開始シナリオ4 三貢計画 ゼンブアゲマス ミンナアゲマス アナタノモノデス
こうして変態運動会はアへ顔と共に閉幕した。
だが閉幕した物は痴態を晒したメスネコたちの人生だけでは無かった。226事件は日本帝国における憲政の常道の終焉でもあったのである。
史実では何とか生き残った岡田首相は痴至量のオルゴナイト粉塵を吸い、救出後直ぐに奥さまと燃え上がた結果、育児引退を宣言、岡田内閣は総辞職した。因みに子供の為に総理の椅子を投げ捨ててまで、家庭に入った岡田元首相の決断は、逆仲良しにも負けず愛を貫いた美談として報道されている。メスネコ共に性的暴行を受けていた重臣たちもまた、これ以上の政務は無理だとして政治の道から身を引く事となってしまっていた。
その後、彼らは歴史の表舞台から完全に消え去ってしまう。一説には行方不明になる前、彼らは大量の養子を引きとっていたとも言われているが、それは確かめられていない。
この事から認識疎外を受けていない海外からの評価として、実は首相以下重臣たちは反乱鎮圧の際に死亡したとされ、日本帝国は、君主自らが民主主義の原則を守る為、重臣を巻き込んでも反乱の鎮圧を行ったと、一定の評価を受けているのは歴史の皮肉である(みーんな大量のコブが出来て育児に専念したのが真実だとしてもだ)
ともあれ真実を知る者は陛下と西園寺公望などの少数の超上層の者たちだけであろう。かの人は、メスネコ駆除の為とは言え大切な重臣をヒデェ目に合わせた事から、留任を行わず、彼らを静かに見送ったとされている。結果的に帝国の政治は史実に近い流れを辿って行く事になったのである。
歴史の剥離は違う部分であった。棚ぼた的に勝者になった統制派、彼女らは帝国軍の要職を占める事となり、陛下にオギャる&イイ子イイ子される事を「「こんな快楽知らないなんて人生損をしている」」と生き残りの皇道派をオルグし、陸海に新たな性癖を植え付け、かなりの部分、陛下のそして帝国中枢にいる少人数の意見が通る様にしたのである。
この際、統制派の中にも陛下にバブみを感じたい「オギャり閥」の他、実際の陛下を襲うのではなクンかクンかする事で興奮する「クンかー閥」、陛下に滅私奉公する被虐の喜びを探究する「貢ぎマゾ閥」等が生まれ、既存派閥と混ざりあったとされ、この後の帝国による侵略政策大きな影響を与えている。
特に大きな影響を与えたのが「貢ぎマゾ閥」である。
「貢マゾ」について一般性癖ではないので少し補足しよう。貢マゾとは読んで字の如く、推しに金品やブランド、果ては自分自身から他人の人生迄貢事に性的興奮を覚える異常性癖である。
推された方はこれに対し、御返しとして性的な何かを返す場合もある。今回の場合、陛下はご使用になった生活用品を下賜されるであるとか、お声を掛けられる、巡幸の際は必ずその土地の軍事施設を入れる等で対応されていた。
一兵士は元より高級軍人までもが頭ナデナデと「エライエライ」の言葉を求めるのはヒデェ絵ずらであるが、ここまでは良い、陛下の精神衛生と胃には余り宜しくないが、今までよりは各段にマシになったと言える。少なくとも涎を垂らして突撃してくるメスブタは各段に少なくなったのである(いない訳ではない)。またこれによりクンかーもオギャりも満足できる。
酷いのはここから。
一国の君主にマゾブタ共は何を「貢ぐ」かと言う事である。陛下は帝国を総覧され、嘗てのロシア皇帝には遠く及ばないとしても多くの資産をお持ちの方である。その様なお方に金品を貢いでも気持ち良くはなれない。
では何を貢ぐか?
