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日韓併合秘話 テロルとエロる

 不安は的中する。


 それも最悪な形で。


 トンデモナイ大物が感染したのだ。


 罹患者の名を伊藤博文と言った。




 韓国統監府統監の地位にあった彼であったが、当初より北海道を襲った未曾有の事態に高い関心を寄せていた彼は、一時帰国の際、直接第一次調査団に諮問を行い、奇妙奇天烈な災害の被害が軽微である事に胸を撫で下ろしていたのだのだが、その接触により彼は病魔の手に掛かっていたのだ。


 話は変わるのだが、伊藤と言う人物は毀誉褒貶の多い人物である。彼は当世一流の政治家であると同時にテロリストでありエロリストでもあった。


 テロリストの部分は幕末・明治維新の動乱による物であったが、エロリストの部分は彼の生来の気性であったのであろうと考えられる。



 一説に彼は日本初の車両なかよし行為実行者であり、余りの女遊びの激しさ故、明治大帝に「お前いい加減にせんかい!(意訳)と」と諫められたと言われている程である、



 この世界ではそのそのエロの部分が彼の政治生命を縮める原因となった。





 1908年の終わり彼は朝鮮の地に於いて病に倒れる。開けて1909年の初めには復帰しているが、この時彼は変貌を遂げていた。


 史実において伊藤は1909年十月に暗殺される訳であるが、この世界の伊藤も同じ道をたどっているのであるが、大きな違いがあった。



 史実において伊藤の暗殺は日韓併合議論に端を発する民族主義的なものであったが、この世界に置いて伊藤は「痴情の縺れ」でその政治生命を終えているのである。





 では一人男の悲しい恋の物語を語ろう。


 男の名は安重根。エロリストに人生を狂わされたテロリストである。





 1909年二月の京城。


 ここでは近ごろ人々、特に成人男子において奇妙な噂が立っていた。


 「人食い馬車」の噂である。


 なんでも京城市内で夜間に男性が一人で出歩いていると、一台の黒塗りの大型馬車が近づいてくると言う。「何だろう」と思っていると、横づけした馬車より「白い手」が伸びてきて車内に引きずり込まれ「天国」に連れていかれると言うのだ。


 何それ?であるが実しやかにその噂は京城の男子に広がっていたのだ。



 中には「天国ではない地獄だ」と言う体験者の話や、「チョソンの男の名誉に賭けて負けられん!俺はもう一度行くぞ!」と気勢を上げる声、只々「死ぬぞ」と話を振られて青白い顔で逃げる様に言う声もあったされている。


 この話の主役であり、素行の宜しくない男であった安は、酒の席で友人たちからその噂を聞き「俺が確かめてやる」と安易に深夜の京城に繰り出しのであった。


 


 そこで彼は運命に衝突されたのである。




 此処からは伊藤公暗殺の容疑で逮捕された安の証言である。




 噂の馬車を探して三日。酒を入れ気合を入れて身構えていた安は、なんの抵抗も出来ずに近寄ってきた馬車に引き込まれた。


 安としては持参していたブローニング7連発拳銃で噂の主を討ち取り名を上げる積りであったと言う。



 だがそれは敵わなかった。懐に手を入れるまでもなく暗い車内で組み敷かれ、瞬く間にズボンを剥ぎ取られたのだと言う。それを行ったのはフワリとした甘い匂いを漂わせる黒髪の女であった。


 それから安は地獄極楽の両方を味わう事となる

 

 

 検閲済み 


 



 検閲終わり


 

 夜明け近く、性も根も尽き果てた安を馬車はペッと吐き出して去った。安はこの後巡回中の警邏の逮捕される。


 そしてこの日より安は変わってしまった。独立の情熱はドロリとした情念に変わり、自分を永遠に変えてしまった馬車を求め彷徨う悲しき雄になったのだ。






 

「ふぃー、えがった!朝鮮にもまだまだあの様な男がおるもんじゃのう」


 朝焼けの中、韓国統監府に戻る馬車の車内で女、伊藤博文、、、気持ち悪いので「伊藤文」としよう、、、は呟く。


 「あのぉ~伊藤公、、いい加減に、、、」


 御者席から辟易とした声が聞こえる。伊藤の無茶ぶりに付き合わされる秘書官森槐南の声だ。


 「なんじゃぁ!では君が付き合ってくれるのか?ワシはそれでもいいぞ!」


 「いえ、滅相もない!お断りします!」


 「ふん!そんなに妻が怖いか、玉がないぞ森君!、、ああ、無いのはワシじゃったか、だっはっはっ!」


  車内に伊藤の詰まらない冗談と笑い声が響いた。


 そう奇病発祥から向こう伊藤博文改め、文(自称ふみふみ)は韓国統監府の男を食い漁り、遂に京城市内に男漁りに出るまでになっていたのだ。


 ここまで性欲旺盛な発症者は実の所、「禁欲状態に置かれ」でもしない限り少ないのであるが、ふみふみは例外であった。


 男であろうと女になろうと意気軒昂、それが伊藤博文である。




 

 どこが悲しい恋の物語だ?一方的な逆なかよしだろ?


 それはそうである。弁解の余地はない。御免なさい。


 然しだねぇ読者諸氏よ。可哀そうな安君はこれでやられてしまったのも事実なのだから、確かに悲しい物語なんだよ。


 安重根はリピーターとなり、都合六回、ふみふみと車両なかよしに明け暮れ、遂には「お願いだ!結婚してくれ!」と求婚までしている。


 


 それが叶う訳もなかったのであるが。


 そして運命の1909年十月二十六日、安重根はハルピン駅で伊藤を銃撃している。





 伊藤博文、、もとい!伊藤文は自身の政治力をフル動員して奇病の罹患を隠し通していたのであるが、この事件により明治政府の最重要人物が変貌した事が政府上層の知る事となったのである。



 伊藤は暗殺された。


 暗殺された事になっている。


 史実との違いそれは、彼女はその場で死亡せず、その体は治療の為、本国へと移送され其処で死亡したという言う事だけである。


 

 ちなみに安もまた史実とは違い、死刑執行後の遺体の行方は分かっていない。ただ一つ分かる事は、日韓併合後、伊藤家に伊藤の庶子である女子一名が加わったと言う事実だけだ。

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お重ちゃん…。
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