時に天井から降ってきたのだ。その日は悪寒がしたので護衛を伴っていて本当に良かったと今でも思うが、止めを刺さなかった事がだけ悔やまれる」


 とは伊藤、末期(偽装)の電報を受けて駆け付けた山縣の弁である。何でも「ギニャー!」または「フシャ~」に類似した声を上げて室内直角の角度より降って来たらしい。


 「松陰先生が身まかられた池田屋で襲われた者は、あの様な気持ちだったのではないか」とも山縣は後に漏らしている。


 


 その様な事もあり只今この場では白い視線が伊藤(博)文には注がれている。それは感じたのであろう、伊藤は急に真面目になった。


 漸くの事、話が進む。一伊藤の雰囲気が男であった頃に戻った事を悟り、カッカしていた山縣はじめ、この場に集まった重鎮中の重鎮だちは固唾を飲んで伊藤の発言を待つ。


 そして伊藤は口を開いた。


「儂はこの姿になって気づきました、、、この国はどスケベぇ事になると!」


 「桂、西園寺、スコップ持ってき。山縣ぁ儂も手伝うわ、ゴルフコースの横になぁ、良い場所あるし」


 「いえ陛下、それよりは掘りに重石を付けて放り込みましょう」


 「お手を汚す迄もありません、伝手がございますから、その様な者に始末は任せて頂きたく」


 「いとぉ~、、あの世で松陰先生に御免なさいしてこい」


 目がマジであった。ふざけて良い場面ではなかったのである。


 「言い間違いです!言い間違い!怖い顔しないで!どエライ事!どエライ事です!本当です!本当!帝国の危機なの!落ち着いて聞いて!儂を殺しても問題は解決しない!」


 慌てて言い募る伊藤文ちゃん。お茶目はして良い場所があるのだ。


 「「「はぁ、、、でっ、その危機とやらは何なのだ(や)?」」」


 「ではお話しましょう。こう言う訳であります。は~い儂の目を見て下さ~い」



 

 その日、何が話会われたかは歴史には残っていない。


 だがこの時を境に、この世界の日本は史実と大きな剥離を始めたのである。



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