その答えは226事件の処分も終わった(反乱参加者は「この世から追放」されたので早かった)、1936年8月7日に行われた、首相・外相・蔵相・陸相・海相の五相による会議、である「五相会議」にある。
同年3月9日に成立した広田内閣が226事件に対する措置として大規模な粛軍(軍主導の性癖オルグ)を実行した一方で復活させた軍部大臣現役武官制により、陸相・海相が参加して行われたこの会議、史実でではここには立憲君主であり政治を委任している立場の陛下の姿は当然ながらない。
だがこの世界では違う。横紙を大いに破って陛下はその場にご臨席あそばされているのだ。これを見ればどんな者でも、日本帝国の民主主義などと言う建前はとっくに死んで三本足のカラスに啄まれている姿を幻視できる会議風景である。
何故、この異常なる世界に置いても常識的現人神で有らせられるお方が、横紙を御破りになり横の車に仁王立ちされているのであろうか?
それはこの会議がプレゼンであるからだ。プレゼンされた内容は「大陸処理要綱」、史実の第二次の文字も北支の文字も消えた完全なる侵略と支配の為の計画がこの場では議論されていたのだ。
正に悪の帝国。もし後世映像化されるのであれば、歴史公証ガン無視の何だか未来的なピカピカメーター並ぶ部屋で「蒋介石め北伐とはこしゃくな真似を」とか「支配してやるぞ中華よ」とか「行け!究極怪人ケーニヒスチーハー!」と言っているのが映像化される所だろう。
それ程の悪ワルっぷりである。これに匹敵するのはシュリーフェン・プランかマニフェストなディスティニー位であろう。
だがその様な悪らしい悪の戦略会議でも、実際には高笑いを上げたり、その辺で拾ってきた猫にゃんを膝の上で撫でまわしたりはしない地味なものである。
ただ、陛下が自由にせよとお言いになったので紫煙は漂っていたのは事実である。余談であるが読者諸氏が1990年代以前、特に昭和一桁の時代に転生なりタイムスリップしたのであれば、煙草に関しては覚悟した方が良い。この時代、何処に行ってもどんな高級な会議でも煙草は付き物だ(ちょび髭が近くにいる場合を除く)、もう皆呼吸と同じくらい吸うと覚悟して欲しい。
さて余談は置いておいて本題である。
「本当にやるのだね?」
紙巻、葉巻、取り交ぜた濛々たる紫煙、そして充満する甘い香りの間から声を上げたのは、この会議で陛下を除けば唯一の男性である首相広田弘毅の物であった。その言葉には緊張が籠っている。陛下がご臨席しているからだけではない、余りに稀有総代な今回の議題について緊張しているのだ。
「ヤるヤらないではありません。ヤらないと我が国は終わりです」
広田の言葉に、陸相の寺内寿一(寿に改名)であった。ヤるのニュアンスが広田と違うのは態とではない。その証拠に彼女、鮮やかな桜色の長髪を持つ女はにこやかに答えた。その言葉に合わせて男であった頃は退潮著しかった生え際に伸びる、人を子馬鹿にしたような毛(人呼んでアホ毛、帝国のメスブタにはこの様な髪型の者が多い、本人たち曰く切っても切っても生えてくるそうだ)が揺れている。
「海軍としましても、陸相の意見に賛成です。現状はひっ迫しております」
その言葉に同調したのは隣にいた海軍大臣の永野修身(おさみ、と平仮名に改名)であった。キツイ目、礼装を圧迫している無駄にデカイ乳、群青色のショートにある錨を模した髪留めが目を引く、なんでも海軍は狭い艦内でできるお洒落として髪留めを正式に採用したらしい。
「ひっ迫と言ってもそれは軍の話だろう?それで軽々しく、、」
「我が国の海上輸送が壊滅しても同じ事を首相閣下は申されますかな?ハッキリ言わせて頂きますが、来年の今頃には海軍は機能不全を起こします」
「それは君らの怠慢だ!これは、、、失礼を、、」
「良い。続けてくれ」
次に無駄に乳のデカイ牝牛の口から出たのは、いっそあっけらかんとした海軍壊滅しますよ宣言であった。無責任とすら言える放言である。
これには思わず広田も声を荒げ、自分達を睥睨する主が鎮座ましましている事を思い出して謝罪の言葉を漏らす。だが主の方は気にしていない様子で広田の発言を促した。
「ごほん、予算は付いているのだよ海相。石油もある、人員もいる。それで機能不全しますとは無責任のそしりを免れないのではないのかね?」
「なるほど、確かに連合艦隊を動かすのに苦労はしておりません。石油も人員も足りております。確かに首相の言ごもっともです。で・す・が一番大切なもんがないでしょ!陸相も何とか言って上げて下さいよ!私一人がごねてるみたいじゃないですか!」
荒げた声を収め落ち着いて嫌味を言う広田。だが今度は永野の方がヒートした。彼女の言葉はこれ以上言わせんなよ分からず屋!と言った風があった。
「まあまあ、おさみさん、抑えて抑えて。ですが首相、海相の言葉に嘘はありません。海軍が動かなくなったらどうやって朝鮮、満州を維持するので?私たちに泳いで海峡を渡れと?ソ連海軍の良い的にしかなりません。それにですねぇ、辛いのは海軍だけではないんすよ?はねっ返り共は、恐れながら陛下が征伐なされ下さいましたが、陸軍も限界と言う奴でして、良いのですよ私たちは首相閣下が岡田前首相の様にご自分を捧げて下さる分には。ですが国民に類が及んでは今度こそ私たちは、、」
そう言うとアホ毛のピンクはチラリと上座を見た。
「陛下に腹を切ってお詫び致さねばなりません。次ははねっ返りがやらかすだけでは済みませんから、私もここにいるおさみさんも腹を切ります。も・ち・ろ・ん首相閣下もご一緒ですよ?私たちと違って閣下は立派な日本男子、女に腹を切らせて自分は生き残りたいなんて言わないですよね?」
「それは確かにそうだが、、、だが君、それは脅しも同然だ!やはり承服しかねる!馬場君!有田君!黙っていないで発言してくれたまえ!予算的に見てもこんな計画無茶だろう!有田君もだ!だってだなぁ、彼女らは大陸に、、」
「男子獲得結構ではないですか?陛下の御前ではありますが、私も蔵相の立場として申し上げます。我が国は慢性的な男子不足は危機的な状況です。高橋前蔵相は都市部の男不足を解消出来ればなんとかなるとお考えだったのでしょうが、大蔵省の考えは違います。農村の疲弊は著しい物です、早晩に農村を起点として男融危機が発生すると、私が就任してから再三に省の官僚たちから上申が来ておるのです。金融危機でしたら今の帝国なら乗り切れるでしょうが、男融は無理!遺憾ながら蔵相として閣下を支持する事はできません」
「外務省も同じです。南京政府は我々の満州国建国と、そこから流出する男子人口に警戒を強めています。また北支への工作は現地の女共から目の敵にされて美味く行っておりません。それは欧米諸国でも同じでして、これ以上の棄民染みた労働者の押しつけは不可能かと思われます。外務を司る者としては屈辱的ではありますが、少なくとも北支を支配下に置かない事には国内のガス抜きすら不可能だと考えるしだいです」
「君たちまでなにを言うんだ!陛下!恐れながら臣の提言をお許し下さい!首相として四相の判断に反対いたします。この度の反乱だけでも英米の危機感を煽っておるのです!その上、大陸で事を起こすなどは無謀すぎると思われます。どうか再考を他の者にも促して頂きたく、、」
助けを求めたこちら側である筈の文官、外相と蔵相にまでも侵略戦争不可避と言われてしまった広田は禁じ手と知りながら、事の成り行きを見守っていた主に助けを求める。
「広田首相、朕もまたお前と同じ気持ちではある。が、帝国のそして世界の危機を救うにはこれしかない分かってくれ。悪いがこれは決定事項なのだよ。」
だがその結果は無慈悲な物であった。誰よりも平和を願っていた筈の主の口からは出でたのは、謝罪、そして侵略と略奪の容認であった。
その言葉にガックリと肩を落とす広田。そして彼は気づいた、薄々といや分かっていたが見なかった事にしたかった真実に。
(憲政の常道は殺されたのだ。よりによって陛下の手で)
若き君主にそこまでの決意を自分達はさせてしまったのだと。
この僅か一年後、帝国は長いそれは長い戦争に突入する事になる。
国家・領土・主権・人民
それがマゾブタたちが推しに貢ぐ物の正体である。